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アメリカ的強欲資本主義と決別できるか
〜カルロス・ゴーンが及ぼした影響(3)


 「ゴーンマジック」もトリックは同じだが、なぜ日産幹部はそれを見破れず、社内で問題にもならずゴーン信奉に傾倒していったのか。
 それには2つの要因がある。1つは最初に「空中浮遊」を見せられたから、いや間違い。そうではなく「V字回復」を見せられたから「スゴイ」と幹部は脱帽し、リストラを免れた社員も「ゴーン社長(当時)に付いていけば間違いない」と信じたのだ。
 一度信じれば後は疑わことをしないというのはどこかの宗教団体と同じだ。殺人を「ポア」と言い換えることで、「魂を救済」してやること、つまり善行為なのだと信じ込ませ、納得させた(した)わけだ。

 宗教に名を借りた活動と経済活動を同列に論じるわけにはいかないと思われるかもしれないが、両者の間には多くの共通点がある。信者はそこを救いの場として求めているわけで、そこから離れるということは再び苦しみの中に戻ることを意味する。
 日産社員はゴーン流経営の誤りを指摘すれば再び赤字の日産に逆戻りするかも分からない。そうなれば今度は自分達が「コストカット」されるかも分からないという恐怖。
 両者はこの恐怖に取り憑かれているという点を共有している。

世界は強欲資本主義と決別するのか

 ゴーントリックを今に至るまで見破れなかったもう1つは、日産の経営陣もおこぼれに預かっていたからである。
 ゴーン氏の高額報酬とは比較にならないにしても、それ以前の日産では手にできなかった報酬を手にしている「共犯者」的な後ろめたさがあるが故に声を上げられなかったと思われる。

 では、なぜ今、ということだが、内部反乱のきっかけは権力の腐敗がピークに達した時か、自らの命が危ない時というのが常だと歴史が教えている。
 今回の東京地検特捜部によるゴーン氏逮捕もどうやらその通りのようだ。ゴーン氏による公私混同が目に余りだしたという「権力の腐敗」と、ゴーン氏による西川社長以下経営陣の更迭計画を察した現経営陣の先手を打った反乱ということのようだ。
 問題はゴーン批判が日産、あるいはルノーも巻き込んだ「高額報酬問題」という「コップの中の嵐」で終わるのかどうかだろう。
 すでに見たようにJIC役員の高額報酬が問題になり、今日(12月10日)JICの田中正明社長以下の取締役9人が辞任することになった。個人的には賛成であるが、新自由主義に代表する強欲資本主義を是正する動きが今後世界に広がりを見せていくのかどうか。

 その前兆はすでに現れている。60年代後半に世界に広がったスチューデント・パワー、ベトナム戦争反対運動はフランスのカルチェラタンの占拠・解放から燎原の火のごとく広がっていった。自由と公平を求める運動はフランスと切っても切れない関係にある。
 燃料税増税に反対する形で始まった「ジレ・ジョーヌ運動」はすでにその枠を飛び越え、マクロン政権の富裕層優遇批判へと拡大し、一部騒動に近い形にまでなっている。
 同じような問題は他のEU諸国、アメリカ自身、さらにいえば日本も、共産主義を標榜する中国でさえも抱え、顕著になっている。今後これらの国でも強欲資本主義に反対する動きが起きるのかどうか。そして世界はアメリカ的な強欲資本主義と決別するのかどうか。


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