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ホモ・サピエンスは滅亡に向かっているのか(V)〜歴史を繰り返す(1)


栗野的視点(No.783)                   2022年11月28日
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ホモ・サピエンスは滅亡に向かっているのか(V)〜歴史を繰り返す
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レーニンの残虐性

 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言ったのはドイツの宰相ビスマルクだが、この言葉に従えば現代に賢者はいなかったようだ。誰一人、歴史に学ぶどころか、まるで歴史を知らなかったかのように繰り返し、同じ轍を踏んでいる。こんなホモ・サピエンス(現生人類)に未来があると言えるだろうか。

 こう言えば「何をバカな。我々は過去の歴史に学んだから、先人の轍を踏まないようにしている」という声がスターリンや毛沢東、プーチンから聞こえてきそうだ。
 「資本主義の失敗に学んだから社会主義、共産主義社会への移行を試み、曲がりなりにも実施してきた」
 そう彼らは反論するかもしれない。だが、ソビエト連邦はその後、分離独立が相次ぎ、核となった国は今ではロシアほぼ1国で、兄弟国(?)と彼らが考えていたウクライナとは戦争状態になっている。にもかかわらず「歴史に学んだ」と言えるのだろうか。
 こう問えばプーチンはスターリンに学んだと言うだろうし、スターリンはレーニンに学んだと言うだろう。

 では、中国はどうか。毛沢東はスターリンに学んだと言うだろうが、習近平は毛沢東に学んだと言うのだろうか。それともスターリンや毛沢東その他の権力者に学んだと言うだろうか。少なくともケ小平には学ばなかったようだ。

 ところで以下の文章を見て誰の言葉か分かるだろうか。ヒントは革命前後のロシアで活躍した人物による指示である。

「同志諸君、クラークの5郷の蜂起を容赦なく弾圧しなければならない。革命全体の利益がこのことを要求している。(略)
 1.100人以上の名うてのクラーク、金持ち、吸血鬼を縛り首にせよ(必ず民衆に見えるように縛り首にせよ)
 2.彼らの名前を公表せよ
 3.彼らから全ての穀物を没収せよ
 4.昨日の電報に従って人質を指名せよ。周囲数100ヴェルスタ(約1.07km)の民衆がそれを見て身震いし、悟り悲鳴をあげるようにせよ」

 なんとも過激で恐ろしい指示だが、同じ人物の次の言葉も紹介しておこう。

 「我々はペトログラードの労働者をもう2万人ほど動員し、さらにこれに1万人ぐらいのブルジョアジー分子を加えて、彼らの背後に機関銃を据え、200-300人を銃殺して、ユデーニッチ(軍)に大規模な攻撃を加えるべきではないだろうか」

 ここまで読めばロシア革命に関係する人物だと推察できそうだが、問題はそれが誰なのか。スターリンかトロツキーか、それともプーチンか。いや、プーチンは時代が少し下りすぎて合わないから違うだろう。
 では、独裁者と言われたスターリンに違いない。そう思われるかもしれないが、実はレーニンなのだ。革命の偉大な指導者としての側面のみが強調され、彼の負のイメージに繋がるものは長い間秘匿されてきたから、私達が知るところとはならなかっただけだ。

 最初の言葉は1918年8月11日にペンザ県ソビエト執行委員会議長に宛てた電文だが、それを受け取ったペンザ県のソビエト執行委員会議長は「同志レーニンは蜂起者を処罰し、逮捕し、銃殺し、クラークを人質に取れという非常に厳しい命令を出した。力不足のため、また県内で同時にいくつかの蜂起が起こっていたために、我々は同志レーニンの指示をそのままには実行することができなかった」と、10日後の会議で釈明している。結局、レーニンの意図に反し、彼の指示は実行に移されることがなかったのは幸いだ。

 2番めの言葉は1919年10月22日にトロツキーに送ったもので、ブルジョアジーや富農に対する激しい憎しみを感じ取れる。もし、レーニンがもう少し長く生きていればスターリン以上の恐怖政治、独裁政治を行っていたのではないかとさえ思わせる。
 (レーニンの2つの言葉、ソビエト執行委員会議長の言葉は横手慎二の著書、中公新書「スターリン」による)
 注釈:「クラーク」とは富農のことである。

 レーニンのこの過激な言葉は革命指導者にふさわしくないとして長い間秘匿されていた。
 ロシア革命は労農革命と捉えられているが、レーニンは革命当初から革命の主力は労働者と考え、農民はむしろ反革命分子に近い存在と捉えていたところがあり、富農に限らず農民とは対立したが、スターリンはレーニンよりは少し農民よりだったといえるだろう。
 その点、毛沢東は自身が農民出身ということも影響したかもしれないが、中国革命は「労農」というより農の方に主力を置いた「農労革命」であり、その点がレーニン、スターリンなどソ連の指導者と違った。
                        (2)に続く


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