メンテナンス部門の撤退・廃止
それにしても、なぜデジモノはかくも壊れやすいのか。
一つは安い部品を使っているからだが、その背景にあるのはグローバル資本主義の影響。
ヒト、モノ、カネがグローバルに移動するようになり、部品の調達先を世界に広げ、世界中から安い部品を調達してアセンブリ(組み立て)するようになりだすと、「安物」が出回ってくる。
デジタル製品のアセンブリは「相性」があるから、昔はその辺もチェックしていたが、価格競争が厳しくなるとチェック体制が甘くなる。結果、相性や耐久性に問題がある部品が使われてくる。
部品そのものもモジュール化されているから、アセンブリするのに技術はいらない。いるのは安い労働力だけだ。昨日今日入った人間でも簡単に組み立てられる。それでもというか、だからというべきか、ハンダ付けの仕方ひとつで電流の流れ方が違ってくるように、壊れやすい製品が一定の確率で出来てくる。
かくしてデジモノは大手メーカー製であろうと、3流、4流どころのメーカーであろうと、まるで宝くじに当たるように壊れる。もうブランド=信用力という時代は終わった。
この間まで日本製品の安心感はアフターサービスにもあった。工業製品に不良品が混じるのはある程度は仕方ない。それでもいかに不良率を下げるかで、「メード・イン・ジャパン」は世界の信用を得てきたのだ。
しかし、いま「メード・イン・ジャパン」製品は数少なくなり、海外調達部品を組み合わせた「日本製品」が主になっている。
それと同時に国際競争に晒され、資本の論理のみで動き出した企業は目先のカネを産まないアフターサービスを次々と切り捨てている。安全を何にもまして第一にすべき航空機のようなものでさえ価格優先になり、メンテナンスを自前で行わなくなった。それでもまだ日本の航空機(格安航空会社は除く)はサービスがいいと海外では評判らしいが。
メンテナンス部門を縮小する動きはあらゆる業種で顕著で、この1年前後の間にシャープもソニーも福岡からメンテナンス部門を撤退している。その結果、簡単な故障でも関東のメンテナンス部門まで送らなければならない。見積もりでさえこちらでできない。その上、見積料まで取られる。しかも修理代が新品購入価格と同じか、どうかすると高いことまである。これでは修理するより買い換えに走るのはやむを得ないだろう。どうもこの国は言うこととすることが矛盾している。
私事で恐縮だが今春ソニーのミラーレスデジカメが壊れた。といっても十字コントローラが指示した方向に動かなくなっただけだが。これでなにが困るかといえば、合焦位置を自分の思う位置に持ってこれないから、ピンボケ写真になってしまうことだ。といっても、普段完全オートでしか写真を撮っていない人には関係ない話だが。
カメラ専門店の話では「修理代は1万円以下、恐らく6,000円程度」ということだったが、念のため1万円を超える場合は連絡してもらうようにしていた。
通常この種の修理の場合は10日ぐらいで、見積もり連絡は1週間以内に来る。ところが1か月近くもたって見積もり金額の電話が入った。16,000円だと言う。値下がりした時に3万円で買ったカメラだ。修理代に16,000円も払うなら、新機種を買い直した方がいいと考え、そのまま送り返すようメーカーに返事した。
この時のやり取りで修理の流れが分かった。販売店→メーカーで修理→販売店→カメラの持ち主、という流れだとばかり思っていたが違った。
販売店→メーカーで症状確認、修理内容を確定→修理専門の提携会社に修理依頼→修理専門会社が依頼書に基づき修理→メーカー→販売店という流れをたどるのだ。
なぜ、この流れが分かったかというと、見積もり金額の電話が修理を請け負っている会社からかかってきたからだ。しかも、その会社は福岡にあり、以前レンズの点検・調整をしてもらった会社だったから、もしかするとレンズメーカーも同じ流れで修理をしているのかも分からない。
結局、カメラやレンズなどの修理依頼品は福岡(販売店)→関東(メーカー)→福岡(修理会社)→関東→福岡と、福岡と関東の間を2往復もすることになる。1往復に減らせば日数も短縮できるのにと思うが、その辺りのムダを排除しようという考えはないようだ。
もちろん全メーカーがこうした流れになっているわけではない。メンテナンス部門を福岡にまだ残している会社、例えばニコンは福岡にショールームを兼ねたサービスセンターがあるので、簡単な点検ぐらいはそこで行い、部品交換等が必要な場合は本社送りになる。受け取りはサービスセンターでできるし、自宅に宅配便でも届けてくれる(配送無料)など対応はいい。
(3)に続く
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