栗野的視点(No.771) 2022年8月8日
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ワクチン3回目接種でもコロナにかかった友人
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月に一度くらいの頻度では会って食事をしたり、コーヒーを飲んでいた友人がいる。誘われるのはほとんど夕方以降で、食事を済ませると決まって行き付けの夜の店へと連れて行かれる。それも2軒、3軒へと。
これが案外苦行に近い。元々飲兵衛でもないし、飲んで騒ぐのが好きなわけでもない。その上、酒に弱いと来ているし、場を盛り上げるのが上手なわけでもない。それなのになぜか誘われる。
50代の頃も別の経営者からよく誘われた。午後6時過ぎに突然、電話がかかってきて「これから中洲に行こう。その前に食事しょう。何分位で出て来れるか」と言う。妻が食事の用意をし、今まさに食卓に並べようとしていた時だからお断りした。時間を考えて電話して欲しい、と思う。
いままでも何度か誘われている。基本的に誘われると余程のことがない限り断らないが、それは飽くまで帰宅前で、一度家に帰るとまず出かけない。だから断ったが、相手は強引に「お願いしてくる」。
「社長、私を誘わなくても、他に誘える人間がいないんですか」
そう言うと多少ムキになった声が電話口から返ってきた。
「いるさ。○○證券の××や△△銀行の▽▽だろ」
「いや、それは仕事上の関係がある人間でしょ。そうじゃなく」
「そう言うなよ。付き合ってよ」
妻にはゴメンと侘びながら、タクシーに乗って出かける。
両人に共通しているのは社内ではワンマンで寂しがり屋という点。それなら社員でも誘えばいいと思うが、社員はあまり連れて行かない。かと言って仕事関係先と飲んでも、おべんちゃらを言われるだけだからおもしろくないらしい。そこに仕事上の関係もなく、おべんちゃらも言わず、適当な距離感を持った人間がいる。というわけで誘われるみたいだ。
しかも誘われると余程の予定でもない限り「ノー」と言わないのを主義にしているから、喜んでいると勘違いされているのかも。ただ、シンデレラボーイだから、午前0時になるとお構いなく先に失礼していた。
さて冒頭の友人。社長を子息に譲り会長になった頃から中洲にあまり足が向かなくなったのはいいことだが、原因が病気となれば喜んでもいられない。軽い脳梗塞で2度も倒れた。幸い2度とも言語障害や半身不随といった後遺症がなかったからよかったのか、それが悪かったのか。
1度目の時に「今回はたまたま運がよかっただけですからね。甘く見たらダメですよ。2度めは死にますよ」と注意したが、行動を改めることなく、真夏の炎天下のテニスも続け「夏場のテニスはやめなさい」という注意も聞かず「暑い時にするのがいいんですよ。なぜかと言うと、汗をかくでしょう。その後に飲むビールがまた格別なんですよ」と言う始末。
幸い2度めの脳梗塞も軽い目まい程度で済み助かったが、さすがに医師に厳しく注意されたようで、アルコールを控えるようになった。それでもたまに会うと「久し振りに、夜、行きましょうよ」と誘われる。いやいやトンデモナイ。正直こちらも怖い。3度目に倒れた現場には同席したくない。私が誘って飲みに出かけたと思われかねない。というわけで、夜はどんなに誘われても断り、昼のランチか喫茶にしてもらっていた。
気になるのは年々元気がなくなっていくことで、ここ2、3年は喋り方に元気がなく、言葉が少し聞きづらくなりだしたのが気になっていた。
コロナが流行り出すと、会う機会がますます減り、おまけに電話しても出ることがなくなった。呼び出し音が聞こえないのか、着信履歴も見ないのか。恐らく他からも電話がかかってくることが少なくなり、ケータイを側に置いてないのだろう。こうなると連絡する手段がない。
以前なら2か月も話をしていないと必ず先方から電話がかかってきていたが、この2年ぐらいはそれもない。気になり電話するも相手が電話に気付いてくれなければどうしょうもない。
それでも懲りずに時々電話をかけていると、先日思いがけず通じた。
「元気ですか。どうされていますか」
「寝ています」
「寝ています、というのはどういう意味ですか。横になっているということですか、病気で寝ているということですか」
「コロナにかかりました」
「えっ、コロナに?」
「そうなんです。家内もかかりまして。それで寝ているんです」
身近な知人、友人でCOVID-19に感染したと聞いたのはこの時が初めてだけに驚いた。即座に「ワクチン接種は何回までしていましたか」と聞き返すと「3回目までしていて、4回目は8月25日の予定です」という返事。
ワクチン接種をしていても感染する人がいるとは耳にしていたが、身近で聞いたのもこの時が初めてだった。
「熱はどうなんですか」
「出る時は39度ぐらい出ますが、出たり出なかったり。ワクチンを接種していたからよかったんです、この程度で済んで」
本人の話し振りから中等症でもなさそうだと思ったし、落ち込むことなく前向きに捉えているのでひとまず安心した。
(2)に続く
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