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異常高温の夏、それでも「甲子園」をやめない朝日新聞社


 かつて見たこともないような怪物が地球を襲っている。「異常気象」という名の怪物が、ある時は異常高温を伴い、またある時は大洪水を伴って世界各地を襲っている。

 この数年、「猛暑」という言葉はが毎年繰り返されてきた。そして我々も多少その言葉に慣らされていたような気がする。それでも国内で40℃を超す気温が2年も続けて記録されたのは異常だろう。
 しかも、この異常は日本だけではなく世界各地で起きている。サハラ砂漠は暑いことで知られているとはいえ51.3℃は記録的な暑さだし、カリフォルニアでは52℃を超えたというから、もう人が住める環境ではなくなっている。
 北極圏でさえ30℃超の気温を記録したとなれば心配になるのが北極の氷。それでなくても北極の氷が減少しているといわれているのに、減少速度が一気に進み海面上昇が進めば海抜の低い国や地域は浸水の被害を受ける可能性が高い。
 いや、先の話ではない。今夏に限ってみても道路や鉄路、滑走路など、およそ道と名が付くものは高温でグニャリと曲がったり、アスファルトや車のタイヤが溶けて穴が空いたり、信号機が溶けて役に立たなくなった地域もあるというから驚くではないか。

 異常気象の原因の一つに地球温暖化があるのは間違いない。早急に温暖化防止に向けて動かなければ、この国だけではなく、この星そのものの危機だ、という話は一時置いて、もう少し直近のことに話を移そう。
 とにかく今夏の気温が猛暑を通り越して異常過ぎるのは、気象庁が「災害だ」と言ったことでも明らかだ。7月16日〜22日までの1週間だけで、熱中症による死者が全国で65人、同じく熱中症による救急搬送数は2万2647人を数えている。

 私自身は昔からエアコン、冷房の類はあまり好きではない、というか身体に合わないようで、自宅では夜間はもちろんだが昼間でもあまりエアコンをつけたことがない。それでもさすがに今夏はエアコンなしではとても我慢できないし、「災害だ」という気象庁の警告に素直に従い、日中は不要不急の外出を控えている。
 メディアも連日のように熱中症対策を促し、朝日新聞は7月15日付けの紙面で「熱中症、ならないためにどうするか なったらどうするか」と題して次のような記事を載せている。

「熱中症は暑さや激しい運動で体内の水分や塩分が不足し、体温調節ができなくなる状態だ。けいれんや頭痛、吐き気などを引き起こし、死に至ることもある。室内でも起こり、体温調節が鈍くなりがちな高齢者や、子どもはより注意が必要だ。
 熱中症を防ぐには、暑さを避け、こまめに水分や塩分をとることが大切だ。水分補給は塩分を含むスポーツドリンクなどが望ましい。室温は冷房などで28度前後に保ち、外出時は帽子や日傘を使う」

 スマートフォンの防災アプリからは「炎天下の外出を避ける」「屋外での運動禁止」を訴える警報も頻繁に届く。
 にもかかわらず、朝日新聞社はこうした状況に目を瞑っているのか、自社の利益を優先しているのか、はたまた報道と事業は別と開き直っているのか、おそらくその全てだろうと思うが、一向に手を打とうとしない。

 夏の高校野球のことである。ここ数年の猛暑を考えれば、炎天下の野球は中止すべきだろう。全面中止が難しければドーム球場での開催にするとか、昼間を避けてナイターにするなど、手は打てるはずだ。
 ところが、内部でそのようなことが議論された風さえないのには首を傾げざるを得ない。人名尊重に対して急先鋒で論陣を張る朝日新聞社にしてみれば片手落ちというか、おかしな対応である。

 そもそもなぜ真夏に開催するのか−−。全国高校野球大会といえば年に2回開催されているのはご存知の通りだ。春は毎日新聞社が、夏は朝日新聞社の主催である。全国高校野球大会だから年に2回も開催しなくても1回でいいように思うが、今と違って大して娯楽もない時代、国民に夢を与える意味でも年2回開催にしたのは分からなくもない。
 それでも春の大会の次が夏というのは合点がいかない。普通に考えれば春と秋だろう。その方がバランスも取れる。高校球児の休養という意味でも。
 にもかかわらず朝日新聞社は夏に開催と決めた。別に各校が夏に開催してくれと懇願したわけでもないようだ。

 たしかに当時は今ほどの猛暑ではなかった。だから夏の開催でいいというわけではない。だが、新聞社と言えども私企業であることに変わりはない。そこに働くのは経営の論理−夏休み中の方が観客数が多いという経営の論理が、球児の健康面配慮より上を行ったということだ。
 しかし、だ。異常高温で森林火災が起き、記述したように熱中症で死者まで出る時代だ。もう経営の論理や前例主義に拘っている時ではないだろう。このままでは高校球児や若者の将来を奪いかねない事態が起きる危険性もある。そうなる前に開催時期を秋にずらすなり、ナイターに切り替える、あるいは開催休場を甲子園から多少なりとも涼しい東北地方に移すなどということを真剣に考えるべきではないかと思う。知恵を絞ればできないことはないはず。

 朝日新聞社に言いたい。この問題に社説でも一切触れず、触らずの態度をやめ、急ぎ、真剣に内外を巻き込んで議論し、早急に決断すべきではないかと。
 それとも報道部と事業部は別と開き直り、ジャーナリズムをやめますか−−。




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