不正列島ニッポン(1)〜日本の食が危ない。(2)」
〜残留農薬が多い国のハチミツ


基準値の5倍も残留農薬

 私の朝食は食パン1枚と青汁。パンに塗るのはジャムとオリーブオイルか蜂蜜。頑固な健康志向派でもベジタリアン(菜食主義者)でもないが、身体によくないと分かっているものはできれば摂りたくないから、トランス脂肪酸や、それが使われているマーガリンのほか、ショートニングや乳化剤もできるだけ添加されていない食パンを選ぶようにしている。
 ただ悲しいかな、添加物が色々入っている方が「おいしい」と感じる。素材本来の味を楽しめばいいと言われても、高度経済成長期の頃から添加物まみれの商品を口にしてきているため、舌が作られた味に慣らされてしまっているということもあるが、添加物は味をよくするためでもあるから、一般的には添加物入り食品の方を「おいしい」と感じてしまう。添加物の中には防腐剤もしっかり入っているのだが。

 ここで問題になるのが、身体にいいと思って塗っている蜂蜜。食品類を買う時は必ず裏側ラベルを見て原産国や原材料名を確認しているし、中国産蜂蜜は基本的に買わないことにしている。理由はケ小平の「開放改革政策」以降、中国人が極端な金儲け主義に走り、儲けるためなら何でもありの風潮が蔓延し、ありとあらゆる偽装が横行し出した。農畜産物も例外ではなく収穫を増やすために農薬はかけ放題。蜜蜂が採取してくるのは、そうした花からの蜜で、当然の如く蜂蜜は農薬に汚染されていることになる。それが分かっているから中国産蜂蜜は買わないようにしている。

 ところが危険なのは中国産だけではない。「蜂蜜は世界で最も偽装されやすい食品の1つ」と言われるぐらいで、「100%純粋ハチミツ」と表示されているのにコーンシロップなどの糖質で希釈されていたり、「国産ハチミツ」と謳われているものが海外産との混ぜ物だったりする。こうした偽装は時々摘発されて問題になるが、一向に改まる気配がない。
 そうした中で起きたのが「サクラ印ハチミツ」で知られ、国内最大シェアを誇る蜂蜜製造メーカー・加藤美蜂園本舗の蜂蜜回収だ。
 事の発端は昨年10月に「週刊新潮」で、同社製海外産蜂蜜にグリホサートという農薬の残留量が基準値の2〜5倍も含まれていると報じられたことだ。
 グリホサートという名前を聞いてもどんな農薬なのかピンとこない人が大半だろうが、除草剤「ラウンドアップ」という商品名を聞けば分かるだろう。ホームセンターなどでごく普通に売られているし、雑草枯らしによく効くと勧められる。

 このラウンドアップを製造しているのは米企業モンサント(現バイエル・モンサント)で、同社はベトナム戦争当時、大量に散布された枯葉剤を製造した会社である。ついでに言えばグリホサートに耐性がある遺伝子組み換え植物を開発しているのも同社だ。
 グリホサートは発がん性があり、ヨーロッパを中心にラウンドアップの使用を禁止する国が続出しているが、今回、基準値の5倍ものグリホサートが検出されたのが加藤美蜂園本舗が輸入販売しているアルゼンチン産とカナダ産の蜂蜜だ。

あらゆる分野に及ぶ食偽装

 それだけでも問題だが、同社は週刊誌報道の8か月前にはその事実を知りながら隠蔽し続けた。社内会議で社長は「できれば回収したくない」とまで言っているのだから悪質である。
 さらに週刊誌で報道された後も動きは鈍く、即座に記者発表も店頭回収も行わなかった。当初は報道した1社のみ。しかも週刊誌と高を括っていたのだろうが、ネット等でも知られるようになり、やっと店頭回収に向けて動き始めた。
 西友グループは自社PBブランドで同じ蜂蜜を販売していたが、いち早く店頭回収に乗り出したが、同グループのスーパー、サニー(福岡中心に展開しているスーパー)も西友ブランドの蜂蜜を棚から回収したが、消費者に知らせる案内は張り出さない店舗や貼り出しても短期間だったり、店舗によるバラツキが見られた。福岡市南区の長住店と長丘店は距離にして1kmほどしか離れてないが、長丘店は本稿執筆時でも加藤美蜂園本舗の回収案内と西友の商品回収案内をまだ売り場に張り出しているのに対し、長住店は棚から商品が消えただけで、一切案内はない。こうした対応は問題だろう。

 ついでに触れれば、偽装、不正ではないが、山田養蜂場は1月中旬に海外産蜂蜜を大幅値上げした。従来3,000円未満だった輸入蜂蜜が6,000円台と倍以上の値上げになっている。いくら輸入品の値上げが相次いでいるとは言え、ここまでの値上げ理由は何なのか。蜂蜜の不正や希釈による誤魔化しと関係あるのかと勘ぐりかねない。

 問題は海外産だけではない。国産が安全かと言えば先に述べたように産地偽装もあるし、農薬散布は国内でも負けず劣らず行われている。それどころか海外では発がん性が疑われ、ラウンドアップの販売規制を行っている国が増えているにもかかわらず、日本は無規制。むしろ海外分が日本市場に流れ込んでいる様相さえ見せている。

 ここではアサリや馬肉、蜂蜜の問題を取り上げただけだが、実は食の偽装はかなり以前から、それも広範囲に行われている。日本酒では灘の「富久娘酒造」が純米酒に醸造用アルコールを混ぜて販売していたし、しゃぶしゃぶで知られる「木曽路」が和牛肉をブランド肉の松坂牛と偽っていたことが発覚しているし、大手ホテルのレストランでメニューに車エビと表示されているものが実はブラックタイガーだったり、地鶏が国産鶏、和牛は高雑種牛肉、フレッシュジュースと謳っているものが冷凍ジュースだったりする。大手ホテルでこれだからその他は推して知るべしだろう。

 個人的なことで言えばサーモンは大好きだったが、数年前からチリ産の養殖サーモンは一切口にしなくなった。ホテルや旅館では朝食にサケが出るのが定番だが、これも国産のサケなのかチリ産の養殖かどうか疑わしいから食べないし、回転寿司等ではガーリックは農薬漬けで危険すぎるから一切口にしない。
 発ガン性物質が含まれている蜂蜜はカナダ、アルゼンチン、ミャンマー、中国産一応安全と言われているのはハンガリー、オーストラリア、ニュージランド、メキシコ産だ。

 こう見ていくと安心して食べられるものがなくなりそうだが、毎日口にするものだけに1回が少量でもチリも積もれば、になる。できるだけ農薬がかかってない食物を選ぶようにした方がいいだろうし、消費者はもっと賢くなるべきだ。少なくとも裏側ラベルを見て原産国や原材料名を確認して買うぐらいのことは最低限必要だろう。


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