逆は必ずしも真ならず
1000円高速が廃止になって最初の週末。ガラガラの中国自動車道を福岡に向かって走りながら、広島県と山口県境のSAで食事休憩した。このSAには過去何度か立ち寄ったことがあるが、食事をしたことは一度もない。一度など、食事をする予定で立ち寄ったのに、結局次のSAまで走り、そこで食事をした。
なぜなのか。
1.客が少なかった。
2.店の人が暇そうにしていた(店に活気がなかった)
3.メニュに引き付けるものがなかった。
実はこの3つは互いに関係している。
客が少ないから、店は暇である。
暇な店は活気がなく、人を引き付けない。
だから客が寄り付かない。
客が少ないから手間ひまがかかったり、滅多に出ない商品はメニューから外す。
メニューがありきたりの特徴のないものになる。
メニューに特徴がなければ、品数が多い店の方に客は入る。
かくして負のスパイラルが始まる。
行列が出来る店というのがあるが、人はなぜ行列をしてまで食べようとするのか。
それは行列ができる店=おいしい店、話題の店 → そんなにおいしいなら一度食べてみたい、話題やトレンドに乗り遅れたくない、という心理が働き、行列の最後尾に加わるのである。
逆は必ずしも真ならず、という命題がある。A=Bでも、B=Aとはならないというやつだ。
この命題を店に置き換えて説明すると、繁盛している店=おいしい。
おいしい店=繁盛する、とは限らない、となる。
さて、上記SAの食事である。
期待はしてなかった。
ところが、案に相違しておいしかったのだ。
弟が注文したカツ丼の味もよかった。カツを一切れ拝借して食べてみたが、直前にカツを揚げて載せたというだけのことはあり、サクサクとしておいしかった。
注文時に「カツ丼はちょっと時間がかかります」という説明(どの程度時間がかかるのかと尋ねると、これからカツを揚げて作るので、10分程度時間がかかると説明)もあるなど、料理に関してはなにも問題なかった。
本来ならもっと忙しくていいはずだ。
では、何が問題なのか、を考えてみた。
そこでメニューと店内ポップ等をゆっくり見回した結果、あることに気付いた。
私が注文した「○○(地名)セット」はこの地方の特産品、ワサビとゴボウを使ったものだったのだ。
よく見ると、ほかの食べ物にもこれらの特産品が使われていた。
ところが、そのことが客にはっきり伝わるように表示されてないのだ。
弟などは料理を注文するまでは「その地方の名物料理が食べたい」と言っていたにもかかわらず、実際に注文したのはどこででも食べられるカツ丼だった。
この例からも分かるように、地方の特産品を使った特徴的な料理が客に伝わっていない(伝える努力をしていない)のだ。
私達が食べ終わる頃、中年夫婦が入ってきてメニューを決めかねていた。
あまり重い物は食べたくない風だったので、よほど私が食べている「○○セット」を勧めてあげようかと思ったが、そこまで出しゃばるのはちょっと問題かと思い黙っていた。
ご主人が自動発券機でボタンを押したのはカツカレー。どうやら押し間違いだったらしく、夫人にカツカレーは少し重いのではないかなどと注意されていた。
夫婦の会話を聞きながら、せっかくならおいしく食べたほうがいいだろうと思い、つい口を挟んでしまった。
「ここのカツはおいしいですよ。揚げたてを載せてくれますから」
「あら、そうですか」
即座に反応したのは夫人の方だった。
ついでにこの地方の名物はワサビとゴボウで、それを使った料理もおいしいですよと補足しておいた。
出過ぎたことかもしれないが、客の評価が一番参考になるはず。
出過ぎついでに店主にも感想とアドバイスを。
「おいしかった。両方とも味はよかった。見るとワサビとゴボウがこの地方の特産品なんですね。せっかくそうしたものを使っているのに、メニューにその辺が分かりやすく、しっかりと謳われてないのが惜しいね。もう少しメニューの見せ方を工夫すると売り上げは上がると思いますよ」
「ありがとうございます。もう少しポップを書き直せと言っておきますよ」と店主。
う〜ん、恐らくこの店は変わらないだろう。
店主の問題意識がイマイチだし、真剣味が足りない。
真剣に悩み、考えている店主の反応ではなかったし、それ以上の質問が店主から返ってこなかった。
どうやら人は無料のアドバイスにはそれほどの価値を感じないのだろう。
(続く)
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