ココチモ

 


衝突時にエアバッグが開かないことは多い


 「ドーン!」。車がぶつかる大きな音が響いた。ベランダに出て下を覗くと、マンションから10m程先の交差点で車がぶつかったようだったが状況がよく分からない。そこで降りて現場まで見に行った。
 別に事故現場を見たからどうこうというわけではないが、根がミーハーなものだから、こういう時にすぐ顔を出したがる。こういう性格はあまりいいことではないし、どうかすると事故の巻き添え(特に外国では)になる可能性さえあるから慎まなければと思うのだが、頭と身体が正反対の指示を出してしまうからよくない。

 交差点まで行くと、角の家の前に小型車が壁に前方を向けて駐まっていた。門扉前には2、3段の階段があったが、その階段にちょうど乗るような形で駐まっていた。それは、その家の訪問者の車のようにも見えたが、よく見ると助手席のドアが大きく凹んでいたので、ぶつかった後民家のコンクリート壁に突っ込んで止まったようだ。
 なんだ、独り相撲かと思いつつ、近くで同じように事故現場を見ていた人と立ち話。
「どういう状況だったのですか」「いや、ぶつかった瞬間は見てないんですよ。大きな音がしたから出てみたんだけど、ベンツの方が酷い。使いものにならんでしょう」「えっ、ベンツ?」
 小型車にばかりに目が行っていたが、よく見ると交差点の数m先にベンツが駐まっていた。またまたミーハー宜しく見に行く。ボンネットの前が凹み、ラジエター前部カバーが大きく剥がれていた。
 それにしても国産小型車より頑丈に見えるベンツの方がダメージが大きいとはちょっと意外な気がした。
 意外と言えばベンツが小型車の横に正面から突っ込んでいるのにエアバッグが膨らんでいなかったことだ。

 なぜエアバッグは作動しなかったのだろうか。疑問を感じるとつい確かめたくなる。ドライバーと思しき人に話しかける機会を待ち「エアバッグ、開かなかったのですか」と尋ねると、「そうなんです。ベンツのくせに、と言いたいですよ」と忌々しげに言葉を吐き捨てた。
 これは他人事ではない。エアバッグがあるからといままでは多少安心していた部分もあるが、正面衝突しても作動しないとなると話は別だ。

エアバッグが膨らむ条件

 では、エアバッグが作動するのはどういう時で、作動しないのはどういう時なのか。そんなことも知らなかったのかと言われそうだが、正直いままで考えたこともなかったので、この機会に調べてみた。(国土交通省のHPを参考)
 国土交通省によるとエアバッグが膨らむのは次のような条件の時である。
1.時速20km〜30km程度以上の速度で、コンクリート壁のような強固な構造物に正面衝突した時
2.自動車などと衝突し、1の衝突と同様の衝撃を受けた時

 この条件に照らせば冒頭の事故の場合、車の速度は少なくとも30km以上は出ていたと思われるから、エアバッグが作動する条件に合致している。
 ただ、ここで問題になるのが「コンクリート壁のような強固な構造物に正面衝突」という箇所だ。これは衝撃を受けても衝突相手が動かないことを意味する。
 つまり車の側面に衝突した場合はドア等が凹み、衝撃を吸収するからエアバッグは膨らまないのだ。
 これで冒頭の事故でベンツのエアバッグが作動しなかった理由が分かった。
 そのほかにも
イ)電柱のようなものに衝突した場合
ロ)斜めに衝突した場合
ハ)トラックなど大きな車の後ろに潜り込む形で追突した場合
 などもエアバッグは作動しないようだ。

 現在国内で使用されているエアバッグはSRSエアバッグと呼ばれ、シートベルトの補助装置という位置づけであり、衝突時に「乗員に重大な傷害が発生しないように作られている」。

 ところでエアバッグは膨らんだ方がいいのか、膨らまない方がいいのか。
何をバカな、膨らんだ方がいいに決まっている。エアバッグのお陰で命が助かるのだから、と言われそうだが、冒頭の事故の場合はエアバッグが膨らまなくて助かったと言えそうだ。
 まず追突した車に乗った家族(30代夫婦と幼児2人)に救急車で運ばれた人はいなかった(救急車を呼ばなければいけないほどの怪我人が出ていない)。運転していた人が少しむち打ちを訴えていたが、額や顔面をハンドルやダッシュボードに打ち付けた人はいなかった。

ドライブレコーダーは参考にされない?

 では、この状態でエアバッグが膨らんだらどうなっていただろうか。エアバッグの膨張速度は時速100km〜300kmに達するから、風船に頭を突っ込むような軽いイメージではない。時速100km〜300kmで飛んできた物が顔面を直撃するわけで「打撲傷、骨折、火傷等の被害を乗員が受ける可能性」がある。眼鏡をかけていれば、壊れた部品、破片が目に刺さって最悪の場合失明ということもあるかもしれない。そう考えるとちょっとした弾みでエアバッグが膨らむのは避けてもらいという気にもなる。

 ところで冒頭の事故現場には2日後、看板が立てられていた。「○月○日○時頃、この交差点で車と車がぶつかる事故がありました。事故を目撃された方は連絡下さい」と。
 それを見て新たな疑問が湧いてきた。ベンツはドライブレコーダーを搭載してなかったのだろうか、と。少なくともどちらかの車にドライブレコーダーが搭載されていれば事故当時の様子は映っているはずだが。それとも警察はドライブレコーダーの映像を参考にしないのだろうか。
 つい数日前、警察にドライブレコーダーの映像など参考にしないと言われたとして、事故当時のドライブレコーダーの映像をネットにアップしたことがTVのニュースで取り上げられていたが、その映像を見る限り、相手は当たり屋のようだった。
 警察がドライブレコーダーの映像を見もしないとなると、それも問題だと思うが・・・。最近の警察は問題だらけだから。




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