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コロナ禍で静かに、着実に進むソフトファッシズム(1)
〜全国知事会に異議を唱えた福岡市長


栗野的視点(No.745)                   2021年8月7日
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コロナ禍で静かに、着実に進むソフトファッシズム
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 先月の4連休明けから東京はCOVID-19陽性者数が2,000人を超えたと思った途端、3,000人超え、4,000人超えと感染者数は増加する一方。増加は東京だけでなく首都圏、地方都市でも同じように見られ、それにつれ再び不穏な動きが見られだした。
 強権発動である。全国知事会が「夏休み中の県境をまたいだ旅行や帰省の原則中止・延期」を求めたのだ。

全国知事会に異議を唱えた福岡市長

 人間というのはよくよく反省しない動物というか、日本人は歴史に学ばないというか、今回のCOVID-19の大流行では何度も強権発動を求める声が出た。それも政権トップではなく、その下から。
 大東亜戦争当時とよく似た現象である。戦争に突入する前は反対の声が多くても、いざ戦争に突入するとメディアも国民も、政府の対応が生温いと言わんばかりに「やれ、やれ、もっとやれ」と囃し立てる。そして大本営発表の一方的な情報のみを流し続けた。
 ソフトファッシズムである。上からの強権的なファッシズムではなく、下からの総意であるかのように装い、上に伝え、強権発動を促す、あるいはその口実を与える。その同じことを今また行っている。とても危険な状況だが、反対する声はあまりにも小さい。

 そんな状況の中で疑問を呈した市長が現れた。「中止ではなく、自粛をお願いするところではないか」と、福岡市の高島宗一郎市長が記者会見で述べた。
「要請が強ければ強いほど、守っていない人に対して許せないとの思いが強くなる。非難を厳しくするような風潮にせず、思いやりの気持ちが大事だ」と。

 思い起こして欲しい。昨年4月段階で徳島県知事が、パチンコ店に要請している県外客の入場制限が徹底されていないとして、客の来店時に免許証などで住所をチェックした上で、県外在住の場合は入場を断るよう店側に「強く求めた」ことを。
 その結果、徳島県内で県外ナンバー車に対し暴言を浴びせたり、あおり運転、投石、傷つけるといった行為が発生した。
 これは知事によるあおりと言っても過言ではなく、トランプ元大統領と共通するものがある。その同じことを再び全国知事会が行おうとしているのだ。因みに全国知事会会長は徳島県知事である。

言い回しはソフトでも中身は強権的

 中国地方5県で構成する知事会も4日、「県境をまたぐ不要不急の帰省や旅行は原則中止・延期」するよう求めるメッセージを出した。
 加えて、岡山県知事は「県外の親類や友人に来県の自粛を呼びかけ」「県境をまたぐ場合は事前にPCR検査を受ける」「会食は少人数、短時間で、感染対策が十分施された店舗を利用する」ようにと、悲痛な表情で訴えていた。
 この人の場合、悲痛な表情で訴えるだけに深刻さが伝わって来ていいというか、逆に質(たち)が悪いというか、見方は分かれるところだろうが、言い回しはソフトでも中身が強権的な方が質が悪い。

 人は見かけやソフトな口ぶりに騙されやすい。だから詐欺師は見るからに高級な洋服を着て相手に会うし、待ち合わせ場所は一流ホテルのロビーと相場が決まっている。そして満面に笑みをたたえてエスコートする。
 例えそれが歯の浮くようなセリフであっても、褒められて悪い気がする人間はいない。
 それに比べれば最近の首長などは詐欺師の足元にも及ばない。もう少し県民、市民感情を考えろと言いたくなるが、彼らにはそういう感情はないらしい。県民、市民は黙って俺の言うことに従えという、見下した風が上記のメッセージにも見て取れる。
                            (2)に続く

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