視点を変えてマーケットを見れば(4)
概念化に失敗した商品、成功した商品


概念化に失敗した商品、成功した商品

 概念化に失敗した商品、成功した商品を具体的に見てみよう。
2004年12月、オリンパスは「E-300」という画期的なデジタル一眼レフカメラを発売した。どこが画期的かというと、一眼レフを象徴するペンタ部分を配し、直方体(いまのコンデジの形を大きくしたものを想像してもらえばいい)にしたのだ。オリンパスという会社は面白い会社で、高い技術力を持っているし、フィルム時代からカメラを作ってきた老舗メーカーである。
 E-300はそれに続くE-330まで発売されたが、このスタイルはこれで打ち切られ、以後のレンズ交換式カメラはペンタ部を復活した一般的な一眼レフスタイルに戻している。
 E-300はなぜ後継機までで終わったのか。答えは思ったほど売れなかったからで、売れなかった理由は消費者の一眼レフに対する概念を崩すことができなかったからだ。

 逆に一眼レフスタイルの概念を覆し、新しい概念の確立に成功したのがソニーのNEXシリーズだ。オリンパスのE-300をうんと小型化したスタイルといっていい。ただ、ソニーはこれを一眼レフではなくミラーレスという新ジャンルの商品に採用したことで、新しい概念を創り出すことに成功したといえる。
 一眼レフと同じようにレンズ交換式でありながら、被写体を光学ビューではなく背面液晶画面で見るミラーレスカメラが従来のカメラとは異なる新ジャンルのカメラだったから成功した。そのことをソニーは分かっているから一眼レフデジカメにはこのスタイルを採用していない。
 他社も同様で、パナソニックその他のミラーレスデジカメはペンタ部の形を取り入れた一眼レフスタイルにしている。
 一度出来上がった概念を崩し、新しい概念を創り上げるのはそれほど難しいということだ。

 同じことは車についてもいえる。例えば電気自動車。2004年、慶應大学の清水浩教授が電気自動車で時速370kmを出した時は驚いたが、量産を目指していると聞き、即座にこの自動車は売れないだろうと感じた。理由は車の概念から外れていたからだ。もう一つは時代のニーズを勘違いしていると思った。
 慶応大学発の電気自動車「Eliica(エリーカ)」は8つの車輪を持つ8輪駆動車であり、なんとも奇妙なスタイルをしていた。そしてなによりでか過ぎた。メディアで清水教授の話を見聞きしていて、彼がこだわったのはスピードのように思えた。日本国内では公道の速度上限は100kmである。そこに370kmや400kmの速度は必要ない。レースマシンにも転用するというなら話は別だが。
 乗用車の一般的な概念は4輪車だ。そこに概念を覆す8輪車をぶつけたのだから受け入れられるには時間がかかる。事実、デビューが華々しかった割にはその後低迷したままで、エリーカに比べればはるかに性能で劣る(大衆的なと言い換えてもいいが)、ごく普通の電気自動車テスラが売れているのとは好対照だが、後者は乗用車の概念を逸脱していないから、そのまま市場で受け入れられたといえる。

 従来の概念と違うものを創るのか、従来の概念の枠内でモノを作るのか。それぞれにメリットもリスクもある。重要なのはモノづくりのポリシーと市場の分析、ターゲットの決め方であり、なにより視点そのものを変えて見る、考えることではないか、と思うが、この頃社会が同質・同一化の方向に動いているのが気になる。


デル株式会社


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