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民主党トップ3人の罪を問う!(2)


 国内世論は小沢氏を悪の権化(言い過ぎか)のように見、毛嫌いしているが、海外メディアの目はもう少し冷静だ。
 なかでも小沢氏に期待を寄せているのがウォール・ストリート・ジャーナル紙で、6月3日付の社説(日本版)に「小沢主導の政界再編への期待」と題した興味深い記事を載せていた。

「日本がより強力な指導者を見付けることは喫緊の課題だ。その候補の一人は民主党の小沢一郎元代表かもしれない。長く首相候補とされながら、いまだ首相にはなっておらず、また彼の育てた有力政治家の誰もが首相職には就いていない。しかし小沢氏のただならぬ力は、今年初めに政治資金スキャンダルで起訴され、昨年9月には民主党代表選で菅首相追い落としに失敗したにもかかわらず、その影響力を保っていることをみれば明らかだ。・・・小沢氏が自民党と袂(たもと)を分かつことになった彼の長年にわたる政治信条――利益供与型政治の改革へのたゆまぬ努力、官僚支配の打破――を考えると、その力は重要だ。もし小沢氏が民主、自民両党の改革支持勢力を束ねることができれば、小さな政府と経済成長の促進政策への国民的コンセンサスを形成することも可能になるかもしれない」

 実は私が前稿(No.378)を書く前までに期待したのもこのことだった。しかし、小沢氏が被災地に入り、被災現場の様子、要望をつぶさに聞き、東北地方に現地本部を作り、そこから永田町、霞が関を動かそうとした形跡は見られなかった。
 小沢氏にはやろうと思えばできる力があったはずだ。党員資格停止の身分であろうと、そんなことは関係ない。それで処分されるなら甘んじて受ければいいし、その程度の民主党なら留まる必要もないだろう。
だが、彼が選んだのは永田町から見る方だった。

 前出のWSJ紙「社説」で書かれたように、小沢氏の政治信条は「利益供与型政治の改革」と「官僚支配の打破」である。
 それを行動に移す最後のチャンスが6月2日だった。今度こそ「伝家の宝刀」を抜くに違いない。そう見ていたのは私だけではなかったはずだ。
 しかし、彼はギリギリのところで、柄を握った手を離して、その場を離れ、雲隠れした。結局、小沢氏は「ペテン師」菅氏と50歩100歩だったのだ。

 「伝家の宝刀」は「抜くぞ」「抜くぞ」と言いながら抜かずにいるから価値があるのではない。抜かずにいる間は抜いて切られる怖さ、いわば幻影に怯え、それが抑止力効果を発揮する。
 要は相手が過大評価し、勝手に怯えているだけのことで、小沢氏の「豪腕」もこれと似ている。
 「伝家の宝刀」は抜いた後、一刀両断にできる業物であってはじめて威力を発揮する。もちろん、むやみやたらに抜いてみせるものではないが、いざという時に抜けなければ意味がない。
 だが、どうやら小沢氏の「豪腕」は錆び付いていたか、竹光だったため、いざという時に抜けなかった。
 それはこの国のためにも、この国を思う彼のためにも、彼を評価してきた者たちのためにも不幸だった。いや、裏切りにほかならない。

遅れてやってくる政治家達

 私がそのこと(小沢氏の刀が錆び付いていること)に気付いたのはWSJ紙の小沢氏インタビュー記事を読んだ時だ。
 彼は菅首相の問題点を聞かれ「原発事故への対応の遅れなど、なにもかも」だというようなことを答えていた。
 たしかにその通りで、以前にも書いたが起きたことは仕方ない。だが、「3.11以後は人災」である。それは菅内閣の対応の遅れが招いた人災である。
 しかし、政治家が国のトップを批判する場合、より具体的でなければならない。○○の対応が悪かった。自分ならどうした。今後どうする。というようなことを、今後のビジョンとともに語る必要がある。
 そのためには現地本部を開設し、陣頭指揮を執るぐらいでなければならない。二重権力構造を作るなと批判されることも覚悟で。

 党派を超え、現場に乗り込み、現場で指揮を執る政治家が、若い世代も含め誰もいないことがこの国の貧困である。
 「菅降ろし」が進まないのは次を担おうとする者が誰もビジョンを語らないからだ。次のビジョンを語らずに行うトップ交代ではなにも変わらないだろう。

 せめて鳩山、小沢氏には菅氏を道連れに引退する道を選んで欲しかった。
引退した後に出てくるのが前原氏のような、線香花火のように最初だけ威勢がよく、何一つ最後までやらない政治家では困るが。

 では、誰がいまの不毛な政治状況を打破するのか。やはり政治の原則に戻り、国民しかない。こうしろ、ああしろと、国民が声を上げ続けるか、政府をそっちのけで現場に行き、現場で活動するしかない。
 激動期にはリーダーの方が民衆より遅れ、民衆の後を付いてくる、というのは過去の歴史が証明している通りだ。


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