栗野的視点(No.799) 2023年6月12日
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「クローズアップ現代」に見るメディアのだらしなさ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ TVが面白くない、とは以前にも書いたが、TVというより日本のメディアがおかしいのだが。その点は後で触れるとして、最近観るTV番組はNHKの「映像の世紀」「NHKスペシャル」ぐらい。いずれも録画で、1時間を超える番組は数回に分けて観ている。映画はもっぱらアマゾンプライムビデオのお世話になっている。昔はよく2時間ドラマを録画していたが、最近は面白いものがないのでほぼ見なくなった。
昔はNHKはニュースにしろほとんど視聴しなかった。政権寄りの報道ばかりだったからだ。ところが時代が経るに従い民放各社が時の政権に(といっても自民党政権にだが)オモネリ、忖度しだしたものだから、NHKの立ち位置が中央に移り出した。といってもあくまで相対的に見て、という話だが。
また時に上層部の意向を無視したような番組を地方局が独自に制作することがあり、そうした番組に観るべきものがある。特に広島局が毎夏制作する番組は素晴らしい。戦後70数年、よく毎年、新しい切り口で制作していると感心する。中国地方以外では観ることが出来ないのが残念で、全国放送で流せばいいではないかと思うが、局内のヒエラルキーがあり、地方局は格下に見られているのではないか。
「クローズアップ現代」は近年面白くなく、これまた殆ど見ないが、放送時間帯が19時半に繰り上がってから、私の夕食時間帯と重なり目に入るようになった。それで時々見るが、5月17日に「“誰も助けてくれなかった” 告白・ジャニーズと性加害問題」と題した放送があったので、どこまで突っ込むのかという関心があり観た。
結果はガッカリ。タイトルで釣るのは民放、週刊誌の中吊りと同じではないか。たしかに他局が正面から取り上げない中でNHKが取り上げたという点では多少評価するが、「被害を繰り返さないために何が必要か検証する」と大上段に構えていたが、一体何をどのように「検証」したのだろうか。
ただ、被害を受けた元タレントを登場させ、証言させただけではないか。それも新しい内容はまったくなかった。
大体、番組の冒頭からして間違っている。まず、自分達メディアがこの問題を取り上げてこなかったことを謝るべきだ。
いや、一応、形だけは謝ったようにも見えるが、そこには民放を含めメディアの責任という形であり「NHKは」という一人称ではなかった。
「私達NHKはなぜ、この問題を取り上げてこなかったのか」ということこそを「検証」し、掘り下げるべきだ。それをせず、次のような文言で番組の事前紹介(あえて「番宣」とは言わないが)をするのはおかしい。そこにはジャーナリズムは存在しない。
「今週、藤島ジュリーK.社長が公式見解を発表した。BBCのドキュメンタリーや外国特派員協会での会見後、独自取材を進めてきた取材班。今も自らが受けた被害に苦しんでいるという人、周囲の被害を目撃していたとして沈黙した自分を責める人など、新たな証言の数々が。」
番組を観た限り「独自取材」はどこにあったのか分からなかった。すべてが焼き直しで「新たな証言の数々」など見当たらなかった。それともNHKはこの程度のものを「独自取材」「新たな証言の数々」と言うのだろうか。「数々」というのは1つや2つを指すものではないと思うが。
すべてはイギリスの放送局「BBCのドキュメンタリーや外国特派員協会での会見」を受けた後の後追い取材であるにもかかわらず、新しいものはなにもなし。桑子真帆アナは自分はキャスターで番組制作はスタッフがしていることと言うかもしれないが、それならキャスターはお飾りということだろう。
もっとはっきり「私達NHKもジャニーズ事務所に忖度していました」と率直に言い、いままでこの問題に目を瞑ってきましたと謝罪すれば、メディアも少しは見直されたかもしれないが、「クローズアップ現代」にはガッカリさせられた。
やはり日本のメディアはダメだ。
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