栗野的視点(No.728) 2021年3月18日
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軒並みサービス改悪に走りだした流通小売業、外食産業
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ コロナ禍で売り上げ減少が続いている流通小売業、外食産業が軒並みサービス改悪に走り出している。筆頭は楽天グループだが、外にもすかいらーくのように株主優待サービスの改悪や取り止めをする企業が相次いでいる。
相次ぎポイントを改悪した楽天
楽天グループがかなりの苦境に陥っているのはほぼ間違いない。それは相次ぐサービスの改悪に見て取れる。元凶は楽天モバイルの収益悪化だろう。
当初、20GBが2980円という画期的なプラン「UN-LIMIT V」を300万名まで1年間無料と大々的に宣伝して市場に投入したまではよかった。
それまでドコモなどの3大キャリアの20GBプランが4980円だったのだから楽天モバイルの料金は格安。申込者が殺到し、300万名という加入者数は短期で達成できると踏んでいたのだろうが、自社回線エリアのカバー率の低さが嫌気され、想定以上に加入者が増えなかったのがまず第1の誤算。
そうこうしている内に総務省とズブズブの関係を築いていたNTTが「ahamo」の2980円を打ち出したものだから、追い詰められた楽天モバイルはさらなる値下げプランを発表せざるを得なくなったのが第2の誤算。
そこで起死回生策で、容量1GBまでは無料、1〜3GBまでが980円、3GB〜20GBまで1980円、20GB以上は2980円という段階料金プラン「UN-LIMIT Y」を投入。1GB未満は無料に引き付けられて加入者数が急増し、3月9日に300万人を達成。
その時点で受付をやめるかと思ったが、4月7日まで延長とした。300万人では足りず、もっと加入者数を増やしておく必要があると考えたのだろう。
楽天モバイルがそう考えるのも無理はなく、1つは歩留まり数字が読めないからだ。というのは、無料だから取り敢えず入っておこうと考えているユーザーがかなり多いと思われる上に、「カネになる」大容量利用ユーザーほど主回線ではなくサブ回線で楽天モバイルを持っている傾向があり、他社のように加入者数=利用者数とはならないからだ。
同社にしてみればSIMを持っているだけでなく、使ってくれなければ、それも1GB以上を使ってくれなければ売り上げは発生しないわけで、1GB未満使用ユーザーが増えても、それは痛し痒しというところだろう。
ただ楽天の考え方は楽天モバイルに加入したユーザーは楽天カードに加入し、楽天市場で買い物をしてくれる率が高く、グループ全体でプラスになることを目論んでいると思われるが、果たして思惑通りに進むかどうか。
いずれにしても現在、楽天モバイルが「カネ食い虫」状態なのはたしかで、いくらグループトータルでプラスに、と言っても、赤字部門の止血をし、出血を極力抑える必要があるだろう。
そこで楽天が今年に入って相次いで打ち出したのがポイントサービスの改定。まず、楽天市場のウリだったSPU(スーパーポイントアッププログラム)のダウンである。
楽天カードは使えば使うほどポイントが貯まるというのがウリで、特に楽天ゴールドカードを使って楽天市場で買い物をすればポイントが「+2倍」になっていた。
しかし、2021年4月1日からこの特典を廃止すると発表したのだ。その結果、年会費無料の楽天カードと同じポイント付与に変わるわけで、年会費2,200円を払ってゴールドカードを持つメリットがほとんどなくなる。
同社のポイント改定はそれだけにとどまらなかった。2021年6月から、公共料金を楽天カードを利用して支払うと付与されていたポイントを1/5に引き下げると発表したのだ。
従来は電気、ガス、水道などの公共料金や国税、都府県税などの税金、国民年金保険料、Yahoo!公金支払いを楽天カードを利用して支払えば、100円に付き1ポイント進呈されていたが、6月以降は500円で1ポイントに引き下げられる。
少しでも出費を抑えたいのだろう。それぐらい楽天グループは苦しんでいるというわけだ。今回の新プランで楽天モバイルの赤字は少しでも縮小するかどうかだが、見通しは明るいとは言い難いだろう。
(2)に続く
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