今回も「なぜ、日本にビル・ゲイツが出ないのか」に対する読者からのコメントをお届けします。
お寄せいただいたのは(財)新機能素子研究開発協会企画室長の清水肇さんです。
清水さんは現職の前は産業技術総合研究所九州センター(鳥栖市)の所長をされていました。
あるセミナー会場でたまたま隣同士に座り合わせ(というか、どうもその列は関係者席だったようですが、少し遅れて会場入りした私に、前の方が空いているのでどうぞと案内され、いつも最前列か2列目に座るようにしているので、その時も何も考えずに座りましたが、座った後で気付きました)、名刺交換したのが縁で以来メールのやり取りをさせてもらっています。
コメント自体は盆前に届き、ご本人には返信していたのですが、今回はその時の返信内容ですでに重複した部分を省いたり、若干手を加えてお届けします。
栗野さん
いつも興味深くメール拝見してます。
今回期待していた部分があったのですが、一寸ずれていました。
いつも鋭いご指摘ありがとうございます。
今回はちょっと変化球を投げてみました。
実は隠れた主題は国のベンチャー表彰制度です。
何年か前、「創業・ベンチャー国民フォーラム」の委員になったとき、優れたベンチャー経営者を表彰することがベンチャー育成になるので、ベンチャー経営者を表彰しよう、ついてはそれぞれの地域で表彰対象を選んでくれみたいな話がありました。
その時、なんというバカらしいことをするんだ、そんなことで起業する人がどんどん増えはしないだろ、と思ったのが伏線としてずっとありました。
話しの興味は別の所にあって、
日本版ベンチャーが何故育たないか?
技術開発の分野に限ります。
・そもそも、良い玉がない
全体的に最近まで諦めていました。
でも、ブームが去った後に面白いのが出てくるというのはどこでもそうですが、最近、もしかすると期待できるかも、とも思い出しています。
中小製造業は努力不足だと感じています。
そこに持ってきて最近はコスト面で対応できなくなっており、ますます目先しか見えてないようです。
・独創性に欠ける
・エンジェル資金が少ない
独創性という意味ではますます欠けていますね。
特にIT系はどこも似たり寄ったりで、面白さもありません。
昔からそうですが、資金はある意味充分だと思います。
公的資金も含め楽な資金はかえってダメにします。
ただ、これも昔からそうですが、本当に必要なところに必要な資金が届いていないとは感じます。
ODA資金援助と同じです。
・失敗を恐れすぎる
・旨く行くと、追いつけ追い越せで、乗っ取りや買収になる
・とりわけ、大企業もそのようなえげつないことを仕掛ける
・大学の先生に企業家の精神が育っていない
・経営の感覚がないし、技術開発とは別という考えもあり
等々
アメリカの事例では大学の先生が必死で、研究成果を産業技術に育てることを考え、その形態がベンチャーとも聞きます。金儲けもさることながら、研究を社会に役立てたい、成果を社会に還元したい、その結果金儲けをしてみたいという精神が基本でしょう。
其れが夢を呼んで寄付が出来れば、或意味では、奉仕の心と繋がるかも知れません。
また、学生も、力試しとして、先生のベンチャーで働き育ってゆく。
もちろん失敗した場合はどう立ち直るのかなど、其れも教育として理解してるのかも知れません。
どうも日本の場合、儲け、投資という感覚で見てるようで、技術開発が成就して行くためのスパイラルループとしてのベンチャーの位置づけが弱いか、そこまで考えないか、、。
イノベーションのもとにベンチャー何千件大学から育てる、と言ったかけ声は最近聞かれないし、作ってみた物の青息吐息と言った物が多そうです。多分形から入るからでしょう。
私は大学の先生に企業家精神や経営感覚を期待してもムダというか、そもそも期待する方がおかしいと考えています。
この10年、大学に対する国の施策は間違っていると私は考えているのですが。
先生に限らず学生も含め、大学で起業家を育成したり、企業家の輩出を望むのはおかしいのではないでしょうか。
企業家になるならそもそも大学で研究に従事している必要そのものがないので、ビル・ゲイツを始め世界の著名な企業家は大学を出てないか、中退が多いことからも分かります。
そういうこととは別に、選択肢を用意しておくということは重要だと思いますが、なんでもかんでも起業する方向に持っていくのはどうも。
清水さんご指摘のように技術開発と経営感覚は別だと思います。
ただ、まれに経営感覚がある人もいます。
そういう人には起業しやすい制度がある、あるいは起業をサポートする制度を用意しておくということの方が重要ではないでしょうか。
「大学発ベンチャー○○社」というスローガンじみたものがありましたが、こういうものは数字で達成率を競うものでもありませんし、実際やってみると、起業そのものが難しいところに持ってきて、起業後の経営はもっと難しいということが分かってきたようです。
大学ブランドの日本酒や焼酎ばかりでは、と思います。
要は皆目先しか見てないのではないかと危惧しています。
私は大学の役割は次代の人材育成、研究開発、技術の実用化だろうと思います。
大学の停滞は先生の評価基準が論文評価1本だったことだと考えています。
だから自分の論文作成に汲々して次代の人材育成(授業)を疎かにする先生がいたり、実用化のことを考えず技術のための技術開発しかしない先生が多かったのではと思います。
名馬も名伯楽なくしては駄馬と同じ、といわれるように、どんなに素晴らしい才能を持った人でも、その才能を開花させてくれる先生に出会わなければ、普通の人で終わります。
教育、授業は非常に重要だと思っています。
ところが、この分野の評価が以前も以後もありません。
あるのは自己の金儲けのみ。
これでは大学はますます廃れ、日本人の能力は世界から置いて行かれます。すでにそうなりつつありますが。
大学の先生の評価基準を3本にすることもそうですが、総じて日本は何事でも1つの基準を設けようとしています。
実は複数の評価基準を設けることこそベンチャーの育成にもなると思っています。
そして考える力を付けさせることではないでしょうか。
最近の20、30代を見ていると、自分の頭で考える力、理解力ともに非常に落ちているように感じています。
日本の製造業は今なお強いと、豪語する話も聞きます
しかし、半導体の世界を垣間見てますが、DRAMももはや高級な部品ですから、日本のエレクトロニクス産業は抵抗、コンデンサーのたぐいの部品産業になって行くようです。
ソフトは東南アジア、インドと米国
自動車だって、環境という問題の中で、姿を変えるでしょう。
其れでよいのだろうか?
そういったことを栗野さんの文章に期待しました。
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清水 肇
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(財)新機能素子研究開発協会
企画室長
研究開発統括部長
〒105-0001
東京都港区虎ノ門二丁目9番14号
発明会館5階
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申し訳ありません。
今回はちょっと変化球でした。
そのうちご期待に添えるように直球を投げてみたいと思います。
清水さんが出されたようなテーマをいつかご一緒にセミナーかディスカッションでもできればいいですね。
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