栗野的視点(No.673) 2020年2月12日
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2025年、2030年の社会は?〜世界の製造業は半減する
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製造業を取り巻く環境は厳しい。特に小零細企業は三重苦に喘ぎ、いつ倒産、廃業してもいい状態にまで追い詰められている。10年後の2030年の話ではない。いま中小企業が直面している状況である。
では、10年後、20年後にはどうなっているだろうか。結論を先に言えば10年後に弱小零細企業は半数近くまで減少し、30年後には大企業を含めた製造業の約半数が世界から消えているだろう。
高齢化の波が中小製造業を襲う
なぜ製造業の数は減少していくのか。それは製造業が直面している課題と、取り巻く環境の変化にある。
まず国内の製造業、中でも中小企業が置かれている状況を見てみよう。彼らが今直面しているのは経営者と従業員の高齢化である。後者は技能の伝承をどうするかという問題にも関係してくるが、一部では熟練工の技術・技能を数値化し機械に置き換えることで熟練工の高齢化に対応しようとしている。
たしかにこれは現実的だ。今のAIの進化からすれば、5年後には熟練工の技術・技能はAIで可能になるだろう。
ただ、それで問題が解決されるかというと、そうでもない。AI導入コストの問題がある。AI化にかけた費用を何年でペイするのか、できるのかという費用対効果の問題がある。そのためには経営者の年齢も考慮しなければならないだろう。
まだ若ければいいだろうが、シルバー世代になっているとAI化にコストをかけてもペイできないということにもなる。
後継者がいれば話は少し違ってくるかもしれないが、大半の中小企業に未来はない。それが分かっていて後を継ぐ者はいないだろうし、仮に息子や娘がいたとしても彼らはすでに親とは違う道にほとんどが進んでいる。
では社員の中から後継者をと考えても、負債を背負ってまで引き受ける者がいるかとなると、これまた疑問だ。第一、年齢的にもある程度若く、かつマネジメントができそうな社員がいるかどうか。
となると残された道は廃業か売却しかない。ただ赤字企業や先の見通しがない企業を買うところはないから、結局、高齢化に直面した多くの中小企業は廃業するしかなくなる。
中小の製造業が抱える問題はもう1つある。グローバル化で激化している価格競争である。もう浪花節的な義理人情が通用しないのは随分前から分かっていることだが、価格的な選別は年々厳しくなっている。
過去の付き合いや実績より価格が優先され、価格競争は国内だけではなく、それこそグローバルになっている。そうなれば中国他のアジア勢に敵わない。最初の内こそ一日の長があったが、いまや熟練工の技術さえ海外勢が習得してしまい、「made in Japan」は内容や質を保証し誇れるものではなくなっている。
さらにAIが進化すれば技能の世界も簡単に置き換えられるから、中小製造業は価格競争、後継者難、AI化の三重苦に資金不足が加わり、5年後には半減。10年を待たず国内からほぼ姿を消しているだろう。
(2)に続く
#世界の製造業が半減
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