ビジネスの基本は消費者がたくさんいる場所でサービスなり商品を提供することである。この基本に従えば過疎地ではビジネスは成り立たないことになる。
ところが、あえて過疎地に出店する企業もある。彼らに共通しているのは地元密着の非拡大路線。そこが旧来型ビジネスと大きく異る。
「農村が都市を包囲する」戦略
古くはイオンやヤマダ電機も地方から全国制覇を成し遂げた企業であり、彼らに共通しているのは「ルーラル出店」。ルーラルとは田園とか農村という意味で、アーバンの対義語である。
それまでの立地はアーバン戦略で、人が多く集まる都心部に出店するのが常識で、いかにいい立地を押さえるかで勝敗が決まった。
当時、この戦略で売り上げを伸ばしていたのがダイエーやベスト電器だったが、いまはともに見る影もない。ダイエーはかつては相手にさえしていなかったイオンの子会社になり、ベスト電器もヤマダ電機の軍門に降り、いまや細々と生きている感じだ。両社ともに市場から社名が消えるのはそう遠くない先だろう。
逆に出店コストが嵩むアーバンを避け、ルーラルに出店して行ったのがイオンやヤマダ電機(ルーラルとアーバンの中間ぐらいか)で、ともにいまの勝ち組である。ルーラル戦略といえば聞こえはいいが、要は「農村が都市を包囲する」ゲリラ戦略である。
しかし、この「農村」戦略をバカにしてはいけない。それどころか過去の歴史を紐解けば覇者は常に地方出身者である。天下統一を果たした織田信長は「尾張の田舎者」と揶揄されていたし、明治政府の立役者は皆地方の田舎侍達だった。
流通業に至っては栄枯盛衰は世の常で、一定サイクルでトップが入れ替わっている。しかも、そのサイクルは年々短くなっており、現在、勝ち組と言われているイオン、ヤマダ電機はすでに凋落の傾向さえ見て取れる。セブン&アイ・ホールディングスが一人勝ちになるのか、それとも同じ轍を踏むのかはもう少し見なければ分からない。
イオン、ヤマダ電機の転換点はトップに立った瞬間であり、彼らはその頃から戦略を「農村」から「都市」へと変えている。ゲリラ戦から正規戦への転換である。そういえばファーストリテイリングもそうだった。
軍隊も企業も、およそ組織と名が付くものはベンチャー、ゲリラの場合は既成観念にとらわれず変幻自在だが、ひと度正規軍になると組織は肥大化し、既成観念にとらわれ、融通が利かなくなって自滅への道を歩み始める。
正規軍になった組織が目指すのは拡大への道。他を倒し自らが生き残るためにひたすら拡大戦略を突き進むしかなくなる。
そういえば日本もジャパン・アズ・ ナンバーワンと言われた途端に転がり落ちた。組織に最も勢いがあるのはトップを伺う立場にいる時で、頂点に立った時が衰退の始まりとはなんとも皮肉な話だ。
*こちらも一読を。
「栗野的視点(No.356):勝利の方程式〜”農村”戦略で伸びる企業・コメリ」
(2)続く
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