仁義なき戦いの幕開け
それにしても不思議なのは、なぜバルコムは福岡に進出したのか。ヤナセはそれを黙認したのか。もし、そうだとすれば、その理由は等々、疑問はいくつかある。
BMW Japanに限ったことではないが、代理店はエリア制で各県に1、2作るのが一般的である。営業エリアを明確にしないと代理店(この場合はディーラー)同士で客の奪い合いになり、結果、市場が荒れてくるからだ。
この原則に照らせば、今回のバルコム参入は「定石外れ」の石ということになる。
なぜ、「定石外れ」の手を打ったのか。その石は白なのか、黒なのか。
「うちは常にBMWから頼まれて出店していますから」
自ら望んで福岡に進出するのではない、とバルコムの某社員は語った。
どうやら今回の進出を仕掛けたのはBMW Japnの側らしい。そうした証言は他からも耳にした。
なぜ、BMW Japnは自らのルールに反してまで同一市場で競合させる策に出たのか。
「ヤナセがBMWの言うことを聞かないので、出てくれと言われたようだ」
前出の関係者はそう打ち明ける。
「BMW Japanの言うこと」とは具体的に何を指すのか。どうやら売上高のことらしい。
BMW Japanにしてみれば福岡市場はもっとマーケットがある(売れる)はずなのに、ヤナセの数字がBMW Japanより常に低めの設定になっている(目標売上高に届かない)のが我慢ならなかったのだろう。
こうした対立はフランチャイザー(チェーン本部)とフランチャイジー(独立加盟店)の間でも時々問題になるが、本部としては全体計画に狂いが生じるし、加盟店側にすれば無理な計画を押し付けるな、ということになる。力のある加盟店ほど本部の言うことを聞かないのはよくある話だ。
こうした対立が先鋭化してくると双方が次の手を打たざるを得なくなる。つまり加盟店はチェーン店からの離脱であり、本部は契約解除をするか、加盟店の近くに同じチェーン店を出店させるかだ。
こうなると完全に内ゲバで、戦う相手を間違えているが、分野に関係なく内ゲバの方が凄惨なのは過去の歴史が教えている通りだ。
もちろんマイナスの結果ばかりではない。互いをライバル視することで切磋琢磨し、市場が活性化することもある。
今回のBMWの場合はどうなるのか。本来なら商品を提供する本部(この場合はBMW Japan)の方が強いのが普通で、加盟店(この場合はディーラー)は最終的に頭を下げることが多い。だが、ヤナセにも自負がある。日本で輸入車市場を開拓し、リードしてきたのはヤナセグループだという自負心が。元を正せば輸入総代理店だったのだから。自分たちが苦労して輸入車市場を開拓してきたのに、市場が出来上がった頃にメーカーが日本法人を次々に設立し、ヤナセから輸入総代理店の権利を取り上げ、今度は我々に命令するのか、と。
さて、両者の対立がいい結果を生むか、その逆かはもう少し後にならないと分からないが、BMW Japanとヤナセの間になにがしかのシコリを残したのは間違いないだろう。
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