栗野的視点(No.699) 2020年7月23日
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「東京ロックダウン」をなぜ言わない。
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東京でCOVID-19の感染者数が増えている。7月9日に過去最多の224人を記録したかと思えば、10日に243人、11日206人、12日206人と200人超が続き、17日には過去最多の293人を記録したかと思えば23日はさらに上をいく366人の感染者が確認された。この事態に対し小池都知事の反応は鈍いように感じるのはなぜか。
「不要不急の外出自粛」どころではない
300人に迫ろうかという数字は感染者数のみから言えば明らかに「非常事態」だろう。政府主導の「Go to トラベル」が始まる直前でもあり、当然「東京ロックダウン」を口にするかと思っていたが、「ロックダウン」どころか「東京アラート」さえも口にしなかった。それは366人を数えても同じだった。
他県知事などから「Go to トラベル」は「東京除外」「全国一律は反対」などと、東京との行き来を「自粛」するよう求めたり、東京への旅行は割り引き対象外とする動きが出始めて、やっと4連休直前になって都民に「不要不急の外出自粛」を呼びかける始末。
これが選挙前と同じ都知事かと思ってしまうが、確たる行動理念なんか持ち合わせず、その時の「政治的勘」で動いている人物だから、この人に一貫性など求める方が端から間違いなのだろう。
それにしても自分の責任でやりたがらない人だ。自分が花になり目立つことはシャシャリ出るが、反対に責任を取らなければいけないような事柄については逃げる。
例えばこのところの感染者数増加や「Go to キャンペーン」についても「国がどうされるのか」と、国に基本方針、指針を出すよう言い、国の方針を見てから決める、みたいな言い方をする。
これって早い話、自分が責任を取りたくないだけ。本来、知事の権限でできるものを国に丸投げしているだけで、ズルイやり方だと思ってしまう。
22日から始まる「Go to キャンペーン」の直前になって「不要不急の外出」を控えるよう都民に呼びかけたが、「東京ロックダウン」をするのは「いまでしょ」と言いたい。いや、やるなら東京だけでなく首都圏をロックダウンすべきだろう。
こう私が言えば、過去の言説と矛盾しているではないかと指摘されそうだが、飽くまでも「感染者数」を絶対数値化し、それで対策を取るなら「首都圏ロックダウン」こそが感染拡大を抑える手だと考えるからである。
私は感染者数より重症者数で対策を立てるべきだと、以前から何度も主張している。ウイルスを撲滅できるなら、感染すると大半の人が重症化し死に至る危険があるなら、感染を徹底的に封じ込めるために感染者数が絶対数値になる。
だが今、専門家も含めて大半の人がウイルスは撲滅できず、ウイルスと共存するしかないと認めているから「With コロナ」と言い出したはずである。
「With コロナ」と言うなら、対策のメーンは重症化を防ぐところに置かなければならない。感染はしない方がいいが、感染しても全員が重症化するわけではないから、ある程度の感染はやむを得ない、と考えざるを得ない。
その上で感染経路を徹底的に調べ、感染の拡大を防ぐしかない。特に高齢者と介護施設、それと基礎疾患がある人への感染を。それに加えて院内感染を絶対的に防ぐ対策に切り替えるべきだ。
過剰防衛から一変、経済優先に
今この国の論調は「経済優先」に傾きかけているようで、その点でも心配だ。私は早い段階で籠城戦は戦死者より、それ以外の要因(餓死、病死等)で亡くなる人の数の方が多くなると警鐘を鳴らしてきた。
また「命か経済か」の二者択一ではなく「命も経済も」大事であり、両方を求めるべきだし、それは不可能でもない、と。
だが、どうもこの国はどちらかに傾くようだ。4月段階は人々の論調も含めすべて「命が大事」に振れていた。その結果が過剰とも思える怯えと防御対策だ。スーパーのレジ担当者などがマスクにゴーグルを着けた上、フェイスガードまでしているのを見ると、まるで買い物客を皆感染者と見ているようで気持ちのいいものではない。大体レジでは総じて言葉を発することが少ないのに、そこまでするのは行き過ぎだろうと思うが、そういう光景に人々は違和感を感じないのだろうか。
違和感と言えばやはり小池都知事の言動だ。4月段階では「今出ている数字は2週間前に感染した人の数ですから、実際の感染者はもっと多い」というようなことを言って、しきりに人々の危機感を煽っていた。
ところが東京都の感染者数が300人前後にまで増えても「不要不急の外出はできるだけ控えて」と呼びかける程度で、当初の危機感を煽り続けた態度はすっかり影をひそめてしまっている。
東京が震源地になっているのは明らかだから、今こそ「首都圏ロックダウン」と言うべきだろうと思うが。
「右向け右」で一斉に動く怖さ
さて「Go to トラベルキャンペーン」である。当初「旅行に行きましょう」と呼びかける内容かと思っていたら、旅行費用を割り引くという特典付きだった。それを知って、なんともお人好しな考えだったと自嘲したが、「Go to トラベル」は旅行を呼びかける程度の内容でよかったと思っている。
外出自粛や県をまたいでの移動自粛を呼びかけられ、巣籠もり生活に飽き、それでなくてもどこかへ行きたくなっているのだから、「旅行に行こう」と呼びかけるだけでも旅行者は増えたはず。なにも割り引き特典を付けて煽る必要はない。
それでも東京との往来を特典から外したのは、それが世論の反対を受けてのことであれ、よかったと思う。東京都民には申し訳ないが、しばらくは都内観光で我慢していただきたい。
おかしいのは政府にも都知事にも一貫性がないことだ。それに合わせてデータの分析と、それに基づいた対策が取られているのか、取ろうとしているのかが疑問なのと、この国は上から下まで皆「右向け右」が好きなようで、そのことに最も危機感を覚える。「みんなで渡れば怖くない」というのはお笑いの話で、現実社会ではとても怖いことだが、どうもその意識がない。
もしかすると日本人には全体主義的な思考、体質が身に沁みついているのだろうか。そのことこそが最も怖いと思うが、そういう意識は多くの人にないように見受けられる。
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