農業に戻ります。農業では治水権と言った過去の歴史を引きずってます。我が国の耕地は国土に対しての比率は低いですが、従事者の減少で遊休地も増えている現状で、まずは土地の権利の議論は棚上げにして、大きな区画で、農工機械、最適な治水権を効率よく使いこなす仕組みは、有効でないのでしょうか。
今は、GPSを使い、また各種機械の自走操縦も可能になってきました。勿論、棚田をはじめ不利な地形は有ります、また小規模の農作で手入れが行き届いた完成度の高い農作物にはレベルが届かないなど、難点もあります。しかし、ブランド品と大量生産品との違い区分けしてでも、大規模化への試行錯誤を始めても良いかも知れません。
従来のように、補助金で農家を支援することが、次なる発展に繋がる支援策、建設的な進歩を創出するものでしょうか。実質労働力から考えると、国全体の高齢化より農業人口の高齢化の方が進んで、影響力は深刻ではないでしょうか。農業から労働力解放や技術支援で若い人を巻き込める職業としての魅力、誇り、意識改革が何故考えられないのでしょうか。
大規模工場経営の導入は馴染まないという議論も聞きます。経営的発想に立つと、収益優先による食の自給率向上に対する義務放棄の議論もあります。そこは議論をすれば良いかと思います。
先日アメリカの土地を飛行機から見てましたが、ただ、ただ、広いです。それに対して、土地の有効活用の視点だけで、効率向上に向かい合うのは至難の業かも知れません。しかし、今の日本の平均的農業規模に対して、何処まで耕地面積を広げれば、諸外国の同業に対して生産性が向上するか?土地の面積だけでなく、日本の農業の生産性向上の障害の因子は何なのか?そう言った議論、研究は有っても良いではないですか。そして、品種によっては諸外国の方が適してるかも知れず、我が国にあった作物の競争力を高められる可能性のある種類の作物は何か? 青木昆陽が、サツマイモの作付けを奨励した時代ではないので単純ではないですが、権利の守りで無く攻めの政策、農業経済の競争力を考えなければ取り残される気がします。
農業問題はTPP議論と重なる部分もありますが、その問題とは別に論じられなければ難しい問題が多くあります。もう一つは他産業の場合には規模によって論じている問題が農業に限り一括して論じられているという問題もあります。
例えば工業製品等では大企業政策と中小、さらには零細企業に対する政策は違いますし、違わなければおかしいと言われていますが、農業は一括した対策が取られていますし、人々も区別して論じようという方向があまり感じられません。
また、そうしたことを放棄してきたことが現在の農業問題を複雑にしているのではないでしょうか。
実は農業とそれ以外の産業は似たところがあります。当たり前ですが、そのことも忘れられて(無視されて)いるようです。規模の拡大を追った結果、他産業ではどのようなことが起こっているのか。小売業では中小小売店が閉鎖に追い込まれ、かつての商店街は軒並み閑古鳥が鳴いている状況すら通り越し、いまやゴーストタウン化しています。
さらに、郊外に出店した大型店は近隣により大型店ができることにより閉鎖に追い込まれ、買い物弱者の問題が大きくクローズアップされています。
アメリカの陰謀説を採るわけではありませんが、大店法の撤廃圧力を主張し、大型店を出店しやすく強硬に迫ったのはアメリカです。その結果が現在です。
新自由主義経済を信奉し、競争原理の導入を推し進め、勝ち組負け組という言葉まで創出し、規模の拡大を追った結果はどうなったでしょうか。モノづくりの現場が海外に移り、大田区に象徴される、弱小ながらも日本の産業を支えてきた零細企業は彼らが持つ技術・技能とともに消えようとしています。
しかし、それでも工業分野では大企業政策と別に中小企業政策が取られています。それが充分機能しているかどうかは別にして。
農業で主に言われているのが大規模化です。この議論は20年前からありましたが。しかし、日本の産業を支えてきたのが中小零細企業であったように農業も小規模農業です。
もう一つ農業問題が難しいのは棚田の役割ではないでしょうか。ここには生産性とは別の、国土保全、環境保全という側面があります。東日本大震災以後、津波ばかりが注目されていますが、棚田や山林の環境保全の側面は見逃してはいけない部分です。耕作放棄地は保水面でも放棄地になります。
つまり農業問題は非常に多方面・多岐に渡るということで、それらの議論をいままで真剣に行ってこなかったのではないでしょうか。皆目先に捕らわれて。
今回のTPP問題はそういうことを考えさせるきっかけになったと思います。
(3)に続く
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