栗野的視点(No.688) 2020年5月29日
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間違いだらけの「専門家会議」の提言
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25日、緊急事態宣言が全面解除された。これについては賛否両論が聞かれるが、個人的には歓迎したい。以前から述べているように「籠城戦」は長引けば戦死者より餓死者の方が多くなり、やがて内部から瓦解するというのは過去の歴史が示している通りだ。
重要なのは負傷者ではなく死者を出さないことだ。今回のCOVID-19で言えば感染者数を減らすことはもちろん大事だが、ウイルスを撲滅できない以上、次善の策は死者を出さないことに尽きる。
全国一律の緊急事態宣言は間違い
そのためにはワクチンと治療薬の開発が必須になるが、それらを待たなくてもできることはいくらでもあるはずだが、どうも政府のやり方を見ていると少しズレているような気がしてならない。
なかでも政府の方針に一定の方向性を与えうる立場にある「政府専門家会議」の報告を見ていると、彼らは本当にデータを分析し、エビデンス(根拠)に基づいて言っているのか疑いたくなることがある。
科学者たるものデータやエビデンスに基づかないわけがないし、一つ一つは正しいのだろうが細かく見るが故にマクロの視点に欠けることがある。その結果、「合成の誤謬」が起きているが、そのことに彼ら自身が気付いていないのか、それとも自分達の専門分野にこだわるあまり、敢えてマクロ的な視点を無視しているのか、それとも合成の誤謬が起きていることを知らないのか。昔はこういう人を称して「専門バカ」と言ったものだが、それはちょっと言い過ぎか。
政府の緊急事態宣言は全国を対象にしたのが間違いである。感染集団が発生していたのは東京で、それに続いて北海道、大阪、福岡などだが、国内の発生源はほとんど東京。非常事態宣言を出すなら東京、大阪、北海道で、全国に出す必要はなかった。感染者ゼロの県や地方都市があるのだから。
リーダーシップを発揮したがってた小池都知事は都市封鎖に前向きだったのだから東京ロックダウンを実施すればよかったが、最後の段階で国に下駄を預けてしまった。
結局、誰も責任を取りたくない無責任体質で、最後はこの国が得意とする「全体責任」。「わが県は感染者ゼロだから除外してくれ」と言う知事もいず、「やるなら全国一斉でなければ、導入していない県に人が殺到してくると困る」と、皆見えないウイルスに怯え、国に全国一斉の緊急事態宣言を迫る始末だ。
他国のように罰則規定こそ設けなかったものの、この国にはそれと同等の力を持つ「同調圧力」があり、「お上」に従順な民は「要請」に黙って従うから罰則など必要ない。
部分的に都市封鎖をしていれば、ここまでの経済的な打撃もなかっただろう。
(2)に続く
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