栗野的視点(No.724) 2021年4月18日
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旧態依然の地方政治、ハコモノ行政に群がる人達
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 4月11日、中国地方の某市で地方市議選が行われた。定員18人に対し28人が立候補して選挙戦を戦ったのだから、地方政治の活性化と見えなくもないが、実態はかなり違った。見えたのは利益誘導のカネと数の論理で、「昭和」から何も進歩していない地方政治の姿だった。このままでは地方はますます廃れていくーー。
世代交代? 市長派VS反市長派?
まず驚いたのはポスター掲示板に貼られた立候補者の数だった。定数が何人か知らなかったが、地方選の立候補者数が異常に多いと感じたのが最初だった。地方ならずとも掲示板に隙間がないほど選挙ポスターが貼られているのを見たことはない。数えてみると28人。よほど政治に熱心な地方なのか、それとも何か特殊な事情があるのか。
翌日から選挙カーが立候補者の名前を連呼しながら日に何度も行き交い出した。しかし、立会演説を耳にしたことはない。狭い町だし演説場所は大抵決まっていて、我が住まいから50m程度しか離れていない場所でスピーカーの音量を上げて演説すれば家の中に居ても聞こえてくる。
ところが28人もが立候補しているというのに立会演説に来たのはたった1人だけだった。耳に飛び込んでくる音声を最初は騒音としか感じてなかったが、聞くともなしに聞こえてくる内容に次第に興味を持ち、家の外に出て聞いた。
聴衆は5人もいただろうか。なんとも寂しい演説会だなと思いながら聞いている内に、私の他に聴衆はいないことに気付いた。他は皆選挙カー関係者だったのだ。ただ、この立候補者の演説のお陰で今回の裏側の事情が少し分かった。
過疎地の地方選挙で政党色を打ち出すのは公明党と日本共産党ぐらいで、自民党でさえポスターには謳わない。保守VS革新の構図もない。この辺りが都市部の選挙と異なるところだ。
対立軸があるのかないのか、その辺りの事情も知りたくて、知り合った人と立ち話のついでに「掲示板のポスターを見てビックリしたんですが、立候補した人が随分多いですね」と水を向けると「そうなんじゃ。世代交代と言う者もおったし、市長派と反市長派に分かれて戦っているとも言うし、わしらにはよう分からん」との声が聞かれた。
そう言われてポスターを眺め直すと若手候補者の数が一定数いた。ほう、地方政治に若手が関心を持ち立候補するのはいいことだ。地方は高齢化しているから70代以上の候補者が多いのはやむを得ないかもしれないが、70歳、最低でも75歳過ぎたら引退して若手に任すべきだろう。年寄りがいつまでもシャシャリ出るべきではない。
かねがねそう考えているから、若手が大挙して(?)立候補したことは好意的に捉えていた。が、ことはそう単純なものではないということが後に分かった。
総工費40億円超に群がる人達
先の立会演説を行っていた候補者が主張してのは現市長の政策批判で、その中に市庁舎建て替えがあった。
なんでも市長は現市庁舎を建て替える意向があるらしい。老朽化が進み建て替える必要性に差し迫られているならまだしも、市庁舎エリアにコンビニや図書館も入れ、総工費40億円とも50億円とも聞かされれば「ちょっと待て!」と言いたくなる。
少子高齢化が進んでいる地域に、ましてやこの時世に40-50億円ものカネをかけて市庁舎を建て替える必要があるのか。国からの補助金等を当てにするにしても、原資が税金なのは明らかであり、目立った産業もない地域では法人税収入が劇的に増えることも考えられない。となれば、やがて住民一人ひとりに重くのしかかってくるのは目に見えている。
冷静に考えれば誰でも分かることで、そんな計画に賛同する人間はいないだろうと思うが、地方ではそういう論理は通用しないらしい。通用するのは地縁、血縁、金縁。この構図は昭和の時代からずっと変わってないようだ。
というより少子高齢化で過疎化が進んでからは一層強くなっている。新住民が増えない限り、集票の元になるのは地縁、血縁しかなく、それに利権・金縁が結び付いていく。
収益源が少ない地方ほどわずかなカネや利権でも飛び付き、奪い合うという構図はなにもこの地に限ったことではなく、他の地方でも同じだろう。
(2)に続く
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