公共交通について考える〜地方を切り捨てるJR(2)
地方へ赤字を押し付けるJRの体質


地方へ赤字を押し付けるJRの体質

 JR各社が行ってきたのは地方への押し付けである。利用者減は地域過疎化による利用者減で、それはJRの責任ではなく地方自治体の責任という論理だ。故に赤字路線は地方自治体で第3セクターによる会社を設立し運行してください、と言う。
 これって何かおかしくない? こういう時だけ民間企業の論理を出してくる。公共交通としての使命や役割の意識は微塵もないとは言わないが、希薄ではないか。

 彼らは鉄道の使命は「大量輸送」だと言う。だが、時代は変わり鉄道の使命は「大量輸送」だけではなくなっている。「大量輸送」が必要とされているのは東京などの都心部だけで、地方都市は中心部であっても「大量輸送」が絶対条件ではなくなり、むしろ「中量輸送」に変わってきている。
 当然、JR各社もその認識はあるが故に、近年、脱鉄道に動き、不動産事業その他を始めるなど儲かりそうなものには何にでも手を出し、社内から「商社化している」と言う声さえ聞かれる程だ。

 ここで問題にしたいのは脱鉄道の動きを加速させる中で公共交通機関としての役割について真剣に検討してこなかったのではないかということだ。ローカル赤字路線を切り捨て、沿線自治体に押し付けてるだけで、自らの責任に対する自覚と危機意識が希薄だったと言わざるを得ない。
 それを今になって「被害者意識」で経営危機を言い出すから腑に落ちないのだ。

 次に17路線30区間のみ「収支」を発表した点。他の路線の収支も発表すべきではないか。全体で赤字と言うが、黒字路線はどこなのか、他にも赤字路線はあるのかないのか。鉄道事業以外の収支はどうなっているのかも併せて発表しなければ、今後の検討も出来ないだろうし、沿線自治体の理解も得られないと思うが。

鉄道利用者減に街の変化も影響

 車社会になり交通体系が変わってきたのは間違いない。街・町の構造が変わり、駅前はどこも賑わい地・中心地ではなくなっている。そのことが鉄道利用者数の減少にも繋がっている。となれば今後も鉄道の利用者数が回復することは望めないだろう。
 例えば岡山県美作市を通っている鉄道は兵庫県姫路と岡山県新見(にいみ)を結ぶ姫新(きしん)線で、同路線の輸送密度は1119人。「実質的な廃止基準」である2,000人を下回ってはいるが、それでもかろうじて4桁の数字を維持している。

 しかし、今後も4桁の数字で推移する可能性は低い。美作市内の高校は林野高校1校で、隣接地域の勝間田高校を含めても2校。ところが両校とも生徒数減少に悩まされ、最近では両校の合併話も取り沙汰されていると聞く。
 生徒数の減少はJRの利用者減にほぼ直結する。それはローカル線のダイヤを見れば明らかで、生徒の通学時間帯に合わせて運行時間帯・本数が決まっており、それ以外の時間は2時間に1本あるかないか。全国のローカル線の運行状態は似たようなものだろう。
 要は通学生の定期券購入がJRの路線区間を支えているようなものだが、学校が駅の近くにあるとことは少なく、上記の林野高校でもJR駅からバスか30分近く歩くかしかない。通学生にとっても鉄道はそれほど利用しやすい乗り物ではないのだ。となると学校側はスクールバスの導入を考えざるを得ないだろうし、すでにそうしている学校もあるだろう。

 問題は路線区間の廃止が地域住民の生活に与える不便さだが、極端な影響はないように見受けられる。というのは高校は駅から離れているところがほとんどだし、スーパーやホームセンター、家電量販店も駅から離れたロードサイドで、そこには高速バスその他が乗り入れているからバス利用ができる。
 運行本数の問題がある地域はバス運行会社と本数、路線の問題を検討すれば解決できない話ではないだろうし、すでにコミュニティバスや地域共同バスという形態で運行している地域もある。

 地方の人口減少だけでなく街・町の構造が変わり、全国的に見ても駅前がかつてのような賑わいの場所・中心地ではなくなっている以上、鉄道に「地域の足」としての役割を求め続けるべきではないかもしれない。
 今回「鉄道のあり方」を抜本的に考え直す時期だろうとは思うが、JRの「赤字路線の廃止」という「方向」には即座に賛成しかねるし、JRの発表が腑に落ちない部分がある。
                       (3)に続く

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