栗野的視点(No.707) 2020年9月28日
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地名は土地の履歴書〜命名の謎を追う(1)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 苗字や地名の由来に興味を持つようになったのは30代の頃からだと思う。最初は地名より苗字だった。名刺をもらうと、あまり見かけない苗字には「出身はどちらですか」とか「その地域にこの名前は多いんですか」などと、よく尋ねていた。
きれいな地名は公募が多い
苗字は出身地の地名から来ていることが多いというのはNHKの番組「日本人のおなまえっ!」を一度でも見た人はご存知だと思うが、近年は地名に興味を持っている。
地名と言っても最初の頃は新しい地名と古い地名も区別がつかず、ただ自分なりに推察して楽しむ程度のものだったが、新しく付けられた地名は分かりやすいものが多い。
例えば愛媛県松山市に平和通という地名がある。平和という名前から戦後に付けられた新町名だと分かるが、昭和39年に公募で決まったらしい。公募で決まる場合は現実に即しているから決まるものと、希望を込めて決まる2つがある。「平和」と付く地名はほとんどが後者だと思われる。
実は私の最初の下宿先が平和通だったが、大学に入学する1、2年前に、その町で暴力団による銃撃戦があった。それから程なく町名が公募で平和通に変わったから、これからは平和な町にしたいという住民の願いを反映させたものだろうとは容易に推察が付く。
岡山県に美咲町という町名がある。きれいな名前を聞く度に、どんな町だろうか、花がいっぱい咲いているに違いないなどと勝手に想像していたが、町村合併で公募によって命名した町名らしく、それを聞くと町民の希望を込めた名前だと分かる。
距離から付いた地名
町名ではないが距離をそのまま付けたものもある。例えば福岡に通称「50メートル道路」と呼ばれるものがある。正式名称は「昭和通り」だが、私は長いこと昭和通りという名称を知らなかった。
由来はもちろん道幅が50mもあることから、そう呼ばれたわけで、昭和の時代は「50メートル道路」と誰もが呼び、昭和通りと呼ぶ人はいなかった。だが昭和の終わりか平成時代になって、若い子に「50メートル道路」と言うと「どこですか」と聞かれて驚いたことがある。「50メートル道路を知らないなんて博多の人間ではないだろう」と相手に言っていたが、実は正式名称が「昭和通り」だとはその時初めて知った。
「福岡は右翼的な街ですね」と東京から来た人間に言われたこともある。理由は「国体」という名を道路に付けているからで、彼には「国体」が「国民体育大会」の略ではなく、「国体護持」などと使われる右翼的な言葉の方に結び付いたのだろう。
昔は各県持ち回りで「国体(国民体育大会)を主催し、それに合わせて道路の整備などをしていた。今で言えばオリンピック開催地が道路や施設を整備するのと同じだが、今では国体はなくなりインターハイと名を変えたのだったか。
いずれにしろ福岡で国体が開催された時に走るコースを整備し、「国体道路」と命名したわけで、これはたしか正式な道路名だと思う。
ちょっと話が逸れたが、距離をそのまま付けた河川に岡山市の「百間(ひゃっけん)川」がある。文字通り川幅が約100間あることから付けられた名前だが、100間という呼び名からも分かるように戦後の命名ではないことは推察付く。旭川の洪水対策のための放水路で、江戸時代に作られた人工河川である。
余談だが、岡山出身の作家、内田百閧フ「百閨vという名前は百間川の百間に因んだものらしい。
誰が「やすみどこ」で休んだ
地名にはそれぞれ謂れがあり、それを調べていくと、その土地の成り立ちが分かるし、防災にも役立つということは以前にも触れたが、私の実家近くに「やすみどこ」という地名がある。漢字で書けば「休所」となる。
「休所」を素直に解釈すれば「休む所」だが、なぜ、そこが休む所なのか、誰が休むのか、あるいは誰か偉い人が休んだ所なのか、それとも他の言葉から転移して「やすみどこ」という発音になり、それに「休所」という字を当てたのか。
「休所」の隣は「原」という集落で、これは原っぱのような平らな土地なので、そこから付いた地名というのは容易に想像つく。さらに川向こうの集落名は「川北」で、これも川の北側に位置する集落であることから、そう呼ばれ、それがそのまま地名になったものと思われる。このように地名は地理的要素から来ていることが多い。
(2)に続く
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