栗野的視点(No.748) 2020年9月10日
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政治家は顔がすべてを物語る。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 菅氏が次期自民党総裁選への出馬撤退を発表した。事実上の総理辞任である。万策尽きたというか、辞任に追い込まれたのが実情だろう。まあ、そうなったのは本を正せば菅氏自身が蒔いた種で、「自業自得」と言った人もいた。
確かにその通りだと思う。誰かに陥れられたわけでも、誰かの尻拭いをさせられたわけでもない。溺れる犬は叩け、とばかりに、支持の手を差し伸べるどころか、潮が引くように自民党議員や自民党員、そして国民もが彼から離れて行ったということだ。その原因を作ったのは菅氏自身だが、本人はそのことに気付いていなかったことが問題だ。
こうなった直接的かつ最後のトリガー(引き金)になったのは横浜市長選だったのは間違いない。横浜が彼のスタートであり、地盤であるにもかかわらず、菅氏自身が全面的にバックアップした候補が大差で敗れたのだから。
この時に菅氏の首相辞任を予言した人がいる。「ハマのドン」こと、藤木企業の会長、藤木幸夫氏である。
藤木氏は横浜ふ頭に「カジノは必要ない」と林文子市長(当時)の統合型リゾート(IR)計画に反対し、IR反対を唱えた山中竹春候補を支援し、当選させたのはすでに知られている通りだが、山中氏の当確が出た直後、次のように言っている。
「菅はもう今日あたり辞めるんじゃないの。辞めなきゃしょうがねぇだろう。電話がかかってきたら『辞めろ』って言います」と。
実際その通りになったわけだが、藤木氏の発言はユニークだがズバリと言い当てている部分が多い。
菅氏に対しては他にもこんな面白いことを言っていた。
「あの人は旅人なんだよ。世の中、旅人と村人しかいない。村人は村のことに責任を持つけど、旅人は旅人なんです。横浜について余計なことを言うなということです」と。
言うまでもないが旅人とは秋田出身の菅氏のことだ。
藤木氏の人を見る目は独特で、なかなか面白い。立憲民主党の江田憲司議員が山中竹春氏を藤木氏の所に連れてきた時には、こんなアドバイス(忠告?)の言葉を発している。
「あんた、目が鋭すぎるよ」「あんたのその目じゃ当選できないよ、もっと柔らかい目になんなさい」と。
この言葉、山中氏の性格をズバリ言い当てているかもしれない。山中氏は4年間問題なく務めらることができるだろうか。
政治家に限ることではないが、特に政治家にとって顔は大事である。なぜなら顔は内面を映し出す鏡だからだ。性格や本心といった内面が顔を形作っていく。だからリンカーン米大統領は、閣僚にと推薦された人物を「彼は顔が悪い」と断り、閣僚に登用しなかったのだ。
30歳過ぎたら自分の顔に責任を持たなければならない。まあ、人生50、60年時代と比べて、長寿社会になった今は「40歳過ぎたら」と言い直してもいいかもしれない。いずれにしろ顔に、その人が過ごしてきた人生が映し出されているというわけで、顔は履歴書ともいえる。
どんなに上手に隠し、変えてきたつもりでも、やはり本性は顔に現れる。顔は笑っているのに目が笑っていないから怖い、などという言葉も耳にするが、ドラマの中の言葉ではない。
口が歪んでいる人間にロクな人間はいない、と言えば、怒る大臣がいるかもしれない。彼のことを「出がいいのに」とTVで言ったコメンテーターがいたが、品格は3代続いて初めて本物になるということを彼女は知らないらしい。それともTV向けの忖度だったのか、母親の系列にしか目が向いていなかったのか。
まあ、それはともかくとして、顔相(人相)は人を判断する時の一つの重要な要素だったのは間違いない。例えば戦国武将の織田信長の肖像画は眉間にシワを寄せ、黒眼が薄く、尖った顎をしている。この顔相から彼が癇癪持ちなのは見て取れる。明智光秀でなくとも、いずれ恨みを買い、部下の誰かに殺害される運命だったのではないか。
(2)に続く
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