最近、発砲事件が増えている−−。といっても暴力団同士の抗争事件や銃を使った殺傷事件のことではない。犯罪を取り締まる警察官による発砲がこのところ急増しているのだ。まるでアメリカ映画かなにかのようで、とても現実の出来事とは思えないほど簡単に銃を撃ちだしている。
かつて日本の警察は銃の扱いには慎重だった。いわんや発砲なんて、よほどのことでもなければありえなかった。なぜ、いつ頃から日本の警察官は拳銃をいとも簡単に撃つようになったのか。
2018年に激増
まず警察官による発砲事件を直近から順に列挙してみよう。
・2018年9月19日 宮城県東仙台交番で「落とし物を拾った」と届けに来た学生に応対していた警察官が刺殺され、怒鳴り声を聞いた隣室にいた巡査部長(47歳)が男に3発発砲して射殺。
・2018年9月13日 新潟県聖籠町で人質を取り立て籠もった男に警部補(40代)が警告後、拳銃1発を発砲し男の左膝付近を撃つ。
・2018年9月12日 大阪市生野区で警察官が質問しようとしたところ振り切り、車をパトカーにぶつけるなどしたため男性巡査部長(27)が降りて、運転席に向け2発発砲。さらにもう1台の車も警察官に向かって後進してきたため、男性巡査長(27)が計5発発砲。男は右肩や左足を撃たれる。
・2018年5月28日 熊本市東区の住宅街で刃物で切りつけてきた男に警察官(40歳)が5発発砲して射殺。
・2018年2月18日 大阪市都島区・JR京橋駅近くの路上で職務質問を受けた男が刃物を取り出し抵抗したため警察官(38歳)が1発発砲。男の右足太股を撃った。時間は正午前。
・2017年1月20日 神奈川県三浦市で男が父親に刃物で襲いかかる事件があり、警察官2人(30歳と21歳)が駆け付けたが、刃物を振りかざして向かってきたので2人が計8発発砲。弾は男の腹部に当たり意識不明の重体。
・2016年11月26日 京都市北区で男児を切りつけた男に警察官が5発発砲。弾が男の両脚に当たる。
・2015年9月14日 千葉県松戸市で近隣住民や飼い主に噛みついた犬を制止させようとしたが警察官に向かってきたので、警察官3人が計13発発砲して犬を射殺。
・2015年8月10日 群馬県前橋市の交番に包丁を持って押し入り、振り回したので、勤務していた巡査部長(45歳)が男の下半身に向けて発砲。その後、取り押さえた。
こう見てくると、いくつかの共通点に気づくだろう。まず今年(2018年)に入って警察官の発砲が激増している点である。2014年以前は年に1、2件。発砲が全くない年(それが当たり前だが)もある。
ハリウッド映画並みに発砲
次に1事件あたりで発砲した銃弾の数が多い点。例えば2015年9月は犬に向かって警察官3人が合計13発も発砲しているが、いくら犬が凶暴で、人に噛み付き、さらに警察官に向かってきたにしても13発は撃ち過ぎだろう。噛み付かれていた人(飼い主)も側にいたわけで、人に当たったらどうするのか。恐らくそういうことも考えず、恐怖と集団心理で撃ちまくったのだろう。
警察官が所持している回転式拳銃には実弾が5発装填されるようになっている。つまり5発撃った場合は弾倉を空にしたことになり、ほぼ全員が弾がなくなるまで「撃ちまくった」「撃ち尽くした」という言い方が正確だろう。
2017年1月、神奈川県三浦市の発砲事件も警察官2人で8発撃っているから、これもほぼ銃弾がなくなるまで撃ちまくったことになる。
2018年5月、熊本の事件では1人で5発発砲。まさに銃弾がなくなるまで撃ち続け、結果、相手を射殺している。
2016年11月の京都市の事件でも全弾5発を撃ち尽くしている。
もうこうなるとハリウッド映画の世界だ。もし、弾が5発しか装填されないリボルバー(回転式拳銃)ではなく、もう少し多くの弾が装填される自動式拳銃なら5発以上の銃弾を、やはり撃ち尽くすまで相手に向けて撃ったに違いない。これは恐ろしいことである。
(2に続く)
|