栗野的視点(No.718) 2020年12月19日
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楽天、MVNO各社を追い詰めるドコモのahamoプラン
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NTTドコモが菅政権の圧力に屈し、携帯通話料金の値下げを発表した。大手携帯電話会社(キャリア)がサブブランドではなくキャリア本体の通話料を値下げするのは初めてで、au、ソフトバンクも追随せざるを得ないだろう。
しかし、菅政権の大手キャリアに対する携帯料金の値下げ圧力は政権の意図とは別に低価格通話会社(MVNO)を潰す方向に動いていくと思われる。
(「No.708:菅首相の携帯電話料金値下げ要求はMVNOを潰す」を参照。)
また菅氏がテコ入れしている楽天モバイルにとっては追い風どころか向かい風になり、せっかく今力を入れている容量無制限、使い放題プランが霞んできている。
ドコモの値下げで楽天の優位性崩れる
ドコモが値下げしたのは「ahamo(アハモ)」と銘打った大容量プランだが、わざわざ「ahamo」と名付けたところにNTTの今後のサブブランド化戦略を感じる。あるいは当初、サブブランドの立ち上げを考えていたが、政権による度重なる「キャリア本体の値下げ」圧力に屈し、急遽それに応じる形をとったのかどうか。その辺は定かではないが、単なる大容量プランの値下げなら何も「ahamo」などと名付ける必要はなかったはずである。
では、なぜドコモの新プラン(ahamo)が楽天モバイルにとって大打撃になるのか。
それを知るためにドコモの「ahamo」、楽天モバイルの大容量プラン(UN-LIMIT V)の特徴を簡単に説明しておこう。
まずドコモのahamo
1.データ通信容量20GB+5分かけ放題がセット
2.料金2,980円(税別)
3.4G、5G対応
4.事務手数料やMNP転出手数料は無料。ただし契約手続きはオンラインのみ(ドコモショップでは申し込みその他ができない)。
次に楽天モバイルの「UN-LIMIT V」
1.ネーミングから分かるようにデータ容量制限(LIMIT)なし(UN)+国内通話かけ放題(専用アプリ使用時)
ただし楽天エリア外はau回線になり月5GBまで。5GB超過後は回線速度が1Mbpsに落ちるが、使い放題。
2.料金2,980円(税別)。ただし300万名までは1年間無料。
3.4G、5G対応。
4.契約事務手数料等は無料
両社を比較すれば内容はよく似ている。まず両社ともに大容量を使うヘビーユーザーをターゲットにしたプランである点。料金も2,980円(税別)と同一だ。
ただ楽天モバイルが容量制限なしの使い放題、電話かけ放題なのに対し、ドコモは20GBまでと制限がある。そして通話は5分かけ放題と1回の通話時間は短い。
これだけ見れば楽天モバイルの方に優位性がある。同じ料金なら楽天モバイルに加入した方がいいと考えるかもしれない。
だが、楽天モバイルには最大のウィークポイントがある。ドコモやau、ソフトバンクと違い、自前回線の整備がまだ不十分な点だ。初期のソフトバンクのように回線が繋がらないという不満がユーザーから出るだろう。
現在、自前回線の整備を急ピッチで行っているとはいえ、当初計画通りならもっと早くに整備されていたはずだ。計画の甘さが露呈した形であり、そういうことも加味して考えれば、同社がある程度全国カバーができるにしても、もう少し先になるだろう。 (2)に続く
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