曖昧になっていく内界と外界、境界の関係について(4)
〜現実と非現実の逆転現象


現実と非現実の逆転現象

 内と外と境界の関係変化は社会生活にも影響を与えている。例えば最近、動機が他者には見えにくい(分かりにくい)「身勝手な犯罪」が増えている。「相手は誰でもよかった」とか、「目立ちたかった」からという理由で殺められたのでは堪らない。しかも「自分では死ねないから死刑にして欲しい」とか、「死刑にはなりたくないが無期懲役で一生監禁」し、食べさせて欲しいがために「殺すのは2人までと決めていた」と嘯くに至っては、あまりの身勝手さに怒りを通り越し唖然とするばかりだ。また現行犯逮捕されても、目撃証言があっても「自分はやってない」と犯行を否認する者が増えているのも解せない兆候だが、共通しているのは内の論理である。

 彼らが居るのは常に内界で、外界とほとんど接触してこなかったり、内外界のグレーゾーンの体験がないことだ。そしてまた、そうした人間が増えてきている。
 彼らは常に内界で生活し、内界とともに移動している。つまり、どこに居ても自分が居る所が内界なのだ。言い換えれば外界は存在しないか、バーチャルな存在(非存在)として捉えられている。つまり、外界はいつでも取り消せる存在であり、世界なのだ。
 逆に、取り消すことができない、「現実的な」存在、世界はインターネット上の世界であり、そここそが「現実」であると考える認識の転倒が起きている。

 現実と非現実のこうした転倒認識はなにもインターネットによって始まったわけでも、この10数年の間に顕著になったわけでもない。それはもっとはるか昔から、人類が「創造主」と宗教を結び付けた時から行われてきている。
 それを加速させたのはインターネット技術の進歩、普及なのは間違いない。その結果、現実と非現実(バーチャル)の境界が曖昧になり、非現実世界が現実世界に入り込んできているのである。それも年々、拡大しながら。ここでは現実世界の方が外界になり、非現実(バーチャル)世界が内界になるという逆転が起きている。

 内界、境界を強く意識すればするほど外界に対して警戒心が強くなり、少しでも自分の世界(内界)を犯す相手に対して、例えそれが親や肉親であっても、敵愾心が強くなり、攻撃に向かうことがある。
 近年、肉親に対する犯罪が増えている要因はここにある。境界の曖昧さがなくなり、内界の中に内界を作るなど境界強化の影響といえるだろう。
                                     (5)に続く


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