儲けは「やりがい」と「生きがい」
純然たる商売という観点で考えれば移動販売は成り立たない、とても割が悪いビジネスということになる。そのため儲け優先ではない別の思考、「やりがい」「生きがい」というボランティア精神が必要である。儲けが少ない分を買い物客の笑顔や感謝の言葉から受ける「喜び」で補填できる精神(こころ)の持ち主が求められる。
そんな人間がどこにいるのかと言われそうだが、私は皆無ではないと思っているし、団塊の世代とそれに続く世代にその可能性があるのではと考えている。
団塊世代もトップはすでに70歳。多くが現役を離れ余暇にいそしんでいる。(ここでは既得権、権力にしがみつき、「老害」と陰口を叩かれながらも辞めようとしない大企業の経営陣は含んでいない)
中には経験を生かし新たなチャレンジをしたいと考えている人もいるだろうし、バトンタッチしたものの手持ち無沙汰で困っている中小企業の経営者も多いだろう。
ならば、そのエネルギーを社会貢献のために使ってみたらどうだろうか、「やりがい」「生きがい」を儲けと考えて。
もう一つは大企業の支援である。JRにしても自社の儲けのことばかりを考えて駅街を創り、客を駅ナカに囲い込んだり、地方路線を廃止し、代わりに豪華列車を造って走らすのではなく、カネを周辺に回すことを考えたらどうだと言いたい。カネは天下の回りもの、とはよく言ったもので、溜め込むばかりではやがて自分のところにも回ってこなくなる。
どうも、この国の大企業は社会的貢献ということにはあまり関心がないようだ。社会的貢献といえば「企業活動を通じて社会に貢献」という言葉を「企業理念」「社是」に謳うぐらいにしか考えていないのだろう。
まだ物資が不足し、皆が貧しかった時代にはそれでもよかったが、いまのような成熟しすぎた時代の社会的貢献をその程度にしか考えていないところにこそ問題がある。
億単位の報酬を受け、お抱え運転手付きの送り迎えで毎晩のように会社の経費で会合という名の飲み食いをしているから現場に疎くなり、社内の不祥事にも気付かなくなるのだ。
なにも自分で移動販売をしろとは言わないが、「金あるものは金を」に従い、過疎地を中心に廻る移動販売会社を設立し、そこへ身銭を切って寄付をするぐらいのことができないだろうか。
お友達にちょっと声をかけるぐらいでかなりの賛同者と寄付金が集まると思うが。賛同するお友達が集まらないようでは、いよいよこの国に未来はないだろう。
昔から身銭を切って寄付するのは決まって貧乏人(この言い方が問題なら「持たざる人」と言い換えてもいいが)で、金持ちは貧しき者、弱者に恵んでも、寄付はしないから期待する方がムリかも分からないが。
それなら次善の策で、大企業が率先して移動販売事業に進出するというのはどうか。そうすれば雇用も多少は守られるが、効率と利益しか頭にない彼らにそれを期待するのは土台ムリな話か。それでも、この国の未来のためには金ではない思考が必要だと思うが・・・。
拡がる移動スーパー「とくし丸」
貧乏人の遠吠えはこの辺にするとして、移動スーパー「とくし丸」をご存じだろうか。株式会社とくし丸が運営している移動販売車の名称であり、現在(2017年12月末)277台の「とくし丸」が全国で移動販売している。会社の設立は2012年。売上高は月販5億6000万円。
「とくし丸」という名前からある程度推測できると思うが、本社は徳島県徳島市。徳島で創業したから「とくしまる」だが、「篤志」丸という意味も込められている。そういう意味では私の考えとかなり近い。
(5)に続く
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