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陰りが見え始めた楽天経済圏(1)
〜送料無料化で受けた傷は想定以上か


栗野的視点(No.723)                  2021年1月28日
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陰りが見え始めた楽天経済圏
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 楽天の成長に陰りが見え始めた。楽天市場はアマゾンとの差が開く一方だし、楽天モバイルは設備整備、加入者数とも目論見通りに進まず、当初の計画を大きく後退させているところにもってきて、ソフトバンクからの転職者が同社の機密情報持ち出しで警察に逮捕されるなど踏んだり蹴ったりの状態。一部では、このままいけば楽天モバイルの身売りもありうるのではと囁かれたりもしているというから三木谷氏も心中穏やかではないだろう。

楽天経済圏への囲い込みが強み

 楽天の強みは、言うまでもないが「楽天経済圏」というグループ囲い込み戦略。少々言葉は悪いが、一度「楽天」に捕まるとまるで底なし沼にハマったように、次から次に絡み取られ、楽天経済圏のさらなる深みにハマっていく。
 一度絡み取られると抜け出すのはなかなか難しい。いや、悪口を言っているのではない。それぐらい楽天経済圏のメリットを感じ、以降、何かにつけ楽天を使うようになるということだ。

 楽天が差し出す「エサ」、いや楽天の武器はポイントで、これは楽天経済圏で使える通貨である。しかも使えば使うほど通貨(ポイント)が貯まっていくし、楽天の方もポイント倍増キャンペーンを頻繁に行ったりして、ユーザーの前に「おいしい」エサを次々に提示してくるから、釣られてつい買ってしまう。
 何を隠そう私自身、楽天を利用するメリットに絡め取られた一人で、気が付いたら楽天市場で買い物をし、楽天カードで決済し、楽天市場以外の買い物でも楽天カードを使うようになっている。これこそが楽天の術中で、見事にハマってしまっている。

 そう、楽天市場で買い物をする場合、支払いは楽天カードでした方がポイントが余計に貯まるというメリットがあり、次は引き落とし口座を楽天銀行にしませんかと誘ってくる。
 まあ、これは楽天に限らずイオンも同じで、両者に共通しているのはいまや物販ではなく金融部門がグループの稼ぎ頭になっているという点だ。

 ところが、このところ楽天に勢いが感じられなくなった。楽天経済圏の先行きに陰りが見え始めたのだ。1つは楽天市場で、もう1つは楽天モバイルで。
 深刻度は後者の方が大きいかもしれないが、前者はボディブローのように効いてくるので、軽視すれば楽天経済圏にかなりのダメージになるかもしれない。

送料無料化で受けた傷は想定以上か

 まず楽天市場。最初の躓きは配送料の統一だった。いまではアマゾンにすっかり差を開かれた感がある楽天市場だが、それを配送料の分かりにくさにあると見た楽天はアマゾンに倣って配送料の統一(無料)化を打ち出した。
 ところが、これに一部加盟店が反対し、なかにはワークマンのように楽天市場から撤退した企業もある。しかも、この件に対し、公正取引委員会により独占禁止法違反の疑い(優越的地位の乱用)で調査を受け、一般紙などで報道されたこともあり、楽天のブランドイメージが損傷したのは否めない。

 簡単に説明すると、楽天はアマゾンとの競争に差が付いているのは送料の問題があると見ている。たしかに消費者にとっては送料は大きな問題で、どうかすると商品価格より送料の方が高いこともあるから、できるだけ送料が安い店、同じ商品なら送料無料の店で買おうとする。
 ところが楽天市場の送料はショップによりまちまちだから分かりにくい。それなら送料無料のアマゾンで買おうとなる。アマゾンは送料無料と書いたが、正確には無料なのは2,000円以上の買い物か、アマゾンプライム会員(年会費有料)の場合である。
 そこで楽天もアマゾン並みに送料を統一しようとしたわけだ。といっても小規模ショップが多い楽天市場の構成を考え、アマゾンと同等の2,000円ではなく3,980円からに設定しているから、楽天側にしてみれば「優越的地位の乱用」と言われるのは不本意かもしれない。

 楽天にしてみれば、いきなり送料無料化を打ち出したわけではなく、時間をかけて加盟店に説明してきたつもりだろうが、加盟店側にとっては送料は自店舗負担になり経営に重くのしかかってくる死活問題となる。特に売り上げが小さな店にとっては。
                                   (2)に続く


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