私の1日はパンと手製ミックスジュースの朝食から始まる。ジュースの中身はその時にある果物と牛乳、豆乳、ヨーグルトに青汁。これに小松菜を加えたり蜂蜜を入れたりする。絵に描いたような健康朝食と言うのは言い過ぎかもしれないが、健康飲料なのは間違いないだろう。
問題はパンの方だ。これがなかなか健康食とはいかない。市販の食パンには色々添加物が入っている。できれば身体によくないと言われているものは摂取したくない。そこでまずイーストフード、乳化剤は不使用と表示されているものを買うようにしている。
最近は上記2種類の不使用を謳う食パンが増えてきたので、これらが入っていない食パンは比較的簡単に入手できる。
だが、そのほかにも色々入っている。何が入っているかは「原材料名」の項目内に小さな文字で表示されているため、そこまで注視する人はそんなに多くはないだろう。契約書や説明書でも不都合なことは皆小さな文字で表示されている。
現代生活が厄介なのは身体によくないと言われるものを一切摂取せずに生活することができないことだ。正確に言えば、できないわけではないが、そのためには自給自足を覚悟しなければならないから、大半の人にとってはほとんど不可能に近いだろう。
それがどれほど不可能に近いことかは自分の1日の行動を振り返ってみればすぐ分かる。まずファーストフードには行かない。コンビニ、スーパーで食品を買わない。お菓子の類いは論外。昼食の弁当、仕事帰りの居酒屋ももちろんダメだ。
とにかく、おいしいと感じるものは皆添加物まみれ。となると全排除は難しいが少しでも摂取を減らす方法を取るしかない。
そこで私の朝食である。本当はご飯と味噌汁の方が好きなのだが、諸事情でパン食になっている。それなら少しでも身体によくないと言われているものが入ってない食パンを、というわけで買っているのが某社の「100%天然素材ブレッド」。
「こだわって こだわって100%天然素材」と大きく表示されているから無添加食パンと思い込みそうになるが、そうではない。
では何が天然素材か。袋の裏側に「6つの約束」が次のように表示されている。
・保存料は使いません。
・合成由来の着色料は使いません。
・イーストフードは使いません。
・pH調整剤は使いません。
・塩は天日天塩を使います。
・レシチンは大豆由来です。
一見するとよさそうだが、気になるのはトランス脂肪酸の含有。トランス脂肪酸が身体に与える悪影響については以前から欧米では指摘されていたし、世界保健機関(WHO)はトランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう目標値を設定している。さらにアメリカ食品医薬品局(FDA)は今年(2018年)6月以降、食品への添加を原則禁止と発表した。
これに慌てた(?)のが日本の食品メーカー。それまで日本は、食品安全委員会が2012年の評価書で、日本人の大多数はWHOの目標数値を下回っているから「通常の食生活では健康への影響は少ない」と発表し、規制の必要性を認めてこなかった。これでは消費者の健康被害より企業寄りの姿勢を貫いていると批判されても仕方がない。
ところがアメリカの発表を受けて政府より企業の方が敏感に反応し、トランス脂肪酸含有量の減少に動き出したのだ。一気に不使用といかないところが問題だが、それでもトランス脂肪酸の使用量減少に動いたのは多少ではあるがマシだ。
例えば上記の「100%天然素材ブレッド」には「低トラス脂肪酸に対応」と表記している。
また某社の「本仕込」食パンは「イーストフード・乳化剤は使用しておりません。トランス脂肪酸0g」と表記し、今年9月から放映している松下由樹出演のTVCMでも「トランス脂肪酸0g」を謳っている。
さて、ここで読者に質問。「低トラス脂肪酸」と「トランス脂肪酸0g」ではトランス脂肪酸を使ってないのはどちらだろうか。
恐らくほとんどの人が後者の「トランス脂肪酸0g」と答えるだろう。ところが、答えはノーだ。両方共にトランス脂肪酸は含まれているのである。
それはおかしい。「0(ゼロ)=無」だから0gとはトランス脂肪酸が含まれてないということではないか、と抗議されるかもしれない。
これにはカラクリがある、といえば勘のいい読者、精密加工分野に詳しい読者なら即座に分かると思うが、「0(ゼロ)」とはまったく何も含まれてないことではないのだ。0.0(コンマ0)、0.00(コンマ00)に比べれば0は実に大まかな数値となる。
同じことが食品分野でも言われ、ある分量以下の場合は「0g」と表記していいと「食品表示基準」で定められているのだ。しかも、その分量は一律ではなく、例えばコレステロールなら100gあたり5mg未満、トランス脂肪酸の場合は同0.3g未満と定められている。言葉は悪いが一種の詐欺に合ったような気がするに違いない。
つまり「低トラス脂肪酸」も「トランス脂肪酸0g」もトランス脂肪酸の含有量は同じということだが、消費者に対しての説明ではどちらが丁寧かと言えば前者である。
後者の「トランス脂肪酸0g」はトランス脂肪酸があたかも入っていないかのような誤解を消費者に与える可能性を否定できない。あえてそれを狙ったとまでは言わないが、前者の「低トラス脂肪酸」表記に比べて明らかに不親切と言える。それでも、そのことさえ表記してない商品に比べればはるかに正直ではあるが。
私はパンにマーガリンを塗らないし、マーガリン入りの食パンも買わないようにしているが、その理由はマーガリンにはトランス脂肪酸が含まれているからである。
いままで日本のメーカーはマーガリンに含まれているトランス脂肪酸の量を明らかにしてこなかったが、ここでもFDAの影響が出たようで、やっと今春以降、トランス脂肪酸の含有量を減らした商品を作ると発表。やがて食品安全委員会も後追いするだろうが。
化学物質が怖いのは少量でも長期間に渡って摂り続ければ、「健康に即座に影響がない」量でも体内に蓄積されていき、それがある量に達した時影響が出ることだ。
また1物質単体では「即座に影響がでない」量でも、他の物質と複合摂取していればその量が加算され健康に影響する可能性もある。そして現代生活では複合摂取を避けられない以上、単体製品での摂取は極力減らすべきだろう。
私達が注意しなければ(騙されては)いけないのは添加物フリー=無添加ではないということだ。これは食パンやトランス脂肪酸に限らずあらゆる添加物に共通して言える。
例えば無添加パンを謳っている商品でも原材料の項目をよく見るとマーガリンを使用していたりする。この場合の無添加とはトランス脂肪酸を添加していないというだけで、トランス脂肪酸が含まれていないマーガリンを使用しているという意味ではない。
同じようなものノンアルコール、アルコールフリービールでもある。わが国の酒税法ではアルコール分1%未満の飲料は酒類に分類されないため、かつてはノンアルコールビール、アルコールフリービールでもアルコール分が含まれていた。
だが、最近のノンアルコール、アルコールフリービールはアルコール分「0.00%」などと謳うものが多くなっている。
消費者に誤解を与える表示を取り止めだしたわけで、こういう動きは大いに歓迎したい。
上記の添加物不使用を製パンメーカーが謳いだした背景には消費者の健康志向がある。トランス脂肪酸は高コレステロールでメタボリックになる可能性があるし、イーストフードや乳化剤には発がん物質が含まれていると指摘されているからだ。
できることなら、これら合成化合物を使わない食品を食べたいものだが、冒頭に既述したように一切摂取せずに生活することは現代では難しい。それだけ添加物まみれになっているということだし、もう一つはそれら無添加食品を食べた時においしいと感じるかどうかだ。
子供の頃からファーストフードやスナック類を食べて育っている現代人の味覚は添加物で味付けされた味に慣らされ、すでに味覚音痴になっている。微妙な味を感じ取れない舌にとって合成化合物で味付けされ、フワフワ、パリッパリッの食感がないものを、おいしいと感じとれるかどうか。それでも少しずつ本来の味覚を取り戻す努力はしたいものだ。
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