栗野的視点(No.663) 2019年10月15日
崩壊するニッポン(6)
〜逆回転している時代の歯車
「一体どうなっているんだ!」−−。いま国民は呆れるとともに激しい怒りを覚えているに違いない。菓子折りの下に小判を敷き詰めて渡されていたと言うのだから「越後屋、お主もワルよの」と言い、互いに顔を見合わせて「ハハハハッー」と笑いたくなるが、これは時代劇でも仮想社会の中で起きたことでもなく、間違いなく現在、平成の時代に行われていたことである。
それにしても、この国はどうなってしまったのだろうか。社会システムも秩序もモラルも何もかもが崩壊しつつあるような錯覚を覚える。それは錯覚などではなく現実。ニッポンの崩壊は20年、いやもっと前から静かに進んでいたのが、ここに来て一気に噴き出しただけだろう。
きっかけは国税局の調査
関西電力上層部と原発立地場所の「地元ボス」からの金品授受問題は「越後屋」役の福井県高浜町の元助役、森山栄治某が今年3月に他界している ため、そちらルートの解明ができず、お白州の場で裁きを受けさせることができないのが残念だが、関電上層部はよくもまあこれだけと言うほど腐り切っている。
1億円超も金品を受け取っていた者が2人もいたというのには驚きを禁じ得ない。普通に考えて、これだけの額を受け取れば相手に便宜を図るだろう。その辺の解明は今後を待ちたいが、できれば司直の手を入れて欲しいものだ。
関電の問題で即、頭に浮かんだのが九州電力等他の電力会社でも同じようなことが行われているのではないかという疑念と、「アンタッチャブル」だった。
「アンタッチャブル」とは禁酒法時代のアメリカ・シカゴを舞台に、財務省捜査官のエリオット・ネス率いるチームとギャングのボス、アル・カポネの戦いを描いた映画のことである。
カポネを追い詰め、逮捕したのは銃ではなく、帳簿から脱税の証拠を掴んだからだ。多額の金品受領という賄賂を受け取りながら頬かむりしていた関電上層部の問題が明らかになったのも昨年、国税局の調査が入ったからで、金の流れを掴み、金で追い詰めていくのが巨悪を眠らせない最良の方法ではないか。そう考えると検察特捜部より国税局・税務署の査察力を強化するのが早道かもしれない。
内部告発を無視し続けた挙句
関電と高浜町の元助役、森山栄治某と吉田開発を巡る関係と金の流れを詳細に記していると字数が過ぎるので、ここでは簡潔に、ざっと記しておくが、金沢国税局が森山某と関係が深い吉田開発に査察に入ったのが昨年1月。
その際、架空外注費を計上して捻出した裏金3億円が森山某に流れていることを把握。そして森山某の自宅を調べると多数の金品が見つかり、そこには関電役員ら6名の氏名と「確かに返しました」旨の文書が添えられていた。金額は1億5908万円。
返還時期が昨年2月、ということは吉田開発に国税局の査察が入った1か月後だから慌てて返還したのだろう。
ところが、これに税金がかかると国税局から指摘され、6人は税務署に修正申告。
その5か月後の昨年7月、調査委員会を設置し9月まで調査したが「不適切だが違法とまでは言えない」との報告を受け、公表しなかった(隠蔽)。
関電上層部は、これで問題なしと考えていたのだろうが、今年に入って事態がまず水面下で動いた。「このままでは第2の日産になる」と懸念した関電社員の有志が内部告発をしたのだ。
最初の告発文は3月10日。岩根社長宛で「関西電力が第2の日産にならぬよう、岩根社長に忠言いたします」という書き出しで始まり、「吉田開発の脱税、森山氏に対する利益供与だけであれば、国税の査察も入り、既に解決〜安堵されているやも知れません。しかし、残念ながら問題はそこに留まりません」と続き、以下の5点を「大罪」として挙げている。
1.利益供与された金が、関西電力の八木会長をはじめとする原子力事業本部、地域共生本部などの会社幹部に還流されていた。
2.利益供与の原資は、協力会社への発注工事費、特にゼネコン、プラントエンジニアリング会社、警備会社等を介して渡されていた。
3.その原資は、コストとして計上され、ほかならぬ、お客さまから頂いている電気料金から賄っている。
4.原子力事業本部で開催された倫理委員会なるものは、実質、隠ぺい工作のための作戦会議場としてしまった。
5.官憲(国税、地検)まで手籠めにとり、官憲と共謀して闇に葬ろうとしている。
これらのことは後にメディアで取り上げられ明らかになったことだが、すでに3月の時点で関電トップは認識していたことになる。この時点で速やかに動けば「第2の日産」になることまでは防げたかもしれないが、この告発を取り上げることはなかったし、外部に公表することもなかった。あくまで隠蔽の方向に動いたのである。
(2)に続く
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