「パリは燃えているか」。第2次世界大戦でフランス・パリに迫るドイツ軍司令官に電話したヒトラーは電話口でそう叫んだ。
それから約70年、学生達がカルチェラタンを解放・占拠した「5月革命」から50年の今、パリで大規模なデモが起き、騒動に発展しつつある。今またパリは燃えようとしている−−。
そんな最中のパリに友人(安藤設計・安藤英典社長)が滞在しており、現状を尋ねたところ今朝(12月7日)、次のようなメールが届いた。
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おはようございます。現地時間では、5時30分です。
凱旋門は閉鎖されました。シャンゼリゼ通りの富裕層向けの店舗は、投石で窓ガラスが割れる有様です。
今朝の予定だった美術館も閉鎖され、郊外の住宅地にある美術館に向かうことに変更しています。
メディアは、論調を押さえていますが、観光施設は、次々と閉鎖されております。
富裕層向けのホテルも、フアッサードを防護フェンスに囲まれ、目的(ブティックホテル視察)が半分も達成出来そうにありません。
明日は、戒厳令がひかれないことを祈念していますが、昨夜食事に向かって路地に入ると市民は、皆さん元気そうで、流石が革命起こした国民だなと、感服するばかりです。
パリは、暖冬の影響で気温10°前後、
明後日からかなり冷え込んでくるようです。
街には、まだ半袖シャツの若者が溢れていますが、真冬並みの0°間近になりそうです。
それではお元気でお過ごしくださいませ。
安藤英典
*()内は栗野による補足説明
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マクロン大統領はこのところ相次いで問題を抱えたようだ。1つはルノーと日産の関係に関する駆け引き。そしてもう1つが燃料税値上げに端を発したジレ・ジョーヌ(イエロー・ベスト)運動のフランス全土への拡大。
ジレ・ジョーヌ、フランス語で黄色いベストという意味だが、車に乗るドライバー労働者は蛍光色のイエロー・ベスト(ジレ・ジョーヌ)を着用するよう2008年に法律で義務付けられている。
今回のジレ・ジョーヌデモの発端はフランス政府が燃料税(特にディーゼル燃料)の値上げをしたことへの反対だったが、次第に燃料税の増税反対だけにとどまらず、増税による生活不安、富裕層優遇政策への反発、政権批判へと拡大していっている。
ガソリン税も値上げされているが、なぜディーゼル燃料増税への反発が強いのかといえば、欧州ではディーゼル車の方が安いから、欧州で大衆車といえばディーゼル車で、その燃料税の増税は家計に直接響くというわけだ。
しかもマクロン大統領の政策は環境に悪影響をもたらすからとディーゼル、ガソリン車の廃止を打ち出す一方で、富裕層には税軽減策を打ち出している。この点はアメリカのトランプ大統領、安倍首相も同じだ。
富裕層優遇、低所得者層増税とくれば怒らない方が不思議というものだ。常に政権に従順でおとなしい日本国民を除けば。
運動が広がりを見せれば付和雷同者を含め様々な意見の人達が集まってくるのは洋の東西、歴史を問わず、よく見かけられることであり、今パリはまさにそのような状態になっているということだろう。
一部、暴徒化し破壊行為も行われており、今まさにパリは燃えている。
過去の反対運動と異なるのは運動の急拡大であり、それに役立っている(利用されている)のがツイッター、フェースブックなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)による情報拡散だ。
拡散すれば核が薄れていくのはあらゆるものに共通して見られる。ジレ・ジョーヌ運動も拡散と比例して当初の目的が薄れ、見えなくなっているようだ。早い話、現状に対する不満運動の様相を呈しているのではないか。
こうなると不満の矛先を向けられた政権側は誰と、どのような交渉をしてよいのか、なにを変革すればいいのか見えなくなるだろう。
フランスの騒動は長引きそうだし、欧州全域に広がる可能性もある。さらに言うなら世界に。
世界へ運動が拡大するのを防ぐ方法は世界が新自由主義と決別し、極端な貧富の差をなくすこと以外にないと思うが・・・。
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