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嫁選びが後継者問題のキーになる


 今回は少し心温まる話を。

 中国地方の某社でA社長と久し振りにお会いした時、以前より元気そうに見えたので、経営が順調にいっているのだろうと思った。
「いや、お陰様で会社の方もなんとかうまくいっています。こういうご時世ですから儲かっているという程ではないんですが、まあなんとかそれでも利益を確保できています。ただ、ご指摘の件は、そういうことも多少関係ありましょうが、それよりは身内の問題というか、食生活がよくなったものですから」
 A社長は数年前に奥さんを亡くされ、以来一人で生活されていた。当初は寂しさを紛らわすためよく飲みに出掛けられていたようだ。
 その頃お会いした時に「食事はどうされていますか」と尋ねると、逆質問を受けたので、「私はもう10年になりますから。最初は弁当を買ってきたりしていましたが、段々自分で作ることを覚えていきましたよ。Aさんは経営者ですから、健康が一番です。そのためにも早めに再婚された方が。そのご予定はないのですか」というような会話を交わしていた。

 それから1、2年。随分明るそうだったので再婚されたかと思ったが、相変わらずの独身生活を続けられていた。ただ、食生活の面で変化があった。食事を作ってくれる女性が現れたのだ。
 その女性というのは息子の嫁で、昼、弁当を作ってくれるのだという。彼女は元々会社の事務員だったのを息子が見初めて結婚。その後も会社で事務を続けていたからAさんは社長であり、義父さんという、中小企業ではよく見かける関係である。ただ息子との関係はいいとはあまり言えなかったが、これもよくあることだ。

 奥さんを亡くされた当初は寂しさもあり、毎日のように馴染みの店で食事をして帰っていたようだが、土日はそういうわけにもいかない。その内、食材の配達をしてくれるサービスがあることをネットで見つけ、注文してみた。自宅には日中誰もいないし、帰宅支度も不規則だから、届け先は会社にするしかない。それを受け取ったのが事務をしている息子の嫁。
「社長、済みません。私が気付かずに。これからは私が弁当を作りますから」と申し出てくれたらしい。
 以来、昼は社長に弁当を作り、夕食のおかずも1日置きに作ってタッパーに入れ渡してくれるそうだ。時には週末、自宅に来て数種類おかずを作ってもくれるらしい。

 同じことならもう少し早く、奥さんを亡くされた直後からしてあげればよかったのにと、話を聞きながら私は思ったが、その頃はA社長もそういう気分ではなかったのかもしれない。

 ここでは後継者の能力については触れない。ただ、男の価値は女で決まる、とはよく言われる。中小企業の場合は特にそうだろう。奥さんがよく気が付く女性かどうかで、大袈裟に言えば経営にも影響する。
 そういう意味では後継者育成で重要なのは案外嫁選びではないだろうか。中小企業の場合、家族経営からなかなか脱しきれないだけに、結婚は個人の自由という言葉だけでは済まされないものがある。もう少し息子の嫁選びに関与してもいいかもしれない。それが無理なら少なくとも嫁教育にはもう少し関与してもいいのではないだろうか。家族の財産ではなく、会社と社員を守りたいと考えるならば。

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