つい先日、「元気な女性が多くなってきた」「私の若いころは、放火は女性の犯罪」などと語ったどこぞの大臣の発言にはバカらしくなってコメントする気もないが、この種の発言が政治に対する信頼感を失わせているのは事実だろう。 だが、それはさておき、女性の力が強くなったのは事実で、いろんな場所で実感するようになった。
私のオフィスはつい1年前までは福岡市中央区今泉に置いていた。 といっても市内中心部の地理や情報に詳しくない人には地名を聞いても何のことか分からないだろうが、今泉といえば一昔前はホテル街の代名詞である。 最近でこそ開発が進み、どんどん新しいマンションが建ち、若者向けのショップや 飲食店が次々にオープンしているが、天神とは通り一つ隔てただけなのに、夜間一人で歩くのは多少はばかるような雰囲気があった。 そう、この辺りにあるホテルはいわゆるラブホテル(いまではファッションホテル と名を変えているが)なのだ。 そのラブホテル街のど真ん中に私の事務所はあったから、事務所への行き帰りに否応なくラブホテルに出入りする二人連れを目にしてきた。
今泉に最初の変化が起きたのはビックカメラが西鉄電車の高架下に長さ200mの細長い店舗をオープンしてからだった。 ビックカメラの照明で夜10時過ぎまで明るくなったこともあり、それまでの薄暗いイ メージがなくなり、やたら明るくなったのだ。少なくともビックカメラの照明が届く 範囲は。 こんなに明るくてはさすがに入る人も減るだろうと思っていたら、案の定、ビックカ メラに最も近いラブホテルは取り壊して時間貸しの駐車場になった。 だが、それも1軒だけで、残りは相変わらず営業を続けているから、やはり人間の欲望には尽きるところがないということだろう。
様変わりしたのはそこに出入りする人達だった。 一昔前なら人目をはばかり、周囲に人がいないのを確認してサッと入っていたものである。 ところが、最近では実に堂々としている。 堂々としているのは男性ではなく女性なのだ。 昔は男が先に入り、その後ろから女性がうつむき加減に付いて入っていたものだ。 それが今では逆で、女性が先に入り、後ろから男性がうつむき加減に入っていくのだから、ケツを蹴飛ばしてやりたくなる。
それにしても最近の20〜30代は女性上位というか、男がひ弱になったというか、なんとも嘆かわしい。 これでは女性が同世代の男性に飽きたらず、うんと年上か、年下を相手にせざるを得ない気持ちがよく分かる。
これが週末ともなればもっと面白い。 昼間から夕方にかけてホテル街を通行する車は、一人乗りを除きほぼ例外なく入るホテルを物色しているのだ。 ところが、ここでも男女の逆転現象が見られる。 従来の常識(?)からすれば、運転する男の目が妖しく光り、助手席の女性は恥ずかしくて顔を伏せていたものだ。 それが今では助手席、運転席に関係なく、女性の目が周囲を彷徨い、入るべきホテルを探しているのだ。 当然、前を見ていないから、こんな車に出くわすと危なくて仕方ない。 中には入るホテルを指さす女性もいる。 男は黙って従うだけだ。 最も驚いたのはうら若き女性が20歳前の男の手を引っ張ってホテルに入るのを目にした時だ。 男はまるで観念したように女性に手を引っ張られ、後ろからまるでいやいやをするように引きずられて入ったのを見た時は、世も末と思ってしまった。 もちろん、昔ながら(?)に会社の上司と部下と分かる二人連れもいるが、日曜日の朝に20歳前とおぼしき女性二人連れがコンビニで食べ物を買ってホテルに入っていく姿を見た時は理解に苦しんだ。 ラブホの利用方法も変わったのか、それともレズビアンだったのか・・・。
朝ラブホから出勤するカップルもいれば、夕方、ラブホから出てくる若いカップル もいたり、まるで人生の縮図というか時代の移り変わりを見る思いがするが、微笑ましい光景を目にしたこともある。 60代後半とおぼしき男女がラブホから出てきた時だ。 見間違いではない。日曜日の朝だったと思う。ラブホのノレンをくぐり出てきたのが お婆さんとお爺さんだったのだ。 実際、女性の方は少し腰が曲がっていたように見えた。 これには一瞬びっくりしたが、微笑ましい光景と私の目には映った。 恐らく家では子供夫婦の目があり、Sexも自由にできないのだろう。 だから、週末たまたま見かけたラブホに入り、久し振りに愛の交換をしたに違いない。 果たして結合できたかどうかまでは分からないが、恐らくその二人にとって結合できるかどうかはどうでもいいことで、裸で抱き合い、互いをむさぼり合うスキンシップにこそ意味があったのかもしれない。 とはいえ、昨今では老人ホームでさえ性が問題にされる時代だが、性のエネルギーが生に通じているのは間違いないようだ。 さて、自分にはいつまで性=生のエネルギーがあるのだろうと、つい考え込んでしまった。 |