栗野的視点(No.676) 2020年3月2日
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新型コロナウイルス狂想曲
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この時期、出来るだけ外出を控えるようにしている。と言うと新型コロナウイルス対策のためかと思われそうだが、それも否定はしないが、温度差アレルギー症状のためである。
主に春と秋の気温が変化する時にクシャミ、鼻水が止まらなくなるのだが、今年のように1週間か数日おきに気温が大きく上下すると、その度にクシャミ、鼻水で苦しまなければならない。といっても大抵1日か2日、身体がその気温に慣れるとピタッと収まる。その点が花粉症などと違うところで、ある季節を通じてというように長引くことはないが、何度でもその症状が出るということにもなる。
そこに持ってきて今は新型コロナウイルスに国民が過敏になっている時だ。人混みでクシャミをしたり鼻をかんだりしようものならウイルス感染者と見られかねない。
そういうこともあり外出を控えてきたが、週末に近くのイオンまで出かけた。目的は買い物もあるが確認したいことが2つ程あった。1つは人の入りと商品棚、特にトイレットペーパーの棚。
もう1つは書籍。前日、東京の友人から『人間心理を徹底的に考え抜いた「強い会社」に変わる仕組み』(日本実業出版社)という本を出し、福岡では紀伊国屋書店が店頭に置いてくれているという案内が来ていたので、もしかするとイオン内の書店でもと思ったのだ。生憎その書店では未入荷だったが。
その時、咳が出た。唾を飲み込んだ時に時々気道に入りそうになり思わず咳き込むやつだ。マズイ、と思い周囲を見回すと、少し離れた後ろの方にいた女性がこちらをパッと振り向き、咎めるような視線を送ってきた。やっぱりな、という感じだ。
今この国は正体不明の相手に怯えている。マスクを巡って殴り合いの喧嘩になったり、福岡の地下鉄では隣の男性がマスクをしてなくて咳をしたため言い合いになり、非常ボタンを押して地下鉄を止める騒ぎがあった。そんなことで非常ボタンを押すかと思うが、誰も彼もが過敏に反応し、常軌を逸した行動に出ている。
マスクの効用については専門家の間でも色々言われているようだが、科学的な根拠など二の次で、今は誰も彼もが新型コロナウイルスという見えぬ敵に怯えている。
相手の姿が見えれば対処の仕方も分かるが、姿が見えないだけにちょっとした音や影にでも怯えてしまう。そこに持ってきて同一行動が好きな国民である。誰かがドラッグストアからマスクがなくなっていると言えば、慌てて買いに走る。
ティッシュペーパーまでは分かるが、トイレットペーパーとウイルスとどういう関係があるのか分からないが、どこかでトイレットペーパーの話が出たのだろう。そういうニュースに触れた人が買いに走るから、あっという間にスーパーやドラッグストアなどから商品が消えてしまう。もうパニックだ。
トイレットペーパーの買い占めと聞けばオイルショックの時を思い出すが、あの頃はインターネットはまだ普及してなかった。人々の情報源は主にTVだったが、今はSNSの時代。情報が伝わる速度や量は当時と比べ物にならない。それ故、パニックも、それを静める情報の伝達も早い。まあ、良くも悪くも情報に踊らされる。
自宅近くのドラッグストアはいつもトイレットペーパーを店先に山積みにして売っていたが、ある日を境に姿が消えた。それでイオンではさすがにそんなことはないだろうと、野次馬根性丸出しで様子を見に行ったわけだ。
驚いたことにイオンでも同じ現象が起きていた。ついでに衣料品売り場なども見て廻り「週末にしては客が少ないですね」と売り場で話しかけると「福岡で1人目の感染者が出た翌日からバッタリです」という返事が返ってきた。
客足が激減したからか、それとも皆が買い溜めに走っているからか、食品売り場、特に野菜売り場の棚に空白が目に付いた。買い溜めに走ったにしては店内に客が少ないから、仕入れを減らしたのかも分からない。売り場の人間にそのことを尋ねようと思ったが、売り場担当者の数も減っているのか、いつもに比べて人がいなかった。
とにかくこの国は一斉に、が好きだ。ある日突然、ツルの一声で全国一律に休校になった。たった1日で決めたのだから、検討する時間も何もありはしない。その上、責任を問われたくない無責任体質が蔓延しているから、皆「要請」に従って休校と決めた。これで何かあっても自分達の責任は問われない、とある部分、胸をなで下ろしたかもしれない。
休むところがあれば、決行するところもある。野球や大相撲は観客を入れずに無観客試合で行うという。興行なのだから無観客で行わなくても中止にすればいいではないかと思うが、そうはいかない事情があるのだろうか。
春場所を中止し、力士を休養させればいいと思うが、何か不都合があるのだろうか。それでなくても今の力士は「働き過ぎ」で、怪我が絶えず、サポートをぐるぐる巻きにした力士ばかりで、見るからに痛々しい。
ウイルスとの戦いは人類誕生以来、いやそれよりもっと前、地球に生物が誕生した時からウイルスは存在しているわけで、むしろ彼らの方が「先住民」かもしれない。
インフルエンザ系のウイルスの毒性はあまり強くないらしい。それは彼らが取り入る宿主が滅亡してしまっては彼ら自身も困るからのようだ。
今回は抗ウイルス薬が開発されていなかったことと、初期に風邪の症状と見分けがつかず、適切な対応が出来なかったことなどから広がりを見せたが、効果がある感染防止策は昔から言われている手洗いの励行のようだ。
ともあれ、皆様ご用心を。
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