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過剰生産こそが問題(1)
〜相次ぎ存続の危機を迎える日本企業


 いま私達は歴史の転換点に立っているのではないだろうか。このまま破滅への道を突き進むのか。それともここらで立ち止まり、この星の未来について真剣に考えるのか。
 近年、この星に関係しているあらゆるものがおかしくなりつつある。自然も生物も気候も、さらには人の営みに関する生産、流通、政治といったものまでもが、というかそれらこそが秩序を失い、バランスを崩し、まるで滅びへのサイクルを縮めているように見える。人はなぜ急ぐのか、なぜ急がなければならないのか−−。

相次ぎ存続の危機を迎える日本企業

 デジタル社会があらゆるもののスピードを速めたのは間違いない。その結果、我々は利便性という恩恵を享受している。だが、それは一方で部品のコモディティ化を招き、モノの価格と価値を下落させ、モノの氾濫を招いた。
 溢れるモノは出口を求めて世界中を彷徨い、自由貿易という名の差別貿易を開発途上国に押し付けることで先進国は富の分配を受けてきたし、これからもさらに受けようとしている。

 しかし、ここに来て、いやもうすでに来ているが、中国やインドといった開発途上国は原材料と安い労働力の提供地から脱し、先進国と競合する国になってきた。それらの国が作るモノはかつてのように低価格で低価値のものではなく、付加価値がある割りには価格が安い、いわゆるコストパフォーマンスのいい商品が増えている。
 そのいい例が家電製品やPC、スマートフォン(スマホ)だ。一時期、世界のPCやケータイ市場をリードしたIBM製PCやモトローラ製ケータイはいずれも中国企業に売却されてしまった。
 日本勢も同じで98にあらずはPCにあらずとまで言われた(?)NEC製PCはいまやレノボに売却され、NEC名で売られているPC、タブレットは実はレノボ製というのはよく知られている事実だ。
 スマホに至ってはメード・イン・ジャパンはほぼ全滅で、いまやスマホは中国企業の存在なくして成り立たない状況である。

 かつて一世を風靡した「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は今や見る影もなく、日本企業は国際市場で草刈り場になった感さえある。サンヨーは消え、シャープは鴻海グループの傘下に入り、東芝は生死の境をさまよっている。ニコンも前車の轍を踏み、今年に入って1000人超の希望退職者を募るなど大幅リストラに踏み切ったが、果たして再生できるのか否か。

 なぜ、このような状況になってしまったのか。
「消費者のニーズを読み間違えた」「市場の変化に素早く対応できなかった」「過去の成功体験が邪魔し、大胆な構造改革ができなかった」「大型投資案件が足を引っ張った」等々。
 いずれも当たっていると思われるが、その一方で、そんな通り一遍の言葉では済まされないもっと根本的な問題があるのではないだろうか。

 例えばニコン。世界のカメラ市場をリードし、ハリウッド映画のシーンに何度も登場したことがある、日本を代表するカメラメーカーなのは誰もが認めるところだろう。
 こうしたニコン神話は今もある部分で残っているが、カメラのデジタル化でニコンとキャノンの立場は逆転。とりわけこの数年、ニコンはコンパクトデジカメ分野だけでなく、レンズ交換式デジタルカメラ(以下レンズ交換式カメラ)分野でも販売不振が続き、2016年4月〜12月期連結決算ではとうとう赤字に転落した。

 これはなにもニコンに限った問題ではなくカメラ業界全体を取り巻く問題ともいえる。事実、カメラのキタムラは今年2月、全体の約1割に当たる129店舗を閉鎖すると発表した。フィルムがアナログからデジタルに変化した時に続くショックであり、撮影後の映像はプリントして楽しむ時代からデジタル画面で見て楽しむ時代に大きく変わり、その影響をもろに受けた結果である。そう言えば私自身、デジカメの普及以後、撮影写真をプリントしたことは一度もない。

 こうした傾向に拍車をかけたのがスマホの普及だ。以前なら観光地でよく見かけたコンデジ撮影はほぼ姿を消し、代わりに増えたのがスマホかケータイによる撮影とデジタル一眼カメラでの撮影である。
 こうした状況を見ると、コンデジ市場は縮小どころか消滅に向かっているようにさえ見える。しかしデジタル一眼カメラ人口は減少どころか増えているように見えるが、特に女性層で。にもかかわらずニコンの販売不振はなぜなのか。
 そのことを考える前に消費市場に目を転じてみよう。
                                                (2)に続く

ビックカメラ.com


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