セブン・イレブン・ジャパンの成長を支えた3番目の原動力はドミナント戦略(ある地域・エリアに集中的に出店し、その地域・エリアで高いシェアを獲得する戦略)である。
この戦略はブランド認知力が弱い時期、ブランド拡大期には有利な戦略だが、ブランド力が高まった成熟期にはむしろデメリットの方が強くなる。しかし、セブン・イレブンはコンビニ店舗が飽和期に入ってからもドミナント戦略に頼り、集中出店の手を緩める気配はない。
その影響を受けて売り上げが下がっているのが他社コンビニではなく自社、セブン・イレブンの既存店だ。自店の100−200m先に同じグループのコンビニ店がオープンすれば客を奪い合うのは当然だろう。それが他社ブランドのコンビニ店舗ならまだ諦めもつくかもしれないが、同じ看板の店が出たのでは「約束が違う」と言いたくもなるだろう。
今回、営業時間を短縮したセブン・イレブン店はまさにそうした状況下に置かれていた。
これでは自社グループ店舗潰しと言われても仕方ない。それでも同社がドミナント出店戦略を止めないのは、本部の売り上げが上がるからだ。苦しいのは加盟店だけで、極端な言い方をすれば加盟店が潰れようと本部は痛くも痒くもないわけで、廃業店舗の跡か、その近くにまた同じブランドのコンビニをオープンさせればスーパーバイザーの成績にも響かないというわけだ。
脱24時間営業に舵を切るか
この「アコギ」(というのは言い過ぎか)とも言えるセブン・イレブン本部のやり方も今回だけは社会を敵に回しかねなくなり、とうとう戦略転換を迫られたようだ。やはり大きかったのは関西経済会の大物らからの「人手がなくて店を開けていられなければ、閉めざるを得ない。それを邪魔するのが契約か」という批判の声だろう。
営業時間短縮を巡る本部と加盟店の対立がマスコミで取り上げられてから約10日後に「高齢化や人口減といった社会構造の変化に備える」と称し、1都7県の10店で「営業時間を午前7時から午後11時」までに短縮し、「売り上げや商品の搬入などへの影響を調べる」実験に乗り出した。
これでセブン−イレブンに戻るのかどうかはまだ分からない。というのも実験するのが直営店舗でだからで、そのことを不安視する加盟店の声もある。直営店なら実験結果は本部の意向でどうにでもなるからだ。
とはいえ、時代はすでに曲がり角を過ぎている。もう店舗拡大・売上アップの時代ではない。消費人口は今後も確実に減少していくし、日本人の胃袋も小さくなっていっている。これからは満腹ではなく「腹八分で健康」な消費を助けることこそが大切で、経営的には本部中心ではなく、加盟店も共に成り立つ仕組みに切り替えられるかどうか。
いつまでも過去の成功体験に引きづられるのではなく、時代に合わせた変化ができるかどうか。いまセブン・イレブンは転落するか踏み止まれるかの瀬戸際に立たされているのではないか。 2019.3.6
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