横断歩道でも車優先
中国は「自動車王国」である。
と書くと、自転車の間違いではないかと感じる人がいるかもしれないが、紛れもなく中国は「自動車王国」なのだ。それも随分昔から。少なくとも私が最初に中国を訪れた1978年以降はまさに自動車が王様で、「それ行けそれ行け自動車が通る」とばかりに自動車が最も威張っていた。
もちろん1980年前後の主役は自転車で、朝夕の通勤時ともなると道路に押し寄せる銀輪の波が中国の風物詩であり、美しくさえあった。
しかし、そんな時でさえ自動車は威張っていた。うるさいぐらいにクラクションを鳴らし続け、信号が赤でもお構いなしにスピードを緩めずに突っ走るから乗っているこちらの方がヒヤヒヤしたものだ。
その頃からの習慣(?)か、中国の道路はいまでも車優先である。
中国に行って一番怖いのが信号を渡る時である。
日本と違って車は右側通行だから、右左折して来る車の感覚がうまくつかめない。その上横断歩道の手前で一時停止して歩行者が通り過ぎるのを待つなどということがなく、「そこのけそこのけ車が通る」とばかりに突っ込んでくるから危なくて仕方ない。
一度などマイクロバスが私の胸スレスレに通り過ぎていった時には本当に肝を冷やした。
ボーとして横断歩道を渡っていると間違いなく事故に遭う。日本では携帯のメールを見ながらノンビリと道路を渡る若者が多いが、彼らはとても中国では歩けないだろう。
交通事故死亡者数は年間10万4000人
世界ワーストワンの不名誉な記録
2000年以降、中国では乗用車が激増している。
上海では写真を撮ると必ず車が写っている。歴史的な建造物や古い裏通りを撮影したい時には、この車が邪魔になる。あの車が通りすぎてから撮ろうと待っていたらとても写真など撮れない。それぐらい車が増えている。
しかも、上海の車は乗用車もタクシーもスピードを出す。市内が渋滞するからか、それとも少しでも早く目的地に着き、次の客を乗せようと考えるのか分からないが、高速道路ではビュンビュン飛ばす。さらに、前後左右の車間距離を詰めて走るものだから、私などはタクシーに乗ると生きた心地がしない。急がなくていいから、安全運転で頼むと言いたいのだが・・・。
こんな運転の仕方で事故が起きないはずはないので、03年の交通事故死亡者数は10万4000人に上っている(中国衛生部の発表)。自動車1,000台につき2人、1日285人が交通事故で亡くなっていることになる。もちろん世界ワーストワンだ。
こんな不名誉な記録を保持しているのは恥以外の何ものでもないとばかりに、今年5月、中国政府がやっと重い腰を上げた。「道路交通安全法」を施行し、厳しい罰則を課して事故の抑制に乗り出したのだ。
しかし、まだ期待できるほどの効果は上がってない。ただ中国は日に日に進歩しており、交通ルールやマナーが守られるようになる日もそう遠いことではないだろう。
米国、日本、ドイツに次ぎ
自動車生産台数は世界4位
中国の乗用車保有台数は急増しているが、同じように自動車生産台数も急増している。04年の自動車生産台数は507万台で、フランスを抜き米国、日本、ドイツに次いで世界4位である。05年上半期(1〜6月)の生産台数は281万台、販売台数は279万台。
今年はドイツを抜いて世界3位になるに違いない。
もちろん国内販売台数の大半は北京、上海などの大都市に集中しているから、上海は朝夕のラッシュ時は大渋滞。いまや渋滞解消が最大の自動車対策になっている。
30年近く昔、中国でよく見かけた乗用車は国産VWとトヨタ自動車。いまもタクシーは圧倒的に国産VWだが、一時のVW・サンタナ、それも車内外とも汚れがこびりついたガタガタの中古車がきれいなサンタナ2000に替わっている。とはいえ地方都市に行けばまだタクシーは古いサンタナが幅をきかせている。
タクシー以外の乗用車ではVW・サンタナはABS、エアバックが付いてないのが嫌われ台数は減少している。代わりにクラスアップのVW・パサートが売れているようだ。
乗用車で最も人気があるのはBMW。不動産バブル長者、成功したベンチャー企業家は皆BMWに乗っている。
上海でよく見かける外国車はベンツ、BMW、アウディ、韓国の現代。日本車では広州ホンダ、トヨタ、日産。
最近、伸びているのが韓国・現代の車で、月間シェアトップになったこともあるほど。人気の秘密は豪華な内装、高級感を感じさせる外観だ。
05.9.12
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