来春以降、義務化されるSIMフリー
スマートフォン(以下スマホ)の普及が進んでいる。総務省はそれをさらに後押しするかのように携帯電話各社に対し、2015年5月以降に発売される携帯電話からSIMロックの解除を義務づける方針を決めた。
これでなにが変わるかといえば、端末代が安くなるわけではない。他社乗り換えの場合、端末代は実質ゼロ円か、格安で入手できるようなシステムをすでに携帯電話会社(キャリア)は導入している。SIMフリーが義務付けられれば、逆に大手キャリアは従来のように端末代を安く販売するセットプランを廃止するかもしれない。
ではキャリアの乗り換えが自由にできるのかといえば、それも現状とほぼ変わらない。現状の2年縛り(途中解約の場合は解約金が発生する)はそのまま維持される見込みだからだ。
SIMフリー化のわずかなメリットはキャリアを替える度に端末を替えなくても済む(好みの端末を使い続けられる)ということと、大手3キャリア以外の市場参入が比較的楽になるというぐらいだ。
ただ、市場全体の活性化は図られるだろうから、一時的にはユーザー、ベンチャーにとってチャンスなのは間違いない。
ユーザーにとっては通信費を下げるチャンスがあり、新規参入組ベンチャーにとっては商機が広がり、うまく行けば現在の3大キャリア独占状態に風穴を開けることができるかもしれない。しかし、その穴は小さく、長期に渡って開いているわけでもないだろうが。
それでも新規参入組にとっては壁が低くなったのは事実で、いままでキャリアの回線を借りてSIMカードを販売していた日本通信(b-mobile)、IIJmio、OCN、ビッグローブ等々の各社は、ここぞとばかりに従来より通信速度・容量アップに動き、SIMフリーへの移行を促している。
市場に衝撃を与えたイオンスマホ
上記各社がほぼSIMカード(ソフト)販売なのに対し、スマホとSIMのセットで参入する動きも顕著になってきた。
市場に衝撃を与えたのは流通業のイオンがスマホとSIMのセットで月額2,980円で売り出した時だろう。それまでも新規参入組ベンチャーがSIMフリースマホを販売する動きはあったが、それらの多くはいままでほとんど耳にしたことがない海外メーカーのスマホ。有り体に言えば3流どころの非力なスマホだったり、2、3世代前のスマホがほとんどだった。これではヘビーユーザーならいざ知らず、初心者が購入するには価格の安さ以上にリスクの方が高い。2台目スマホとしてならまだしも、最初の1台としては二の足を踏むというのが正直なところだろう。
ところがイオンスマホはNexus4。1世代前のスマホとはいえgoogleのお墨付きスマホだけにブランド力がある。販売会社も流通最大手のイオン。そして店頭で買えるという安心感もある。さらにデーター通信だけでなく音声付きSIM、早い話が電話もインターネットもこれ1台で出来て毎月2,980円で済む(通話料は別)。これなら試しに買ってみようかと思った人は多いだろう。しかも、購入後2年以内に解約しても解約金は請求されない。つまり「2年縛り」がないのだ。SIMフリーの最大のメリットはこれに尽きると言ってもいいかもしれない。少なくとも私はそう思っている。
この価格とブランドが受けて、購入客はイオンの狙い通りにスマホ初心者、シニア層が60%。多少想定外だったのは「若い層」にも受けたことだった。
この層はスマホでインターネットをガンガンやろうなんて考えてないから、データー通信速度が多少遅くても、端末が最新型でなくても、そんなことはそれほど問題にはならない。むしろトータルコストが安い方がいい。なんといっても3大キャリアでスマホを買えば毎月最低で7,000円。普通でも10,000円はかかる。それがイオンスマホなら半額以下。しかも2年縛りはないから、納得できなければ解約金なしにいつでも解約できる。これならちょっと試しにスマホを使ってみようかと思うに違いない。
ここでちょっと視点を変えて、ユーザー側ではなく販売側から見ればイオンの戦術が際立ってうまいのがよく分かる。
第1弾の販売は2014年4月。日本通信のSIMカード+Nexus4のセットで月額2,980円。ただし販売数は限定8,000台。
第2弾は7月販売。ビッグローブのSIMカード+geanee FXC-5Aのスマホ=月額1,980円。販売目標数は5万台。
第3弾は9月販売。ビッグローブのSIMカード+TCT Mobile LimitedのスマホALCATEL ONETOUCH IDOL2S=月額2,980円
第1弾はイオンにとっては初めてのスマホ販売ということもあり、すでに実績もネームバリューもあるNexsus4というブランドで勝負に出ている。しかも価格は3大キャリアの半額以下という破格値。ただし8,000台のみという限定販売。この戦術が当たり、発売後わずか1か月で完売した。
問題は第2弾だ。多くの企業が失敗するのが次の一手。ところが、今度はさらに価格を下げて1,980円で売り出した。まるでユニクロの衣料品販売と同じだ。1,980円ならちょっと試しに買ってみようかという気になるだろう。仮に自分の用途には合わなかったと後で気づいても、その時は解約すればいいだけだ。いつ解約しても解約金は必要ないから。
第3弾では顧客ターゲットを前2回とは変えて、ある程度本格的にスマホを使う層を狙って端末のスペックを上げながら、価格は初回同様の2,980円である。
買い物に慎重な私もこの時ばかりはイオンスマホを使ってみようかと思い店頭まで行ったが、思いとどまった。それは使い方に関する個人的なある理由からだが、そのことは後で触れる。
それにしてもイオンのこの方法は他業種の企業にとっても大いに参考にすべき、見習うべき点が多いのではないだろうか。
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