「マイ箸を作ろうと思う」
こう言うと、決まって「なぜ?」という言葉が返ってくる。
マイ箸を持つだけではなく、作るとなるとそれ相応の理由があるに違いない。
一体それは何だ、と彼らの目は好奇心に輝くのである。
「割り箸の使用量は年間約250億膳。家が2万軒建つのに匹敵する木材が使われている。割り箸は間伐材を使用していると思っている人もいるようだが、割り箸の90%は中国からの輸入である。
年々ひどくなる黄砂の飛来は森林破壊の影響であり、中国政府は環境保護の観点からも昨年、割り箸用木材価格の値上げに踏み切っただけでなく、今後1、2年内に割り箸の国外輸出禁止措置を取ろうとしている。そのため現在ではロシアやベトナムからの調達に業者はシフトしつつある。
地球温暖化防止のために出来ることから始めなければならない。そのためにマイ箸を作って売ることを考えている」
多くの人はこんな言葉が返ってくるのを期待しているようだ。
否定はしない。
だが、私の考えは別にある。
「環境問題は頭から入ると長続きしない」
というのが私の持論である。
温暖化防止のためにマイ箸を持つのではなく、マイ箸を持つことが楽しかったり、気に入ったマイ箸で食べるとおいしかったりカッコいいと、環境問題にそれ程関心がない人でも持つに違いない。
そのことが結果として地球温暖化防止につながる。
そのようにしなければ広がらないと思っている。
もう一つ、環境ビジネスは手軽で、儲からなければ意味がない。
このビジネスを行うことで誰かが犠牲になるようではダメだ。
ところが、いままで環境ビジネスは誰か(どこか)を犠牲にしてきた。
例えば消費者は環境のためという名の下に高い商品を買わされたし、販売業者はエコ商品という名で売ろうとし、販路開拓を怠ってきた。
製造に関わる人達は補助金を当てにして製造コストを下げる努力をしなかったり、デザイン性を高めることにあまり関心を払ってこなかったように見える。
だからエコ商品は広まらないのだ。
エコ商品といえどもマーケティングは必要である。
エコ商品だけが特別な存在ではないのだ。
次によくいわれるのがプレミアム付き販売である。
「この商品の売り上げの一部を環境保護に回しますから、買ってください」という類だ。
実際そうした販売方法を取ろうと提案してくれた人もいたが、私は反対である。
箸はたかだか数千円のものだ。
それでも、企画・製造・販売となると、結構コストがかかる。
しかもリエゾン九州のようなNPO、ボランティア組織が作るとなると、専門業者に比べてかかる時間や、価格に反映できないコストがバカにできない。
そこからさらに寄付金分を割いていたら完全な赤字になる。
つまり誰かがそのコストを被らなければならないわけで、そんなビジネスは楽しくない。
結局、途中で挫折するか、継続できなくなる。
もう一度いうが、エコ商品が特別ではないのだ。
普通の商品を企画・制作・販売するのと同じように行い、同じように利益を得なければならない。
そうすることで、その商品が陽の目を見るのだ。
それでなくても我々が作る場合は専門業者と違い製造ロット数が桁違いに少ない分だけ割高になる。
ひと言で言えば、決して楽でもないし、儲かりもしないのに、なぜマイ箸を作り販売しようと考えたのか。
そこには2つの理由がある。
1つは、既存の携帯用マイ箸に気に入ったものがなかったからだ。
もう1つは、実はこれが重要であり、本音なのだが、リエゾン九州の活動と密接に結び付くことである。
そのことを述べる前に、背景としての地球温暖化現象について簡単に紹介しておこう。
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