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経済産業省の中小企業支援制度と、その制度評価について


  2月2日、霞ヶ関に行ってきた。
経済産業省の「中小企業・ベンチャー挑戦支援事業」制度の検討委員会に出席するためである。
委員は5人だが、東京以外からの参加は私だけだった。
会議は朝10時からだったが、その時間に出席するためには6時台の飛行機に乗るか、前日宿泊するしかない。前日宿泊はどうしても出費増になるので、できることなら避けたかったが、早起きの自信がなかったので結局、前日に東京入りすることにした。
 他の委員は半日仕事だから大したことはないだろうが、こちらは1日半潰れることになる。
これで手当は一緒、宿泊費も9,000円しか出ない(後で分かったことだが)のだから完全に手出しである。何ともやり切れないが、仕方がない。

 ところで驚いたのは、省内に入るときに身分証明書の提示とバッグの中身を検査されたことだ。
財務省に入ろうというわけではなく、たかだか経済産業省の建物に入るぐらいで、なぜ身分証の提示や持ち物検査まで必要なのかと訝ったが、午後に会った知人の情報によれば何でもテロ情報があったらしく、対テロ警戒のためらしかった。
そういえばガードマンが、つい数日前から行っているというようなことを言っていた。
 ただ急に身分証明書を、といわれても、所要で来る者が一々そんなものを用意しているはずもないから、ポケットの中を色々探りながら「名刺でもいいですか」とちょっと言ってみた。
すると名刺でもいいというものだから、名刺を見せて無事パス。
それにしてもいい加減な検査だ。
 でもそこから数メートル先で、今度は荷物の中身を検査、といってもリュックを開けて中身を見せるだけだが、一応チェックされた。

 この委員会で何をするのかといえば、「中小企業・ベンチャー挑戦支援事業」(この制度そのものは平成16年度から開始されている)の制度の効果的な運用のために問題点や改善点を議論・検討するのである。
 ここで議論された内容やその結果は経産省のHPにもアップされるらしいが、議論・検討の内容を加味して今年度も応募企業を募集することになるので、この支援事業に関心がある方は応募するといいだろう。
 この支援制度は「実用化研究開発事業」と「事業化支援事業」からなり、事業性・新規性の高いシーズ・ビジネスアイデアを持つ中小・ベンチャー企業を資金面で支援するのが目的である。補助金・助成金の額は前者が上限4,500万円、後者が100万円〜500万円。
 ただ、従来の国の支援策と大きく違うのは金を出して終わりではなく、コンサルティング業務がプラスされている点だから、うまく利用すれば大いに役立つと思われる。

 ただ、この種の支援事業でいつも思うことだが、制度そのものはよくできているが運用面で問題があることが多い。
 例えば申請書類が煩雑だったり、申請後の提出書類が膨大だったりするし、コンサルティングといえば技術コンサルのみ、それも専門領域がうまくかみ合わないコンサルタントが派遣されてきたりで、ニーズと供給がうまくかみ合わないことが多い。
 さらにいえば制度そのものの存在さえ知られていないことが多いのに、相変わらず中央官庁はHPを見てもらえば分かるし、「我々は地方に説明している」と言っている。
 しかし、地方は内容をよく知られていないから応募者集めのために以前補助金・助成金をもらったことがある企業に声を掛けて申請させることになる。
申請企業ゼロでは困るから、実績づくりをしたいという役所的発想である。
これでは本当に欲しい企業がもらえず、要領がいいところは何度でももらうという妙な不平等が生まれることになる。
課長が「地方の、説明する人の問題です」と奇しくも漏らしたが、まさにその通りだろう。

 ともあれ、そうした問題をできるだけただし、本当に必要な企業、この補助金があればその技術、事業が何とかなるという企業が支援を受けられるようにしたいと思い、積極的に発言してきた。
多少発言しすぎかとも思ったが、議論に入って最初に口火を切り、最後も会議終了時間が少し過ぎているのを認識しつつ問題点を指摘してきた。

 面白いのは最初の頃と終わりでは出席者の態度に少し変化が見えたことだ。
委員の内3名は大学の教授・助教授の肩書きであり、残る1人は技術士。
私の肩書きだけがフリージャーナリスト。
 1人、2人を除いて他の参加者(委員の数の3倍は経産省の関係者が出席している)は私のプロフィールも何も知らないわけで、恐らく九州の地方から参加したフリーのジャーナリストという訳の分からない奴と思っていたはずだ。
もっというなら場違いな奴が1人参加していると思われていたかも知れない。
でも、その男が一番発言し、中小・ベンチャー企業について詳しく知っており、制度の有り様に対してもきちんと(恐らく)指摘したのだから、少しは九州にも面白い奴がいるなと思われたのではないだろうか。

 ベンチャー企業の盛衰はいまから20年近く前の第2次ベンチャーブームの頃から取材を通してつぶさに見てきた。
その中から感じたのは皆同じパターンで失敗するということと、行政の一面的な支援だった。資金手当をすればいい、士業の人間による事務処理支援をすればいい、それがコンサルタント支援だと思っていることが問題なのだが、彼らにそれ以上のことを要求しても無理だし、それ以上のことは考え付かないのだから仕方ない。
 では、どうすればいいのか。
欠けている、不足している部分が見えている人間がその部分を補完する作業をするしかない。それに、「どうせ言うだけの評論家だから」と言われるのも癪だし。
とまあ、そんなわけで、ベンチャー支援のために何が必要かを指摘するだけでなく、非力ながら自分の信じるところに従って活動を行っているわけである。

 補助金に関していえば、できることならもらわない方がいい、というのが私の持論である。
補助金に頼ると間違いなく失敗する。
それはもらう側に甘えが出るのと、借りができたという思いから行政に何か頼まれても断れなくなるからである。
この2つが伸び盛りのベンチャーを死に追いやる。
 しかし、そういうことを除けば、本当に資金不足で研究ができない企業、補助金があれば軌道にのる事業もある。
そういう場合は、あるいはそんな企業は大いにこの制度を利用するべきだろう。
そのために少しでも利用しやすい形にするのが今回の委員の役目と心得ている。


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