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過度の自粛を自粛?
〜解決方法は原因除去で、現象批判は的外れ


 おかしな動きが起きている。
イベント等が「過度に自粛」されている。これでは縮み思考で日本経済も縮み、悪影響だから、「過度の自粛」を自粛しようというのだ。
 本当に「過度の自粛」がなされているのかどうか、よく知らない。
ただ、花見会場で音楽その他のイベントが中止になったり、宴会を中止しようという動きは確かに見かける。
お陰でゴミは減り、静かに花を愛でられるようになり、やっと日本も国際的になったかと思っていたら、今度は「過度の自粛」はよくないからやめようという声が大きくなった。
 TVなどでもコメンテーターが「過度の自粛をすれば経済はどんどん縮み、日本経済は悪くなる。過度の自粛をやめて宴会などをどんどんすれば消費は増え、被災地にも金が回ることになる」としたり顔で言っている。

 「過度の自粛」がどういう現象を指すのか、私は知らない。
ただ、3月29日の石原都知事の発言が発端になり、イベント等の自粛が進んでいるのではないかと思う。
 都知事の全発言を聞いていたわけではないが、「桜が咲いたからといって、一杯飲んで歓談するような状況じゃないだろう」と、暗に花見での宴会を諌めたようだ。
 この発言のどこがおかしいのだろうか。
私もその通りだと思う。

 今回の巨大地震とその後に起こった津波によって2万7000人以上の死者・不明者が出ている。
しかも、その弔いすらきちんと出来なかった人が多いのだ。
そういう人達のことを考えれば、仮に被災地の人達から、あなた達は被災していないのだから私達に遠慮しないで下さい、と言われてもそういう気にはなれないだろう。
それよりは死者の弔いをしてあげることの方が先だと思うが。
 仏教では49日、神道で50日。死者を弔うために喪に服する期間である。
東日本を巨大地震と津波が襲ったのは3月11日。まだ49日は愚か、やっと1か月が経とうとしているところだ。
 なにも長期間自粛しようと言っているのではないだろう。
まだ生死さえ判明しない人が多くいる現状で、派手なイベントを自粛しようというのはそんなにおかしなことではないはず。
ごく当たり前の感情ではないかと思うが。
それとも日本人はもはやそんな感情さえ捨てた、忘れたというのだろうか。

 イベント等の中止に限らず、旅行などのキャンセルが全国で相次いでいるというが、それは「過度の自粛」とは別物だろう。もちろん多少関係はあるかもしれないが、消費自粛の原因は他のところにある。
 今回のことに限らず、大きな事故や災害が起きた後に消費手控え現象が起きるのは歴史の常である。といっても生活必需品の購入を手控えるわけではない。むしろ、今回のように飲料水系や保存食系の買い物は一時的に増える傾向にさえあるのだ。
 消費を手控える、あるいは減少するのは不急不要の商品であり、旅行や娯楽性に富んだもの、要はいますぐでなくてもいいものの消費が一時的に減少するだけである。

 九州でも観光客のキャンセルが相次いでいるというが、そのうち半数は海外からの観光客で、それに首都圏からの観光客が加わり80%程度になっている。
 つまり自粛ムードと言っても内容は2つあるということで、それぞれ分けて考えなければならないだろう。
 海外観光客の場合は情報伝達不足から来るもので、これはいち早く正確な情報を発信することで回復する。もちろん一朝一夕に回復とはいかないだろうが。
こうした現象はどこの国でも起こることだ。
 アメリカ政府も一時、福島原発から80km以遠への退避を自国国民に伝えたし、中国で反日騒動が起きると日本人は中国への旅行を相次いでキャンセルしている。
 これらは「過度な」リスク回避行動であり、一時的に起きるのはある意味仕方ない。
解決方法は不安の原因を取り去ることだ。

 では国内消費の落ち込みはどうか。
こちらはリスク回避から来るものではなく、将来への不安感から来るものだ。
遠方へ旅行に行っている間に地震が来て自宅が倒壊したらどうしよう、なにが起きるか分からないからしばらくじっとしていよう、という自己防御から来ている。
 こちらの解決方法も原因を取り去る以外になく、原因とは将来への不安感の元になっている頻発する地震と原発の恐怖だ。
 前者は自然災害だから発生そのものを抑えることは難しいだろう。結局しっかりとした対策を講じるしかない。
 ただ、後者は現在進行中の問題であり、必死の作業が行われていると思うが、国民の不安感を取り除くために正確な情報を、分かりやすく、きちんきちんと伝えることである。
 残念ながら、いま政府に欠けているのはこのことだろう。
「過度の自粛反対」などと言うより、以上述べたような不安点を解消することこそ、政府がやらなければならないことだ。
そうすれば消費の落ち込みなどはすぐ戻る。

 もう一つ、照明の問題。
街に照明が消えて急に暗くなったので不安を覚える向きもあるだろうが、バブル期の頃から日本の夜は世界的に見ても明るすぎ、異常だ。明らかに照明を使い過ぎているわけで、そのことを考え直すいい機会だろう。
 これはなにも東電管内だけの問題ではない。
現在、電力が不足していない地域でもムダな電気を消し、二酸化炭素排出の問題、地球環境について真剣に考えるいい機会だ。一部、経済界の人が東電以外の地域での消灯問題を批判しているが、その方がおかしい。

 因みにお隣りの国、韓国では国際原油価格の急騰を受け、午前0時に橋のライトアップや商業・住宅地区における建物外部の照明、広告や商業施設ネオンなどを、午前2時には娯楽施設のネオンも消灯するよう、2月28日に政府が通達している。
違反すれば罰金刑が課せられる。
 危機感が日本とは明らかに違う。国を挙げてここまでするからIMFの監視下に置かれた経済危機の時でも、韓国は短期間で立ち直ることができたのだ。
こうした点は我々、我が国も見習いたいものだ。
そして見事な復興を成し遂げようではないか。



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