高齢者受難時代の幕開け(1)
ー高齢者差別を助長するデジタル化ー


栗野的視点(No.798)                     2022年6月4日
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高齢者受難時代の幕開け
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高齢者差別を助長するデジタル化

 先日、銀行の窓口に行った。目的は自動車税の支払いだ。以前、何度かカード払いにしたことがあるが、昨年から現金払いに変えた。時には銀行に行かないと通帳の付け込みができないからだ。
 銀行の支店に行ったのが12時半頃。シャッターが降りていたので、「ん? 今日は土曜日だったか」と思い曜日を確認すると金曜日。営業日である。それなのにシャッターが降りているってどういうこと?

 支店の入り口に11時半だか12時から13時まで昼休み休業と貼り紙がされていた。マジかよ。会社勤めの人間は昼休みにしか銀行に行けないだろうに。でも、窓口は閉まっていてもATMの方は開いているだろうと思ったが、そちらにも入れなかった。要は窓口業務だけでなく機械も引っくるめて全面休業時間帯というわけだ。

 これには呆れた。銀行の横暴ではないか。横暴と言えば、この頃銀行は「金貸し」の本性むき出しの対応をし始めた。新規通帳の発行を有料にすると言ったり、預かった金に利子を付けるのをやめて、逆に預かり料を取ると言う。まるで「ヴェニスの商人」に出てくるシャイロックそのものではないか。
 すべては自分の利益のためで、デジタル化は業務の効率化という名目で、支店の窓口業務の縮小は「働き方改革」への対応を名目にしているが、本音は自分達の利益追求。
 デジタル化は「効率化」と「顧客サービスの向上」のためなんてのは嘘っぱちで、「効率化」は銀行の「経営効率化」つまり、利益追求が目的であり、利用者にとっては効率化ではなく「非効率化」。「顧客サービスの向上」名目は顧客にとっての「サービス低下」と「不自由の押し付け」である。

 昼休み時間帯の業務閉鎖は人員削減ではなく、逆に人員を増やし業務を継続すべきだろう。それがサービス業というものだが、彼らはサービスとはなにかをまったく考えてない。

 窓口人員を増やすために雇用を増やせば、労働者が増え、消費が増える。その分カネが回り、中小企業の経営が改善されれば銀行の貸し出し等も増え、銀行も儲かるし、日本経済も活性化していく。

 ところが今やっていることは逆で、このままだと日本経済は活性化するどころか、ますます停滞、沈没していくだろう。

 さて、13時過ぎに再度銀行に向かった。今度は開いていたが預金の出し入れ、振り込み等は窓口に備え付けのタブレットで操作するように言われる。
 私は通帳と印鑑主義だからATMですらほとんど利用しないし、キャッシュカードも作ってない。
 理由はリスク管理だ。キャッシュカードのパスワード(パスワード)は信頼性が低いと考えているからだ。大体、いまどき4桁の番号なんて鍵をかけたうちにほとんど入らない。せめて6桁ぐらいにすべきだと思うが、そうした動きはまったく見られない。すべては利用者の責任に転嫁して知らぬ顔だ。

 さて、タブレットによる操作だが窓口カウンターで行う。デジタル化はいいとしても、窓口でのタブレット操作は危険性が高い。スマホや暗証番号入力端末と違ってタブレットの画面は大きい。それを操作しながら暗証番号も入れるのだから、真後ろでなくても、少し離れたところからでも盗み見られる危険性がある。特に高齢者は操作をゆっくりするからなおのことだ。
 中にはパスワードを覚えられず紙に書いている人もいる。それを見ながら入力するだけでなく、番号を声に出しながら入力する人もいるから、なんとも危険極まりない。それなのになぜ高齢者にデジタルを押し付けていくのか。
「高齢者は銀行に来るな、ということでしょうね」
 諦め顔でそう嘆く声が聞こえた。

 高齢者受難時代の始まりと言っていい。それが社会の風潮になりかけていることが怖い。「高齢者は集団自殺か切腹しろ」などということを平気で言う輩が出ているし、それを容認する論調さえ一部に見られる。そしてメディアも年代差別を煽る傾向にある。
 一体この国はどうなっているのか。
                                              (2)に続く


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