栗野的視点(No.671) 2020年1月13日
2025年、2030年の社会は?〜流通小売り編
キャッシュレス化は進んでいるか
昨年、鳴り物入りで始められた「キャッシュレス化」は2020年7月以降も定着しているだろうか。
日本は現金主義の人が多いからキャッシュレス化は進まない、というのが事前予想だった。というのも2016年時点でのキャッシュレス決済は19.9%(キャッシュレス推進協議会)に過ぎなかったからだ。韓国96.4%、中国65.8%と比べると日本のキャッシュレス化がいかに進んでいないかがよく分かる。
これを2025年までに40%まで引き上げたいというのが政府の考えで、そのために多額の税金を突っ込んで「キャッシュレスでお支払いのお客様に5%還元」する政策を打ち出してきた。
これ、実は消費税値上げと中小商店対策なのだが、ここでは注ぎ込んだ税金の額には触れない。またキャッシュレス化がなぜ必要なのか、本当に必要かについても触れない。
ただ、こうしたキャンペーンのせいで、といっても政府の「5%還元策」もあるけれど、「〇Pay」のキャッシュバックキャンペーン効果の影響の方が大きいが、いずれにせよ当初の冷ややかな見方に反し、昨年10月以降徐々にキャッシュレス利用者が増えて行ったのは事実のようだ。
さて、この流れが政府の「5%還元」が切れた7月以降も続くのか、それとも元の現金決済に戻るかだが、人は一度やすき方法を手にすると、それを使い続ける習性がある。例え使うメリットがなくなっても惰性で使ってしまうのだ。
財布がなくてもスマホをかざすだけで決済できる方法は便利なことこの上ない。特に都市部で生活する人間は一度嵌まったスマホ決済から抜けられないに違いない。
因みに私の場合はクレジットカード決済で、スマホ決済は一度も利用したことがないし、おそらく今後も利用するつもりはない。理由はやすきに流れ、つい余分なものを買ってしまうからだ。
カード決済でも同じようなことは言えるのだが、それでもまだ財布からカードを取り出すという一手間があり、この一手間が最後の砦と言うか、ちょっと待てよと考える時間を与えてくれることがある。
ついでに言えば請求書、利用明細書の類も紙の方が好きだ。最近は経費節減とかでどんどんペーパーレスになりWebで確認するよう半ば強制的に替えられているが、あれはユーザーを蔑ろにした行為以外の何物でもないと考えている。
私は紙の利用明細書等を綴じ込んでいるから通話料や車の点検・修理費なども、いつ頃どこをどう修理したか、1年前の通話料はいくらだったかなどが皆分かる。
その程度のことはWebベースでも分かるではないかと言われそうだが、いちいちネットに接続して確認するのが面倒くさいし、相手によっては3年間は遡って見られるが、それ以上ともなるとPDFファイルにして保存してくれなどと言われる。
そんな面倒くさいことはしないから、当月料金の確認をするだけで、明細チェックや過去の請求金額などは見なくなる。もちろん中にはPDFファイルにしたりし細かくチェックしている人もいるだろうが、それは少数派だろう。
さてキャッシュレス決済である。毎回、細かく家計簿をつけている人は別にして、昨年末かこの正月休みの間に通帳の残高を見て考え込んだ人は案外いるのではないだろうか。通帳の確認もしない人は論外で、よほどの金持ちか、計画性のない破綻予備軍と心得るべきだろう。
キャッシュレス決済に替えた前後を見比べて、昨年10月以降の支出が増えていることに気付き現金決済に戻した人もいると思うが、その数が7月以降はキャッシュレスから現金に戻す人が80%で、そのままキャッシュレスを継続する人が20%と見る。この計算で行けばキャッシュレス人口は4%弱しか増えてなく、全体で24%程度となる。
一方、小売店の方でも「キャッシュレス5%還元」や決済端末の無料貸し出しが終われば、現金決済に戻すところが出てくるだろう。小さな商店ほど、その比率は高いというか、もともとキャッシュレス決済を導入してみたものの恩恵をほとんど受けてないところが大半で、「5%還元」やポイント還元の継続がなされなければ、2025年時点でのキャッシュレス化は40%台に留まっているだろう。
(2)に続く
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