中国は訪問する度にハード・ソフトの変化が著しく、その変化に眼を見張ったり、驚かされたりするが、中でもホテルの変化には随分驚いた。
北京で泊まったのは市内でも西の外れの「北京美泉宮飯店(Schonbrunn Hotel Beijing 海淀区西四環北路)」。数年前に建てられた新しいホテルのようで、調度品もよく快適だったが、ベッドサイドの備品には驚かされ。
中国式快眠のススメ
通常、サイドテーブル上に置かれているものは小さなメモ帳とペンに時計ぐらいなものだ。ところが、ここは違っていた。それらとは全く関係ない、何か別の物が一杯並べられていたのだ。
よく見ると、それらには値段表示がしてある。68元に48元。68元の方は何かよく分からなかったが、48元の方は中にカミソリが見えたのでひげそりセットではないかと思う。
そういえば洗面場に歯ブラシ、歯磨き粉、そして無料サービスのミネラルウォーターは置いてあったが、ひげそり用のカミソリはなかった。
なんだカミソリはサービスではないのか、金儲け主義だななどと思いながらも、一番手前に並べられた小さなものが気になった。「ICE-COOL」という英語表記が目に入ったからだ。おまけにグッズ類の横には「祝君晩安 Good Night」というプレートもある。恐らく「安らかに眠れるように」という意味だろう、という程度には想像がつく。
夏用の快眠グッズかとも思ったが、それにしては小さすぎる。中に入っているものはリングのような形をしている。一体何だろう。さらにその横のものを見ると「VIBRATED & CONDOM」と書かれていた。そこまで見て初めて分かった。この小さなものはコンドームなのだ、と。
そう理解すると「祝君晩安」の意味が少し違うニュアンスで伝わってきた。たしかに、と妙なところで納得。しかし、ここは北京市内の西の外れとはいえ、「5つ星」(ツアーガイドにはそう表示されていた)の一流ホテルで、いわゆるラブホテルではない。それなのに、なぜ、という疑問を禁じ得ない。それにしても中国の「サービス」もここまで来たか、と妙なところに感心。
抑圧社会で真っ先に解放されるのは性の開放である。そのことは古今東西の歴史が示している。改革開放社会で真っ先に解放されたのは経済ではなく性の分野。
中国政府は公式には認めたがらないが、一説によれば中国のエイズ感染者数は危機的な数に上るとさえ言われている。だから、現実的な対処法としてコンドームを配置しているのかどうかは不明だが、君子危うきに近寄らず。日本人旅行者はこの言葉を明記すべきだろう。それでなくても旅の恥は掻き捨てとばかりに海外で羽目を外したがる日本人が多いから、ひと言苦言を申しておきたい。
(後に続く)
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