「エーアイティーという環境関係の企業なんですが」 年配の男性が私の名前を呼びながら電話口でそう切り出した。 喋り方はゆっくりとしていて、落ち着いている。 相手に警戒感を与えない声のトーンと喋り方である。 しかも、こちらの名字を呼ぶことで親近感を持たせている。
「今度ジャスダックに上場することになりまして、その前に皆さんに自社株の購入をお勧めしています」
相手が言っていることをそのまま信じれば、エーアイティーという会社が近々ジャスダックに上場する予定で、その前に未公開株を買わないかと、その会社の社員あるいは役員が勧めていることになる。
「エーアイティーという会社はご存じと思いますが」 この言い方も常套手段である。
「ご存じだと思いますが」と投げかけることによって、言外に有名な会社である、その会社のことを知らないのは恥ずかしいことだ、という意識を植え付ける話法である。
先頃マザーズに上場した会社なら知っているが、「環境関係のエーアイティー」という会社なんか知らない。
「環境」という言葉に用心!
未公開株の購入を勧める詐欺電話に共通しているのは、最近は「環境投資」「環境関係の仕事をしている」など「環境」という言葉を付けることだからだ。
手口は段々巧妙になり、今回は非常に落ち着いた語り口で年配の男性だった。
いままでかかってきたのは若い男性や女性だったが、今回のような年配の男性だと騙される人は案外多いかもしれない。 電話を受けながらそう感じた。
しかも、一見最もらしい言い方をする。
「広く皆さんに会社のことを知っていただくPRも兼ねて」と言われれば、なるほど上場前だからそうなんだろうな、と騙される人もいるのではないだろうか。
この手の詐欺に遭わない唯一の方法は一切興味を示さないことだ。
少しからかってやろうなどと思い、相手をすると思うつぼで、気が付いたら相手に取り込まれていたということになる。
「未公開株には興味がない」というと案の定、相手はそそくさと電話を切った。 こちらがまだ喋っているのに。 それにしても相変わらず減らない未公開株詐欺商法。 皆さん決して騙されないように。
この種の情報は共有しておくのが詐欺被害を未然に防ぐことにもなるので、皆さんも出来るだけ情報の公開を。
☆この種の詐欺話に対する警告は過去にも書いているので リエゾン九州のHP内「栗野的視点」も一読を。
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