栗野的視点(No.804) 2023年8月9日
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真夏の夜の悪夢
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エアコンとヒートアイランド現象
今夏は殊の外、猛暑。眠れない夜を過ごしている人も多いかもしれない。そういえば熱中症で亡くなった老夫婦のことがニュースになった。取り上げ方は「エアコンは設置されていたが、スイッチは切れていた」というお決まりの高齢者のエアコン嫌い。
このニュースに接しながら、ふと思った。それは発見時にエアコンのスイッチが切れていただけで、エアコンをつけていなかったということとは別ではないか、と。
先日、久し振りに早朝散歩に出かけた時、畑で見かけると立ち話をする相手がいる。
「この夏は暑いですね」
「そうですね。昨夜は暑かったですね。寝る時は12時までタイマーでエアコンをつけているんですが、昨夜は暑くて2時に目が覚め、またエアコンをつけました」
そうなのだ、発見時にエアコンがついていなかったといっても、1日中エアコンをつけていなかったということとは違うわけで、高齢者=エアコン嫌いという簡単な図式に当てはめるのはあまりにも安直過ぎる。
もちろんエアコンを設置していない家もあるだろうし、電気代のことを考えてエアコンはあっても稼働させていない家もあるだろう。それぞれに事情があるはずなのに、そこに思い至らず表層的な捉え方で報道する番組が近年多い。
そういえば「ヒートアイランド現象」という言葉をこの数年見聞きしなくなった。都市の夜間温度が下がらない現象のことだが、アスファルトやコンクリートは熱を溜め込むとともに放熱が緩やかなため中々冷えない。そのためアスファルトやコンクリートで囲まれた都市部は夜間の温度が下がらない。
そこに加えてエアコンの室外機が排熱する。室内の気温は下がっても屋外の気温は下がるどころか上がる。自然豊かな地方なら夜間の気温はぐんと下がるところだが都市部では夜間の気温が下がらないどころかエアコンを切った直後から室温が上がり、寝ている間に熱中症になるのだ。
都市部の夜間温度が下がらない理由は他にもある。緑と川の減少だ。ビッグモーター店舗前の街路樹伐採のことを言っているのではない。都市部で優先されるのは交通で、道路幅は拡大されてきたし今後もその傾向にある。
最初に犠牲になるのが街路樹や中央分離帯の緑地だ。緑の減少はCO2の吸収や温度の調整機能を失わせ、ヒートアイランド現象を増大させる。
次に河川の減少。正確に言えば河川の暗渠化だが、風は木々の緑や水の上を通り道にして吹き抜けるが、風の通り道が緑地帯の減少や河川の暗渠化で激減したため自然のエアコン効果が働かなくなった。
本来、風の通り道を計算した街づくりをしていれば、もう少し都市の温度は抑えられたはずであり、都市計画の失敗といえる。
結局、人間の快適さ追求のエゴが都市部の気温上昇を招き、それがエアコンの利用時間増大→室外への排熱増→ヒートアイランド現象→エアコン利用による電力消費増→CO2増加→気温上昇というスパイラルを招き、ブーメランのように人間に返ってきている。
(2)に続く
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