車なしでの田舎暮らしに挑戦してみた。(2)


 さて問題は日常生活で、食材の買い物をどうするか。いつもなら車で15分程走れば食品スーパーやホームセンター、家電専門店等が並んでいる場所に行けるので、そこで食材や日用品を買ってくるのだが、今回は車がない。

 そこで高齢者ならどうするかと考えてみた。1つはタクシーを利用する方法。次はコミュニティバスや買い物バスを利用する方法だろうが、買い物のたびにタクシーを利用するのは高くつく。福祉タクシーなら一般タクシーより安いのだろうが、住民票が福岡にあるから帰省先で福祉タクシーは利用できないし、年齢制限(があるのかどうか)にも引っ掛かりそうだ。
 食品スーパーによっては買い物バスを運行しているところもある。例えば福岡県北九州市のスーパー・ハローデイ本城店は2018年11月13日から毎週火曜日に折尾地区との間に買い物バスの運行を始めている。行政、地区自治会、スーパーが提携した事業である。利用申込書を事前に町内会に提出する必要はあるが、無料で利用できるのはいい。
 こうした買い物バスの運行があればいいが、美作(みまさか)地区にはそこまでの商店空白地区ではないのか、買い物バス運行の動きはない。

 それでは移動販売車を利用する方法はどうかと考えてみた。この分野では生協の配達があり、母も生前、生協の会員になりよく利用していたが、商品が配達されるのは注文して1週間後。私のように短期滞在ではあまり利用できない。
 最近、各地で増えている移動販売車も考えてみた。この移動販売車は「とくし丸」という名前で、軽トラックを改造した車にスーパーの食材を積んで商店過疎地を回っている。現在のところ「とくし丸」が買い物弱者対策では最も有効と考えられ、全国各地で増えている。
 たまたま帰省中に「とくし丸」の移動販売車を見かけたので話しかけて尋ねたところ、岡山県下では提携スーパーは天満屋ストアとのことだった。ただ私の実家周辺は頼む人がいないのか移動販売エリアにはなってなかった。

 その次に考えたのは高速バスを利用して買い物に行く方法。中国自動車道は岡山県津山−大阪・京都間にハイウェイバスが走っており、実家から近い作東バス停−津山間は予約なしで乗れるので、路線バス的な利用の仕方もできる。しかも、スーパーのすぐそばに高速バスの乗降場がある。そこまではバス停で1停留所。所要時間は16分。また20分も乗れば大きなショッピングモールまでも行ける。
 いままで車なしでは絶対生活できないと思っていたが、案外そうでもないかもと思えた1つだった。

 次は自転車で行ってみた。ママチャリではなくサイクリング車なので荷台、前かごがないためリュックを背負って出かけた。
 高校生の頃は自転車でその先にある学校まで通っていたので、自転車が案外いいかもと思ったが、歳を思い知らされる羽目になった。10代の頃はなんでもなかった距離が、長らく自転車に乗ってなかったとはいえ、ちょっとした坂道でもフッと言い、足はガタガタ、汗びっしょりになった。
 片道40分。行きより荷物が増えた帰りの方がきつかった。それでも自転車で行けないことはないと分かったし、電動アシスト自転車に替えれば案外楽勝かもと思ったりした。

 自転車よりバイクの方が行動範囲が広がるだろうと言われそうだが、年取ってから乗るバイクは危ない、とバイクに乗っている、学生時代の後輩からも止められた。
 レンタカーという選択肢があるではないかと言われそうだが、田舎でレンタカーに乗るのは難しい。レンタカーを借りるためには中核都市まで出かけなければならないからだ。

 都会では当たり前にできることが田舎では難しい。だが、視点を変えれば他の代替手段がまったくないわけではない。多少の不便さはあるにしても、今まで絶対だと思っていた車だが車なしの生活でもなんとかなりそうだということが分かった。
 地方に居る人も車に頼り過ぎなのかもしれない。列車やバスの運行本数が減っても、車があるからいいか、と我慢し、公共交通体系の維持に積極的にならない。それがJRやバス会社の言い分を通すことに繋がり、地方から公共交通機関を奪っていく。その結果、地方の過疎化は進み、経済も衰退していくという悪循環を招いているのではないだろうか。

 ともあれ今回は2週間という短期滞在中で、しかも雨続きの毎日故、ほとんど家に閉じ込められた生活。次はもう少し長期間で、バスに乗っての買い物などにも挑戦してみたい。



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パーソナル編集長

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