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分断する社会では独裁化が進む。(1)
〜民主主義は脆く、すぐ葬り去られる


栗野的視点(No.725)                   2021年2月15日
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分断する社会では独裁化が進む。
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 「選挙で不正が行われた」ーー。こう主張して力に訴える動きが、この1、2か月の間に相次いで起きた。1つは連邦議会議事堂に不法侵入・占拠し、5人が死亡する暴動を起こし、もう1つは銃の力で軍が大統領ほかの政権幹部を軟禁し、政権を奪取したクーデターだ。
 前者は1月6日アメリカで、後者は2月1日ミャンマーで起きたが、どちらがより衝撃的かと言えば前者だろう。

民主主義は脆く、すぐ葬り去られる

 後者は2011年に民政移管されたとはいえ、それまで軍事政権が長く続いていたし、2011年以降も議会で4分の1の議席を持つ軍が実権を握る半軍半民政治という体制だった。
 それに変化が起きたのは2020年11月に行われた総選挙で、アウン・サン・スー・チー氏率いるNLDが圧勝したことから軍部が危機感を持ち「選挙で不正が行われた」と主張し一気にクーデターに出た。

 負けた方が「選挙で不正が行われた」と主張し、パワーに訴えるところは両者とも似ているが、アメリカは少なくとも民主主義国家(と目されている)である。
 軍事政権下や独裁国家では野党候補者を選挙前に投獄したり、銃で脅して反対候補者に投票させないようにすることは、まま耳にするが先進国ではありえなかった。
 しかも、それを現職大統領が煽ったのだから民主主義の危機であり、独裁政治への道を開きかねないものだった。ギリギリのところで大多数のアメリカ国民が踏み止まったため(トランプ前大統領支持者の一部も)最悪の事態は免れたものの、この事件はアメリカの民主主義が大きく揺らいでいることを世界に顕にしたと同時に、民主主義はかくも脆いものだということも示した。

 ただ、これらは決して特殊な例ではなく、こうした動きは今、世界で急速に広がりつつある。例えばアメリカとは海を隔てて遠く離れた日本にさえ熱烈なトランプ支持者が存在し、アメリカのトランプ支持者と共鳴するようにトランプの言動を支持していた。少なくとも彼が退陣するまでは。
 不可解なのは日本にいる彼らがアメリカのトランプ支持者と同じような言葉を口にしていたことだ。「最初はトランプが大嫌いだった」「大統領が間違ったことを言うはずがない」等々と。

トランプとニクソンの似通った点

 我々はいつから歴史に学ばなくなったのだろうか。歴史を紐解けば、米大統領であれ首相であれ、権力の座にある者が不正に手を染め、法を犯した例を見つけることはいとも容易いだろう。そんなに古く歴史を遡らなくても。
 例えばウォーターゲート事件は時の大統領ニクソンの再選委員会が絡んだ犯罪であり、野党民主党本部が入っているウォーターゲートビルに盗聴器を仕掛けようとして侵入し逮捕されたのが発端だった。ニクソン大統領は再選されたが、この事件にホワイトハウスが関係していることが発覚し、最終的にニクソンは大統領職を辞任した。

 ニクソンとトランプには似通った点がある。まず、両者ともに大統領再選選挙期間中に起こした事件である。次にニクソンは訪ソ・訪中で世界の緊張緩和に貢献し、トランプは金正恩・北朝鮮労働党委員長と直接会談するなど米朝緊張緩和に貢献した点も似通っている。だからといってトランプ前大統領がノーベル平和賞候補にふさわしいわけではない。世界の緊張緩和への貢献という点ではニクソンが果たした役割の方がはるかに大きい。彼はベトナム戦争も終わりに近づけたのだから。
 国民的人気の面でもニクソンの方があった。ウォーターゲート事件など画策しなくても勝てたはずなのだが、結局、この事件がきっかけで2期目就任直後に辞任に追い込まれた。
                                            (2)に続く


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