三菱自動車が存続の危機に直面しているーー。同社は過去何度か経営の危機に陥ったことがあるが、その度にダイヤモンドマークを冠した三菱グループに助けられてきた。だが、今回はどうか。柳の下にドジョウはまだいるかどうか。答えはノーだ。市場から三菱自動車の名前が消える日はそう遠くないだろう。
三菱自動車の問題体質
最初に買った車は三菱自動車(以下三菱)のコルトギャランだった。その後乗った2代目三菱車はランサーセレステだった。本当に乗りたかったのは「ヒップアップクーペ」のギャランGTO、なかでも2000GSRに乗りたかったが当時の私には高値の花で、結局憧れだけで終わった。
当時、車は若者の憧れであり、象徴でもあった。また「スカG」と呼ばれた日産スカイラインGTなど走りを前面に出した個性的な車が目白押しで、GTOもその一角をしっかり占めていたのである。
私が乗った三菱車はこの2台だけで、以来、三菱車が購入の選択肢に入ることはなくなったが、それでも当時の三菱車を知る者にとって近年の三菱車の凋落ぶりには目を覆いたくなる。車が面白くなくなったのはなにも三菱車だけに限るものではなく、ホンダ車も、その他も押しなべてそうで、むしろ軽自動車の方が個性、多様性でユーザーのニーズに応えようとしているようにも見える。
軽自動車と言えば排気量350CCというイメージから未だに抜け出せない身としては、最近の軽自動車を見て、その進化(排気量、容量、室内空間)に驚くばかりで、ナンバープレートの色を見なければ軽自動車も小型車も一向に見分けがつかない。
一昔前に比べて価格もアップしたが、それでも普通車よりは安く、同じ1台でも儲けは普通車より少ないだろう。また普通車購入層より軽自動車購入層の方が燃費に対する要求も強い。その穴に落ちたのが三菱だ。
とはいえ、薄い利幅、高い燃費要求、競争激化という環境は他社も同じで、三菱だけが特別なわけではないから、やはり三菱ならではの事情(体質)があったと見るべきだろう。
三菱自動車は存続すべきではない−−。私は2002年にそう公言していた。この年、同社の大型車が走行中にタイヤが脱落する事故が起きた。脱輪したタイヤが転がり、ベビーカーを押して歩道を歩いていた母子3人を直撃。母親が死亡し、子供達が負傷する恐ろしい事故だった。
普通に考えて、走っている車のタイヤが外れて襲ってくるなどということはありえない。当然、道を歩いている人はそういう事態が起きる(空を飛ぶタイヤ)ことなど想像だにしていないだろう。かつて車を称して「走る凶器」と呼ばれたことがあったが、三菱車はまさにそれだった。
三菱車の事故はそれだけではなかった。走行中の車のドライブシャフトが突然折れてドライバーが死亡するなど、普通に考えてありえない事故が相次いだ。だから私はしばらく三菱車の後ろを走るのを避けていた。
これだけでも問題だが、あろうことか同社は当初、運送会社の整備不良と主張し、欠陥隠しに走ったのだ。その後も、リコールを報告せず、顧客個々に連絡して修理するというリコール隠しを行っている。
このような企業を信じることができるだろうか。もし、信じるという人がいるならその人はよほどのお人好し、いやそれ以上だろう。少なくとも私はそのような企業を信じることができないし、そのような企業が造った車には恐ろしくて乗れない。
「リコールは三菱に限ることではなく、他社もやっている」という声もなかにはある。たしかにその通りだ。どこかしらに不具合があるからリコールで修理するわけだ。それをソフトなどでよく行われるバグと同じだという声もあるが、ソフトのバグと同一視されてはかなわない。ソフトの不具合で生命を落とすことはないが、車の場合はそれが起こりうる。
三菱と同業他社の違いは問題が起きた後の対処の仕方だ。速やかに全ユーザーに知らせリコールして修理するのか、ユーザーに周知徹底せず密かに個別対応していくのかでは大きな違いがある。三菱が取った対応は後者で、これは悪質と言われても仕方ない。
(2)に続く
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